アントニオ・ネグリ&マイケル・ハート 『コモンウェルス』 <帝国>を超える革命論<2>
「コモンウェルス(上)」 「(下)」<帝国>を超える革命論<2>
アントニオ・ネグリ&マイケル・ハート 2012/12 NHK出版 全集・双書 348p 338p
1)ネグリとハートはその三部作を通して、民主主義、自由、愛、幸福、共産主義、革命といった、かつての輝きをとうに失い、今や汚辱に塗(まみ)れながら、嘲笑や冷笑を浴びせられているように見える一連の概念を再考し、それらに新たな力を吹き込もうとしているのである。下巻p300「解説<共>の革命論」
2)なにはともあれ、最後までぱらぱらとめくっては見る。まったく手にとらないではいられないだろう。しかし、手にとったからと言って、はてさて何が得られるだろう。
3)例えば、すでに輝きを喪った、民主主義や共産主義といった言葉を再考し、そこにふたたび新たな力を吹き込もうとするなら、それは概念的な論理のやりくりでなんとかやれそうな気もするが愛や自由、幸福、と言った言葉を概念的に捉えなおすなんてことは、ほとんど不可能なのではないか。
4)それは実際に生きられなければならない。本当は、自由や愛や幸福、なんて言葉さえ、もはや不要なのだ。もし、人間が人間として生きているならば、それこそ自由であるし、幸福であり、おのずと愛があふれていなくてはならない。
5)ましてや革命なんて言葉は、もはや政治的な、左翼的言辞として弄ぶことには、同調しないほうがいいのではないか。「かくめい」や「進化論」など、実に多様な局面で使われる言葉だが、もはや、政治家(とか哲学者や思想家)たちの手からは奪ったほうがいいのではないか。
6)なかでも、本書の最後のパートで集中的に論じられている「革命」という語の評判は、今日きわめて悪い。大義を掲げたラディカルな企ては、結局のところ、破局的な事態に帰着してしまうことになるのだから、革命のような切断を求めるべきではなく、連続的な改革のプロセスに取り組むほかないのだという、現在、支配的な主張はそのひとつの表れだろう。
またその反対に、革命は即時的かつ絶対的な切断をもたらすものであり、いわば一晩ですべてが変わることになるのだから、私たちはそのような出来事の到来を救世主のように待ち望むしかないという、黙示録的な信仰も根強く存在している。
しかしネグリとハートは、革命概念をめぐるこうした二者択一----切断なき改革の連続性か、点的で絶対的な切断か、という---をずらしながら、革命的出来事を切断と持続の両面においてとらえること、言いかえれば、新たな変容プロセスを開く歴史的切断として、そのような出来事をとらえることを提案している。下巻p301「同上」
7)ふう~~。「かくめい」って奴は、誰かどこかの思想家なり、哲学者なりの「言葉」から生まれてくるのかなぁ。
8)ネグリとハートは、そうした特異性と同一性の区別を、「愛」という概念---革命と同じく、今や憫笑や冷笑の対象でしかなくなってしまったかに見える概念---と結びつける。同一性にもとづく愛が、<多>を<一>のなかに溶解させ、他なるものを同じものに還元する働きをするとは対照的に、特異性せに基づく愛は、諸々の特異性からある多数多様性を縮減することなく、それらの特異性を合成することを通じて、<共>を構成するのである。下巻p301「同上」
9)ここでは、たしかに言葉では愛が語られているのであろうが、全然ハートには響かない。なにがなんだか、脳みそが腸ねん転を起こしているかのようだ。こんなの、私なんぞは「愛」だとは感じない。
10)この後も、どうやらエコロジーとか3・11とかについて論及されてはいるのだが、哲学とか現代思想という奴に縁がないのか、翻訳が悪いのか、あるいは、こちらの頭脳の機能が低下しているのか(たぶん、このあたりだろう)、とにかく、「頭」にはくるが、「ハート」には全然こない。
11)そんなにボロクソにいうなら、どうして「こんな本」を読んでいるのだろう。
12)なにか、どこかに、なにかのヒントがあるはずである、という期待はあるのだが、そして、いつか理解できて、ともに<共>なる地平に立てるのではないか、という期待はあるのだが、どうも今回も、グラグラしながら、まずはこの本たちを図書館に返却することにする。
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