『iPad vs.キンドル』 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏<2>
「iPad vs.キンドル」日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏
西田宗千佳 2010/03 エンターブレイン単行本 238p
★★★★☆
1)この本が出てから3年、当ブログが読んでからでも2年半が経過した。その間に、3・11があり、何人かの友人たちが亡くなった。大きな変化のなかにあるわけだが、その中でもいちばん大きな変化は、すでに、私の手元にiPadがある、ということだろう。さらにいえば、そのiPadのキンドルアプリで、青空文庫を読み始めている、ということである。
2)この本自体は、電子書籍について、長いスパンで書いており、1970年年代初期から、未来の読書事情まで思索している。なおかつ、その推移を支えてきた技術的イノベーションと、マーケットの推移をこまかく列記しているので、このような事業に関わるプロ達にとっても、興味深い一冊であるに違いない。
3)しかるに、当ブログとしては、電子書籍に関する限り、あくまで一読書子、あるいは一読書ブロガーとして以上の関心はもっていない。つまり、自分の日常ライフスタイルにどうかかわるのか、さえ理解できればそれでよい。
4)現実的には、第4世代iPadにアマゾンからiPad用キンドルアプリをダウンロードし、そこから0円(!)のキンドルブックを購入(!)し、出先や電車の中、ベッドサイドで読んでみる、という試行錯誤の最中である。
5)0円キンドルブックと言っても、それは青空文庫がベースになっており、iPadアプリの中には、数百円のアプリを使っていかにも、文庫本をめくる感覚にしてくれるものもあるそうである。そのうち、やってみようとは思っている。
6)現在、この2年ほど必要不可欠となっていたスマホ携帯を使わない実験をしている。スマホの部分をタブレットは埋めることができるかどうか。電話回線や簡単なケータイメールは、昔のガラケー最終形にまかせた上で、パソコンとケータイの間に位置するものとして、タブレットだけでいいかどうか、の実験である。
7)今のところ、私のライフスタイルでは、これで正解のようである。電車に乗ると言ってもそれほど長時間でもなく、また、座れないほどのラッシュアワーにも移動しない。だいたいが座れるほどの環境で、タブレットで読書することは可能であるかどうか。
8)結論からいえば、可能である。まわりを見渡せば、電車内でタブレットを取り出している乗客は少数派である。いないことはないが、飛行場から帰ってくる電車のビジネススタイルのスーツ姿だったりする。
9)そこで、やおら、さもないおじさんがタブレットを取り出して読書をはじめるわけだが、周囲に、別に圧迫を与えるわけでもなく、奇妙な視線を浴びせられることもない。まずまずは風景にとけこみつつある、と自分なりに理解している。
10)スポーツ新聞などを、これみよがしにおっぴろげて、ヌード記事などを晒しているおじさん族よりは、慎ましいものである。
11)タブレットの中を覗かれて、セキュリティに問題はないのか、ということも心配は心配だが、だいたいが現在は、夏目漱石の小説を読んでいるのである。表紙もない、ただただ白黒の文章で、なにを読んでいるかわからないだろうし、ましてや、その内容が、仮に「吾輩は猫である」だ、ということが知れ渡ったとしても、別段に恥ずかしいことでもない。
12)バックライトをやや暗めにして、なおかつ紙面をセピア色モードにすると、ほんとの本を広げているのとほとんど変わらないほどの存在感である。頁をめくるのも、しおりを挟むのも、実に簡単なものだ。バックもジャストサイズの小バックをかかえているだけなので、極めて携帯性に富む。
13)もちろんメールチェックや、SNSの最新状況を確認することにも使うことができる。つり革にすがって片手で立ち読みということはできないが、シートに座っている限りは問題ない。歩きながらも無理だが、電車の到着を待つ間の行列で、さっとiPadを取り出しても、特に違和感はない、と自分は思う。
14)「iPhoneとMacBookの間に”何か”がある」
同社のCEOのスティーブ・ジョブズ氏はそう語りかけ、噂されてきた商品の名称が「iPad」であることを発表した。
注目の新製品発表なのだから、さぞもりあがったことだろう・・・・・。そう思うのが当然だろう。
だが、会場にいた筆者はあっけにとられていた。「攻めるのはそこなのか?」という、拍子抜けした感想を持ったからだ。会場に詰めかけた他のプレス関係者も、似たような印象を持ったようだった。p92「キンドルのライバル、ソニーとアップル」
15)仕事の関係で、必要に迫られてタブレットを手にした私ではあるが、できれば、タブレットは回避してしまいたかった。他のガジェットで代用できるはずだろう。そう思って敬遠してきた。しかし、いざタブレットを日常の友としてみれば、むしろ、スマホのほうが、どんどん退却していってしまった。
16)仕事のソフトが対応していないため、マックは使えないし、逆に、仕事用であってみれば、iPhoneである必要もない。日常のデスクワークの要としてパソコンがあり、外出先の電話連絡と、簡単なメール環境があれば、ガラケーで十分である。その間を埋めるものとして、スマホは登場したのだが、私の場合は、圧倒的にタブレットのほうが的確であるようだ。
17)iPadは「小説的」というよりも「雑誌」的だ。キンドルやソニーリーダーが「鞄に入っている文庫本」だとすれば、iPadは「ソファー横のマガジンラックの中の雑誌」に似ている。どちらも薄い板型のコンピュータではあるが、その目指すところは相当に異なっているのである。p91「同上」
18)私はむしろ「鞄にはいっている雑誌」としてiPadを持ち歩いている。大きさも、重さも、バッテリーの持ちも、そして機能も、これでいい、ジャストサイズ、と言えるほどに、愛せるようになりそうな予感がしてきた。
19)いずれにせよ、当ブログとしては「新潮文庫20世紀の100冊」(2009/04 新潮社)というリストをアップしておきながら、まったくその読書が進んでいない。今回、このキンドル in iPadで、青空文庫からダウンロードして読んでみるのも、新しい体験になるだろう。もっとも、著作権がキレていない、近年の作品は、このスタイルでは読めないことになるが・・・・・。
20)この本は、長期のスパンで再読される必要がある。以下、特筆しておくべきところ数箇所を抜き書きしておく。
21)アラン・ケイ氏は「パソコンの父」とも呼ばれるこのとのある、パソコンやITの歴史を語る際には必ず登場する計算機科学者だが、中でもその最大の功績は「ダイナブック構想」を生み出したことにある。
まだ大型コンピュータしかなかった1960年代に、個人向けの「パーソナルコンピュータ」を発想、1972年にその構想を自著の中で「ダイナブック(DynaBook)」と名付けていた。ケイ氏の発想したダイナブック構想には様々な要素があるのだが、その中核になっていたのは、文字や絵、音声などの様々な要素をまとめて扱い、思考能力を高める助けとする「より良い本」としての姿であった。p97「eBookへの長い道」
22)青空文庫は、そういったニーズを持つ人々が自由に利用できる「書籍のデータ」を用意しよう、というボランティア・プロジェクトだ。著作権が切れた作品や、特別に掲載許諾がなされた作品について、ボランティアが紙の本から入力を行い、ルビや仮名遣いなどもできる限り原本に近い形でデータ化して収蔵、ネット上で利用できる「オンライン図書館」となっている。
アメリカでも、同様の試みが「プロジェクト・グーテンベルグ」という名称で、1971年より勧められており、青空文庫もその影響下にあるものだ。2010年2月現在、約8800作品が収録されており、同趣向で活躍する日本向けのプロジェクトとしては最大の規模となっている。p113「同上」
23)このような形が採られているのは、アメリカにおいてブログが「1つのメディア」として認知されているためだ。日本では日記的なとらえ方をされることも多いが、アメリカの場合、新聞や雑誌と同様に、ブログに記事を公開することで生計を立てる書き手も少なくない。
ブログの形で運営される「ウェブメディア」も多いし、ジャーナリスト個人が自由に記事を掲載できるメディアとして活用する場合もある。そういったブログは、広告や新聞社・通信社などへの記事配信から収益を得ている場合も多いが、今後はeBook向けの配信も、そこに加わることになる可能性は高い。p146「eBookのビジネスモデルとは~アメリカの場合~」
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