« 新版 恐竜の飼いかた教えます ロバート マッシュ 著 | トップページ | 「日本の恐竜図鑑」 じつは恐竜王国日本列島 »

2013/06/15

ゲーリー・スナイダー・イン・ジャパン 『現代詩手帖』特集 <3>

<2>よりつづく

Photo

「ゲーリー・スナイダー・イン・ジャパン」<3>
「現代詩手帖」 2012年7月号特集1 思潮社 雑誌
★★★★★

夜話(よばなし) 
 
昔むかし カリフォルニアの冬は、語り部たちの時間だった

きのうは、ほぼ一日中、電気系統の修理にかかりきりだった。
いま使っている発電機、予備の発電機、その前に使っていた発電機
いくつものバッテリーが並んだセット、トレイス社製の大きなインバーター
そしてソーラーパネル----
すべてが止まってしまった----寒い朝の暗闇のなか
昔にもどって、ランプとロウソク、それに薪ストーブ、これはいつでも使える
ホンダのバックアップ用の発電機はサイクルの故障だろうか? インバータの中にあるバルク電荷のトレイがおかしいのか?

プロパンで動く、オナン社製の大きな緑色の発電機、こいつがどうやっても動かない
(まえにエアー・クリーナーが詰まったことがあった。エンジンからオイルが噴き出したせいだ)

(そう、機械はかならず直せるはず----でもその日に予定していた計画は諦めるしかないな----マニュアルとにらめっこだ----その方面に詳しい友人に来てもらおう----お茶を入れて----道具と問題を整理しながらくつろぎ、その日を楽しもう)

ここで暮らしはじめた最初の十五年間は、ランプの生活だった。先住民の時代から根を張る、どでかいブラック・オークの木、その木陰に重たい瓦ぶきの屋根。

ジーグリートの連れ合いの女性で、仕事のパートナーでもあるシュリが、九トントラックに砕石を積んでもうすぐやってくる。冬がくるたびに泥かる道路は、砂利を敷かなければならない。冬の雨と雪解けから道路を守るには、それなりの備えがいる。      道の両側に排水溝を掘らなくては。

一九六二年のこと、ジョアンと一緒に九州を旅したとき、長崎の街を歩いた。目抜き通り、喫茶店、葉を広げた木々、庭は緑でいっぱいだった。
九州のまんなかにある直径二十四キロの巨大なカルデラ、阿蘇山でのこと。長崎のあの時代を生き延びた観光客と出会った。火傷の痕が残っている、つるつるの歪んだ顔。
そして、それから「はだしのゲン」を読んだ。

ぼくは思った。原爆は手に負えない力だ。
そして、それを最初に手にしたいという誘惑・・・・・・。
最初の「世界のボス」になりたい奴がいることも。
いつかはそうなる。 だから私たちの進むべき道を変えなくては、さもなければそこに向かう。

イスラム教徒やキリスト教徒、あるいはユダヤ教徒に、ぼくはなれない。なぜなら「十戒」は倫理的に不十分だからだ。聖書の「汝、殺すなかれ」は、人間以外の命を除外しているから。

どうしてそんなことができるのだろう? この世界を何と考えていたのか?
触覚器を持つクネクネするもの、小さなヒレを持つもの、トゲを持つもの
ヌルヌルした首を持つもの----これはすべて例外----夜に光る目----雪の上の脚あとも。

そして、こうも言っている。「私の前に他の神はない」と----まるで
権力や妬みや嫉妬に凝り固まっているみたいだ。その神とはどんなもの?

いつも心配している神とは?
jたくさんの小さな神々は、自分たちのやり方を始めようと待っているし、自分たちが誰かを知りたがっている。

紀元四世紀の北インドに、タントラ派の女性の導師がいた。その仏教徒はこう言った。
「エホバという西の神、彼はたいしたものですが、あまりに傲慢すぎます。なぜなら
自分が世界の創造主だ
などという馬鹿げたことを考えているからです」
それは世界を後戻りさせる幻想だ。

さて、エネルギーの問題にもどってみよう。オナンの発動機は直せる。予備の予備は諦めよう。次にやるのは鋳鉄製のエンジンがついた予備の発電機、それからラジエイターだ
数世紀にわたる品質保証----ソーラーパネルの数を増やそう----

昔むかし、この地で、直径十メートルの暖かい土のロッジに暮らしていた人たちは
ロウソクの代わりに、松脂のついた細長い木片を燃やした
数世紀の間、冬が来るたびに----
囲炉裏の火とその回りに突き刺した木片が燃えていた----

夜話(よばなし)に、そんなに強い光はいらない。

   二○○九年三月 Stories in the Night    p10 ゲーリー・スナイダー/原成吉訳

<4>につづく

|

« 新版 恐竜の飼いかた教えます ロバート マッシュ 著 | トップページ | 「日本の恐竜図鑑」 じつは恐竜王国日本列島 »

27)Meditation in the Marketplace5」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ゲーリー・スナイダー・イン・ジャパン 『現代詩手帖』特集 <3>:

« 新版 恐竜の飼いかた教えます ロバート マッシュ 著 | トップページ | 「日本の恐竜図鑑」 じつは恐竜王国日本列島 »