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2013/03/11

『Steve Jobs Special』ジョブズと11人の証言 NHKスペシャル取材班


「Steve Jobs Special」 ジョブズと11人の証言 
NHKスペシャル取材班 2012/09 講談社 単行本 251p   
Vol.3 No.0936

1)当ブログではすでに40におよぶジョブズ関連の作品を読み込み済みで、この本は発行順から言っても、最後のまとめになるかな、という軽い気持ちでよみはじめた。だが、どうしてどうして、読み進めるうちに、どんどん評価は高くなり、読み終わってみれば、最高のレインボー評価を献上する運びとなった。

2)ジョブズは世界を変えた。パーソナルコンピュータで革命を起こした。iTuneは、音楽業界のあり方を一変させた。iPhoneでは、電話を再発明、iPadではコンピュータの新しいカタチを生み出した。なぜ彼だけが次々とイノベーションをなし得ることができたのか?p002「はじめに ”革命”こそが夢だった」

3)当ブログにおいても、この「革命」ってやつが、マイブームになりつつある。

4)ジョブズ 私たちが常に感じてきたことは、アップルは技術と人間性との交差点でありたいということなのです。パソコンという道具に人間性の要素を盛り込みたい。知性の面だけではなく、人間の他の面でも役立つようにしたいのです。そして、そこがアップルの非常に得意なことだと私は思っています。p26「スティーブ・ジョブズ」NHKクローズアップ現代 国谷裕子との対談

5)本書は、NHKスペシャル取材班による、関係者11人へのインタビュー記事で成り立っている。

6)スティーブと僕は、当時、ごくわずかな人たちの間でしか語られなかった「革命」を起こす一員になりたいと願っていたんだ。(中略)若いときというのは、革命に参加したいと思うものだからね。とくに、僕ら2人は人生に対して革命的な態度をとり続けた。つまりは、規制の枠組みに挑戦する生き方だね。だから、どうしてもこの革命の一部になりたかったんだ。p40「ともに夢見た『革命』」スティーブ・ウォズニアック

7)ウォズニアックは、いちばん最初のジョブズの相棒。彼には「アップルを創った怪物」 もうひとりの創業者スティ-ブ・ウォズニアック自伝(2008/11ダイヤモンド社)の著書がある。

8)いわゆる”アップル教”の信者ではない私は、iPhoneぐらいしか彼の生み出した製品を持っておらず、”天才でありながら、目的達成のためなら同僚や部下を罵倒する奇人、変人”という、書物などで目にした不確かな情報しか持っていなかった。p133「人間くさくて、不器用な天才」NHKディレクター 小倉洋平

9)この部分は本の作り手側からの「コラム」として挟まれている部分だが、私もまた、一度初代iMacを娘にプレゼントしたことがある程度で、深い認識は、彼が死ぬまでなかった。そして、今回、iPad4世代を手にして、あらためて、その人間性を知るところとなった。

10)「1984」のような機械文明に人間が従属している世界ではなく、人間中心の世界を実現したいと、そういうスティーブの思いはすごく強かったと思いますね。パーソナル・コンピュータというものは、もっとパーソナルに1人1人に寄り添う存在なんだというイメージっを持っていた。でも、現実には「人間に寄り添っている」感じがしない、と。p164福田尚久「スティーブのスピリットは生き続ける」

11)福田は日本人としてジョブズのワークに加わったひとり。

12)例えば、スマートカバー、あのお風呂のフタのようなカバーですね、あれを発表する時、さんざん商品の説明をして、最後に価格がいくらですよと紹介する時に、彼はそこでまた、前の説明に戻ってしまって、しかもカバーなのに「このケースは」「このケースは」というセリフを連発しているんです。p204前刀禎明「最後にプレゼンしたかったのは『アップル』」

13)このプレゼンは2011年3月に行われている。すでに体調が本当に調子が悪かったらしい。でも、今回このiPad用のスマートカバー=通称「風呂のフタ」には感心させられる。このスマートカバーがあればこそ、私はiPadを二倍も好きになったような気がする。

14)まず彼は、僕らにSiriに対する意見やアップルの将来像について語り、アップルとSiriが協力し合うべきだと熱心に説きました。それから、Siriがどんなものか、さらに理解を深め、僕らが描く将来像にちて知ろうとしました。p212 タグ・キットラウス「Siriの将来性見抜く」

15)私は、若い時に印刷関係の仕事をしていて、今でも、英文タイプライターも和文タイプライターも持っているし、一時は、写真植字機のオペレーターもやっていたことがある。だから、コンピュータという機械がキーボードを持っていることに、とてもうれしく思っていた。

16)最近、このキーボードについて、mixiの自分の日記に「スマホ=タブレットのキーボードを考える」という記事を書いたところだ。物理キーボード派だった私は、iPadを触っているうちに、すっかりヴァーチャル・キーボードで十分だということがわかってきた。

17)そして、次には文字が最終形態ではないことも、うすうす気が付き始めた。アップルにはSiriという音声認識の技術がある。これはまだ完璧なものとはいえないが、いつかは映画「2001年 宇宙の旅」にでてくるコンピュータ「HAL」のように、お互い「会話」できるようになるかもしれない。とすると、画面に触ることもなく、画面が汚れる、なんてことは、まったく笑い話になる時代がくるかもしれない。

18)彼は、「人間とコンピュータとの対話」を魅力的なものにする必要があると認識していました。だから、僕たちがアンディアを持ち込んだ時、開発を進めるように背中を押してくれたのです。p215タグ・キットラウス「Siriの将来性見抜く」

19)アメリカにおいて、これほど幅広い独創性を持った人物はトーマス・エジソン以来だと思いますし、これほどまでに高い想像力を発揮したのはウォルト・ディズニー以来だと思います。さらに言うなら、現代のビジネスの概念をこれだけ変えることができたのも、ヘンリー・フォード以来でしょう。たった1人の人物が、これら3人の偉大な人間全体に匹敵するのです。それも、より複雑で大規模なグローバル化が進んだ今日という時代に実現してみせたのです。p158ジョン・スカリー「エジソン + ディズニー + フォード = ジョブズ」

20)どこか、ビッグ・マウスのリップ・サービスのように聞こえてこないこともないが、その語り主が、かつてジョブズの仇敵のような対比になってしまったジョン・スカリーであるから、なんとも意味深い言葉となっている。彼をペプシから呼んでアップル・コンピュータのCEOにしたのはジョブズだったが、そのジョブズをアップル・コンピュータから追放してしまったのもスカリーだった。そのスカリーが立ち行かなくなり、スカリーがいなくなったアップルにジョブズは返り咲き、それから新たなるイノベーションを再開始した。

21)彼は日本を何度も訪問し、そこから多大な影響を受けました。特に、京都の庭園をこよなく愛し、その美しさを気に入っていました。丁寧に手入れされた庭園が彼の作品のインスピレーションとなったように、彼は彼が作る全製品がほかの人たちのインスピレーションになることを望んでいました。

 本当に、京都には何度も足を運び、長い時間を過ごしました。子供たちの1人ずつ京都に連れて行っていました。京都の静穏な美を心から敬愛していたのです。p221ウォルター・アイザックソン「『日本の美』に魅せられて」

22)アイザックソンは、唯一のジョブズ「公式伝記」「スティーブ・ジョブズⅠ」( 2011/10 講談社)の著者。ジョブズのことを第三者としてよく知る立場にあった著者のこの言葉で、当ブログのジョブズ追っかけは、もとの「『禅』の世界へ」日経おとなのoff 2012年6月号)へと戻ってくる。

23)スティーブ・ジョブズは自分のことを「反逆者」、もしくは「はみだし者」と思いたかったようです。(中略)反逆者、はみ出し者と呼ばれる人たち」で始まるこのコピーは、最後に「自分が世界を変えられると本気で考えるクレイジーな人こそが、実際に世界を変えられるのだから」と締めくくられています。このように、彼は自分のことを権威に反抗する人間だと思いたがっていました。p235ウォルター・アイザックソン「『反逆者』2つの側面」

24):僕はね、もし、彼があと20年、30年生きてたとしたら・・・・・彼は新製品の発表のプレゼンテーションの時、「最後にもう1つ」っていつも言うんですけど・・・・・最後にもう1つ、皆さんにお見せしたいものは「iRobot」だったと思う。

 もし彼が20年、30年生きていたとしたら、彼が本当に一番作りたかったものは、iPhone、iPadといろいろ続いて、最後に彼は、人が愛せる、感情豊かな、ただ作業がやれるというロボットではなくて、人が、狂おしいほどに人間が愛せる、一緒におとぎ話を子供に読んでくれる、そういうものを彼は最後に登場させたんじゃないかなという気がします。p247孫正義「『狂おしいほどに』自分の作品を愛した人」NHKクローズアップ現代 国谷裕子との対談

25)Siri、そしてiRobotと来て、なるほど、ジョブズが未来に見ていたものが何だったのか、すこしわかるように思った。パソコン→iPad→iRobot・・・・・ いずれ、人類はこの「革命」を受け継いでいくことになる。

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