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2013/04/18

「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」 村上 春樹 (著) <2>

<1>よりつづく

2013/4/12 文藝春秋 単行本: 376p
Vol.3 No.0972

1)読了。あはは、一気に読んだ。

2)別にネタばれするほどダイジェストする能力はないが、まずは一気に読んだ。小説嫌いの、小説音痴の私が一気読みしたくなるのだから、やっぱり面白い小説なのだろう。私の場合は、途中でやめると、もう放り出してしまうかもしれなかった(笑)。でも、最後までキチンと読んだ。

3)アカ、アオ、シロ、クロ、とくるなら、田崎つくるは、キイロだろう、と思った。よく相撲で、赤房下、白房下、とかいうが、それぞれの方角を示しており、五行説に則っている。キイロには方角はない。ど真ん中だ。

4)それにハイイロとかミドリもでてくるが、まぁ、それは付け足しだろう。田崎つくるは、人生の土俵のど真ん中に復帰するだろうか。あるいは、土俵外の砂と消えるのか。

5)「たとえ君が空っぽの容器だったとしても、それでいいじゃない」とエリは言った。「もしそうだとしても、君はとても素敵な、心を惹かれる容器だよ。自分自身が何であるかなんて、そんなこと本当は誰にもわかりはしない。そう思わない? それなら君は、どこまでも美しいかたちの入れ物になればいいんだ。誰かが思わず中に何かを入れたくなるような、しっかり好感の持てる容器に」 p323

6)昨日、iTunes Uで「Who am I? Identity, nationality and belonging ... 」を「受講」したばかりだ。私は誰かのテーマでは、結局、ナショナリティとか所属とかに帰結していくまやかしがまかり通っている。ここではエリの「自分自身が何であるかなんて、そんなこと本当は誰にもわかりはしない。」の方が正解のはずだ。

7)誰でもないにも関わらず、人は、自らに色を付けていかざるを得ない。色をつけていき、かつ、また、形を作りながら、いずれ消えさる。

8)この村上作品を読みながら、ヒュー・ヘフナーの「プレイボーイ」誌の編集方針を思い出していた。たしか三つの要素で成り立っていて、ヌードと車と、もうひとつ、たしかギャンブルだったかな、その要素と村上春樹小説の要素はどこか、かぶるのではないか、と思った。

9)村上春樹の小説はいつもポルノチックな部分と、執拗な車たちの登場がある。レクサスやポルシェ、メルセデス・ベンツ、カローラ、フォルクスワーゲン・ゴルフや、ルノーワゴン。車好きならずとも、イメージがおのずと湧いてくる。

10)しかし、ソフトポルノと車は共通していても、ギャンブル(だったと思う)は村上作品にはあまり登場しない。今回もラスベガスの風景も登場はするが、柱になっているとは思えない。敢えて、三本柱の一角に据えようとするなら、もう1つの要素は「死」だろう。

11)ポルノ+車+死でもって、今度こそノーベル賞をとるだろうか。まぁ、そんなことは実はどうでもいい。とにかく、この小説が100万部出版され、同時的にそれ以上の人びとに読まれるという現象に、正直に驚く。それだけの「価値」が、この小説にあるのだろうか。それだけ多くの人に、求められているのだろうか。なぜに?

12)当ブログの三コン論を象徴する人物として、仮にコンテナにスティーブ・ジョブズを置き、片やコンシャスネスにOSHOを置くとしたら、真中のコンテンツに村上春樹を置いてみる。これもありだろうな、と思う。(実は、最近はOSHOはコンシャスネスではなくコンテンツなのではないかと思うこと多し。コンシャスネスは、もっとなにか別な求め方があるような予感がしてきた)

13)村上春樹は、どこかでドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」のような小説を書いてみたい、と言っていたことを思い出した。今回の小説を読みながら、たしかにかの文豪の小説のように「構造」が頭の中に描かれてくる部分が多い。人物たちが等間隔で書かれ、名前を二つづつもつ。そして、平面を共有しながら、立体になると、対極へと分かれて対峙する構造。

14)私は東京のような大都会にすむシティーボーイじゃないから、この小説のような「現代人の孤独感」のようなものを持たないし、敢えて共感するつもりもないが、もし、彼の世界が多くの現代人を惹きつけているとしたら、この大都市文明のなせる業ともいえるだろう。

15)「海辺のカフカ」や「ノルウェーの森」ともどこかリンクしてくる。あるいは多くの村上作品の中に、どっかと腰を据える作品であることは間違いないだろう。

16)私のような小説音痴でも、小説って、面白いな、と思う。

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