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2013/02/01

林信行『iPadショック』 iPhoneが切り拓き、iPadが育てる新しいビジネス<2>

<1>からつづく

iPadショック iPhoneが切り拓き、iPadが育てる新しいビジネス
「iPadショック」 iPhoneが切り拓き、iPadが育てる新しいビジネス
林 信行 (著) 2010/5 日経BP社 単行本 232p

1)この本を前回読んでからすでに2年半が経過した。あえて今ようやくこの本を自分の問題として読むことができるようになった。つまりは、この本を検証するタイミングにもなってきたということだろう。

2)この2年半の間にはたくさんの変化があった。大きくいえば、私個人はこの間すでにスマホを2台買い換えて、スマホは生活になくてはならないものになってきたということ。そして、いまタブレットが仕事で絶対的に必要になったということだ。

3)外的には、3・11があり、ジョブズが亡くなり、友人たちが次々になくなっている。ITをとり巻く環境も、モバイルWiFiが当たり前のこととなり、LTEが安価に供給されるようになった。

4)思えば、10数年前のことになるだろうか。小型ノートブックにPHS回線カードをつけて、かなり先駆的なモバイルPCスタイルをつくったことがある。それはひとつの「完成形」であった。しかし、それは長続きはしなかった。まず、回線が遅かった。そして、バッテリーが2時間くらいしかもたなかった。さらにいえば、仕事用のアプリがまったくなっていなかった。

5)挙句のはてに、客先ですぐに立ち上げられるように、事前にスイッチをいれて訪問し、すぐにソフトを立ち上げるようにしていたのだが、移動中にHDDが誤作動してしまい、修理にパソコン一台を買うほどの経費がかかったことさえあった。

6)その後、盗難や紛失の問題もあり、モバイルPCは歓迎されなくなり、目新しさも失われていった。だから、そういうトラウマもあったから、2年前のiPad登場の時にも、実に眉唾の状態であったことはたしかなことなのだ。

7)そして、この本はまだiPad日本登場ぎりぎりのタイミングで出版されている。2013年になって、私の手元にやってきたiPadは4世代目にあたるという。かなりさまざまな改善がされていて、ほとんど「合格」と、私の目には映る。

8)まず合格点から挙げておこう。

・HDDを使っていないので、故障の心配がすくなく、すぐ立ち上がる。
・バッテリーの持ちがいい。多分8時間以上もつだろうが、実用的に電源コード類を持ち運ぶ必要はまったくない。
・外部LTEモバイルルーターを使っているが、こちらも、いまのところエリアも速さも、バッテリーの持ちも合格である。
・アップルには直接は関係ないが、仕事用のアプリが関連会社から提供され、実にこれがいい。
・つまり、普段、オフィスでやっている仕事の大部分が外部や出先でできてしまうのだ。
・画面の良質さ、音質のよさ、操作の利便さは、いうまでもない。

9)もし、私が「森の生活」をするとして、そこで今の仕事を「完結」させられるかどうかを考えれば、ほぼ合格と言えるだろう。だが、まだ試していないこともある。
・印刷して保存すべきものもあるが、iPadとの関連づけるプリンターの検討が必要となろう。これは手元にある取り外した器具類で補完ができる可能性がある。

10)電源の確保も気になるところであるが、車を持ち込むことができるなら、そこから電源を供給するシステムをすでに確保してあり、今後は、大型太陽パネルなど(数万円以上かかる)でより確実なものにする必要があるだろう。ただし、本当に必要かどうかは、今後検討する必要がある。

11)それ以外であれば、あとは他力になるが、仕事用ソフトがよりタブレット型に更に進化してくれることを望むだけだ。

12)さて、当ブログはタブレットで完結するだろうか。現在は自宅のPCから打ち込んでいる。長文となるとさすがに物理キーボードがないと難しい。それ以外にもコピーペーストの問題やら、ブログサイトのアフェリの問題もあり、タブレットでは完結しにくい問題がいくつか残っている。だが、解決策がないわけではない。

13)タブレットには持ち運びできるブルートゥースなどのキーボードがあるので、いざとなれば数千円の出費は覚悟だが、これはむしろ、当ブログのこの冗漫さを反省する意味で、タブレット完結型の書き込みのスタイルに直していく、いいチャンスなのではないか、と思う。物理キーボードの購入は急がないでおく。

14)それと、タブレットにつきもののアプリだが、今は、青空文庫の文章たちを、いかにも「文庫本」スタイルで読めるようなアプリが数百円で提供されているようだ。当ブログにおける「読書」スタイルも大きく変化していく可能性があるし、また、変えたいと思っているのだ。

15)iPadの大きなポテンシャルを信じずに見捨てる人が多ければ、iPadも本書も、5年後にはただのお笑い種になっていることだろう。他方、「やはり、これはすごい」と共鳴してiPadを使ったり、関連ビジネスに取り組んだりする人が増えれば、5年後には、クルマや電灯とはいかないまでも、デジタルカメラや音楽プレイヤーと同じくらいまで普及するかもしれない。p2「まえがき」

16)5年後といわず、2年半後にこのような環境が出現しつつある。すくなくとも、それを信じ、開発に取り組んできた人々に感謝したい。特にわが業界にあって、当時からその先見性に目をつけ、今日のスタートを生み出した開発チームには敬服する。

17)アドビのFlashについては、アップルの独自の対応がある。

18)アップルのスティーブ・ジョブズCEOが2010年4月29日に掲載した公開レターでは、Flashを採用しない別の6つの理由を指摘している。p141「Flashには大きな打撃」

19)以下、長文なので要点だけ箇条書きにしておく。
・Flashはクローズな技術である。
・ネット上のFlash動画は言われるほど多くはない(とアップルは主張する)。
・Flashは古い技術で、Macがクラッシュする大半はFlashが原因で、セキュリティも甘い(同上)。
・Flashは電源ーを浪費し、バッテリーの持ちが悪い(同上)。
・Flashはパソコン上の技術であり、タブレットに対応していないため、タッチパネルを理解していない(同上)。
・Flashはマルチタスクプラットフォームであるがゆえに、他の専用ソフトの質の低下をもtらす(同上)。

20)マック、あるいはジョブズ、あるいはアップル製品の、「切り捨て」感覚には、各自一言あっていい部分ではあるが、アップルユーザーになった限りは、アップルの「哲学」や「思想」を、まずは受け入れてみる必要はある。そして、その意図を感ずれば、一ユーザーになったということより、ひとつのライフスタイルの提供を受けている、という側面を感ずることができる。

21)iPadの開発については、スティーブ・ジョブズCEOが、再三反対していたという噂があった。いくつかの同様の企画が社内でもちあがるが、その度に、ジョブズ氏に一蹴されていたという。しかし、2009年春、ジョブズ氏が病気療養中にかなり完成度の高いプロトタイプを見せられ、そこから一気に計画が動き始めたという。p198「iPadはアップル流の洗練の成果」

22)これはかなり異なことと、と捉える。現在のiPadに至るまでの経緯にさまざまなことがあったことは理解できる。すくなくとも他社においても複数プロジェクトが立ち上がっていたわけだから、その中から抜きん出てくるには、技術やタイミング、そしてマーケットの変動のチャンスを見極めていたことは、察するに値する。

23)かつて「5万円ミニノート完全攻略ガイド」(2009日経トレンディ増刊)という本をメモしたことがあるが、結局はこのジャンルには手がでなかった。ミニノートでなくてもPC自体の価格が低下したことと、どうしてもいわゆるネットブックには、安価なPCという自虐的な「諦め」が必要であった。

24)しかし、現在のタブレット旋風には、そのような後ろ向きな「チープ」感覚はない。むしろ、新しい提案が多く含まれている。

25)ここまで紹介したビジネス活用は、これまでのパソコンでもあった活用法をiPad流に手直ししたものだ。しかし、最後に紹介するのは、iPadならではの活用方法と言える。p173「顧客とのコミュニケーションツールとして使う」

26)業態によりさまざまな活用法があるだろうが、ここまで読んで一番反省したのは、これらのIT機器を、私は、自らの「顧客」のために、どれだけ「活用」できただろうか、ということである。オフィスにおけるオートメーションばかりに目が生き、カスタマー満足がおろそかになっていなかったか。特に今回自分がタブレットを導入した理由はここにこそあるのであり、それこそ意識をCSのほうに、もう一度切り替えなければならないな、とまたまた反省したところである。

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