石川裕人作 『THE RIVER STORY』 ~AZ9版「楽しい川辺」~AZ9ジュニア・アクターズ第11回公演
「THE RIVER STORY」 ~AZ9版「楽しい川辺」~
AZ9ジュニア・アクターズ第11回公演 2004/02 宮城県大河原町えずこホール
Vol.3 No.0915★★★★★
1)結成20周年記念公演の『THE RIVER STORY』 を見てきたあとで、はて、これが再演だとすると、初演時はどんなものだったのだろう、と気になり始めた。
2)そもそも、石川裕人の作品リストを追っかける最中に、とくにそのAZ9とやらのリストを作ってみて、本当は、ひとつひとつをチェックしてみようと思っていた。
3)だが、演劇そのものを台本だけから想像するのと同じように、公演記録だけから、演劇そのものをイメージしようというのは、かなり無理がある。特に私のような即物的な俗人には、そのファンタジーを想像するには、最初の最初から限界がある。
4)しかるに、今回20回記念公演の「再演」を見てきた限り、少なくとも11回公演とは、どのようなところがバージョンアップされていたのだろう、ということも、あらためて気になり始めるのである。
5)一見してすぐわかるのは、フライヤーも紹介文もまったく新しくなっているということである。サブタイトルも違っている。それにフライヤーを拡大して、よ~く見ると、当時は子供たちの他に、石川裕人他、全六人の「客演」があったことがわかる。演出の米沢牛(現・渡部ギュウ)までステージに上がっていたようだ。
6)今回は、前回、石川本人が演じた幻燈屋のおじさん役の小畑次郎だけが、純粋な客演だ。だが、実は他にも客演がいて、それがジュニアアクターズのOB、9期生と14期生の先輩格が手伝っている。これはすごいことだと、思う。
7)実際のステージは、18期生、19期生、20期生の30数名が演じているわけだが、その子供たちに交じって、大人としてのOB達が客演しているのである。ああ、10年の歴史とはすごいものだ。このままあと10年も行くと、現役の子供たち以外に、照明や情宣などすべての役割を子供たちとOB・OGたちが担うかもしれない。現に今回は、黒のTシャツに黒のズボンで統一したOB・OGたちが、裏方のスタッフを務めていた。そのうち、作・演出も、ひょっとするとOB・OGたちが務める時代も、くるのかもしれないぞ。
8)これは川の物語。大きな川の上流の小さな小さな川辺とその水辺の物語。
人と川の生き物たちの物語。 白石川の水源、鏡清水に自然観察にやってきた子どもたち。そこに現れたちょっとレトロがかった子どもたちの一団。その子どもたちはタイムスリップで昭和30年代からやってきたのでした。
お互いの子どもたちはそのことを知らぬ間に一つの事件が起こります。誤って川に落ちた現代の子どもを助けるために川に飛び込む「時の彼方」からやってきたガキ大将。川辺や水底では様々な生き物たちが一生懸命日々の暮らしをおくっています。それは私たち人間と変わらない営みです。水に落ちた二人の少年はそんな生き物たちの生活をのぞくことになります。それは夢か現実か?幻想的な水の底と活気あふれる水辺で子どもたちと生き物たちの生命が響き合い躍動します。そして子どもたちの出会いと友情と別れの物語であります。
AZ9版「たのしい川べ」は白石川の物語です。「AZ9ジュニアアクターズHP」より
9)この案内文を読んで、そうか、これは白石川の物語、だったのか、と気がついた。AZ9(アズナイン)というネーミングは阿武隈川と蔵王連峰の頭文字が基礎となっているが、実際には、この9市町が共有しているのは、白石川のほうなのかもしれない。
10)白石川は蔵王連峰にその水源をもつ一級河川である。それに対し阿武隈川は水源を福島の那須岳にもつとされる。もっとも、白石川は下流の柴田郡槻木あたりで阿武隈川に合流し、太平洋へとたどりつく。
11)主に下流域を行ったり来たりしているような私のような者は、すべて阿武隈川と総称してしまっているが、それでは、地域の人びとしてみれば、ちょっとおおざっぱすぎる、ということになろう。
12)そういえば、ゲーリー・スナイダーの著書ではバイオリージョンということが強調されていた。
13)スナイダー 汚い川のためにダンスをしたり、詩を読んだり、そして音楽を演奏したりもするんです。ちょっとしたことでいいんですよ。こういう活動をアーバン・バイオリージョナリズムと言いますが、いまアーバン・バイオリージョナリズムはたいへん活発です。
(註)アーバン・バイオリージョナリズム 生態地域主義(生命地域主義)は、行政的に分割された「地域」ではなく、生態系を基礎として分割されたバイオリージョン(生態地域/生命地域)を生活の中心に据えることを提唱する。このような意味では、都市もひとつのバイオリージョンであると見ることができる。p121ゲーリー・スナイダー+山尾三省・対談『聖なる地球のつどいかな』p121「バイオリージョナリズム---流域の思想」より
14)漠然と環境問題や自然保護を考えようとして観念的になりやすいものだが、バイオリージョンは、都市や行政という単位ではなく、自然の体系の中で、環境問題をとらえてみようではないか、という視点である。
15)そう言った意味において、AZ9の9市町が、広域の視点を共有しようとするのは、まさにバイオリージョン的であるといえる。そしてまた、そもそも3・11以降にあたっては、フクシマと県境を接した「県外」の地域ではあるが、実際には放射線の影響は、まさにフクシマと地続きのエリアなのであった。
16)復旧・復興が叫ばれながら、2年を経ても、まさに生き地獄のような現実が、いまだに払拭されていないポスト3・11ではある。それらを克服するために、他罰的に他人を責めてばかりもいられない。本当は、「楽しい川辺」を広げていくことこそが、克服のための道筋になるはずなのである。
17)原発事故の影響は、地域的にはフクシマ周辺、そして、年代的には小さな子どもたちに大きく振りかかるとされている。フクシマからほんの数十キロの地域にすむ子供たちの、これからの未来が、どこまでも輝いているように、心から願わないではいられない。
18)単なる子供たちのお芝居だが、どうも私はいつものクセがでて、深読みの深読みをし始めているようだ。
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