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2013/03/02

『アマゾン契約と電子書籍の課題』 対電子書籍販売サイト契約書雛型付/北村行夫


「アマゾン契約と電子書籍の課題」対電子書籍販売サイト契約書雛型付 北村行夫 2012/04 太田出版 単行本 77p
Vol.3 No.0927★★★★★

1)ビジネスには契約ごとがつきものである。ルーテン化してしまえば気にもならないが、そのルーティン化する前に、キチンと確かめておかなくてはならないことは多い。

2)この本は、なにやら虎ノ門総合法律事務所とやらの肩書をもつ弁護士の本である。わずかに77pと薄いパンフレット状の一冊だが、こういう本こそ電子書籍として販売されるべきものであるように思う。出版は一年前だから、実務的にはそう大きくは変わっていない内容であろう。

3)ところがどっこい、この本が電子出版されることは、そう簡単ではないだろう。なぜなら、この本自体が、その電子出版の安易なスタートに異を唱えているからだ。

4)この本の出版時点(2012/04)では、その大元のアマゾンであり、キンドルの存在が大きく取り上げられている。

5)アマゾンは、Kindleの日本進出計画に基づき、日本の出版社の主要な出版者に「Kindle電子書籍配信契約」と題する契約案を提示しました。アマゾンとは、言うまでもなく専用端末Kindleを手段としてアメリカの電子書籍コンテンツ販売市場の筆頭に位置しかつ圧倒的なシェアを誇っているネット上の企業です。

 当初はネット上の紙の書籍の書店としてスタートし、やがて販売対象を家電製品等に広げて総合的なネット通販企業となり、日本でも紙の書籍その他の販売における高い市場占有率を有していることはご承知のとおりです。本国アメリカでは、すでに無体物たる電子書籍を販売するようになって今日に至っています。p009「2010年の議論の始まりから2011年末に至る交渉」

6)読書や電子出版は、個人的には小さな趣味的世界だが、ビジネス社会においては、大きな営利活動である。巨大なシステムが、法のもとに、互いの主張をぶつけ合い、交渉しあって、物事を現実化している。

7)足掛け3年にわたる膠着状態の中で、アマゾンは年初早々に第4次案を出し、価格決定権について一定の譲歩をしました。しかし依然として価格決定権は小売店であるアマゾンが持つという建前は崩していません。

 そしてこの膠着状態を破るかのように、2012年3月に入って角川ホールディングスが包括的な契約をすると報じられました。前年のPHPが成約したというニュースとは比べ物にならないインパクトがありました。アマゾンペースでの契約に乗る動きが雪崩を打って始まるかも知れない、と。p012「2012年1月末の状況と新展開の可能性」

8)この本における「契約」とは、一ユーザーが、サービス企業と結ぶ契約ではなく、大企業同士が新たなビジネスモデルを求めて交渉の上、次第に固まっていく交渉後の「契約」を言っている。だから、一ユーザーとしての当ブログにおいては、いまいちリアルな感覚はない。まぁ、早いところ、うまくまとめてくれれば、こっちは利用しやすいかな、くらいの感覚である。

9)しかるに、本当に、それだけの関心だけでいいのか。いま、この交渉のプロセスと、その結果には、大きな流れを決定づける重大なポイントが隠されているようだ、ということが、この小さな本から、次第に明らかになる。

10)アメリカと日本の出版業の業態の違い、法制度の違い、ユーザーのニーズの違い、それらが横たわる中、アマゾンは日本においても覇権を目指して、日本の各出版社と、水面下で、顧問弁護士にも知らせないような守秘義務を負わせながら、交渉を続けている実体があるらしい。

11)だから、各社がどのような状態に置かれているのか分からない状態が続いていたが、その実態が少しづつ明らかになってきたという。それらを踏まえた上で、本著第2章では、「電子出版販売サイトとの契約」、第3章では「対著者権者との契約」、として、本著の著者が弁護してとして考えうる実際の契約書のフォーマットを40頁あまりにわたって開示している。

12)今こそ、出版者が出版者として登場し、オンラインによる出版の基本設計を示すべきです。出版者の社会的意義を全うする道を考え、その上で出版者と端末と電子書籍のあるべき関係を提示することが必要ではないかと考えます。

 そもそも電子書籍は、地球規模における知のネットワークを構築するための協力な道具として、限りなく大きな可能性をもっている筈だと信じるからです。p42「出版者主導のオンライン出版ルール構築を」

13)学級新聞や町内会の回覧板から始まって、日々読み捨てる日刊新聞や、友人が務めた出版社の動向、はては小さいながら、地方などで活躍している小出版社など、ひとことで出版者を定義することは難しい。インターネットの普及と日常化によって、図書館も出版物も変わり、音楽産業が大きな変化を受けたように、出版業界も大きな変化に遭遇しつつある。

14)大企業の契約事など、一ユーザーとしてはどうでもいいや、めんどくさそう、と思う。だが、大きな視野に立った場合、これらの動向を注視して、継続して関心を持ち続けることは、健全な地球ネットワークが進化していくこと願ううえで、重要であるようである。

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