ゲーリー・スナイダー + 山尾 三省 「聖なる地球のつどいかな 」<4> 山里勝己監修
2013/4/23 新泉社 単行本: 288pVol.3
No.1009★★★★★
1)この本は再刊本である。スナイダー+山尾三省、二人の対談は1997/03にスナイダーの住まいであるアメリカのキットキットディジーで行われ、翌年、山と渓谷社から刊行された。長らく絶版になっていたのだが、この度、野草社+新泉社から再刊されたのである。
2)当ブログとしては、この本を新刊本として扱い、改めて再読するものである。当ブログもVol.3のNo.1009に及んでいる。定量としているのがNo.1024なので、最終的には、この本がVol.3を締めくくることになるのではないだろうか。
3)いずれにしても、この本が当ブログ7年の中のベスト10の中の一冊になることは間違いない。
4)羽倉玖美子ブログ「地球のつどい」は、この本のタイトルからネーミングされている。
5)私の、3・11後は、ゲーリー・スナイダーから始まった。そしてスナイダーの中のベスト一冊となれば、この本に全部詰まっているとさえ思える。
6)スナイダー 木にしても、石炭、石油にしても、核にしても、みんな太陽熱がもたらしたものなのです。たとえば、もし木を燃やしたとしても、そのエネルギーの年齢はたいした年令ではないんですよ。
なぜなら木はごく最近の太陽熱によってもたらされたものだからです。私たちにとても近いんです。過剰なエネルギーを引き起こすことはありません。そして次の時代は、人類が石炭と石油を発見した時代です。石炭や石油は古い太陽の光で作られたものです。
それはいたるところに持ち運びができるし、どこでも見つかるし、それによってエンジンを動かすこともできますね。工業の基礎ができるんです。
最後に第三の時代というのは、原子力の時代です。原子力エネルギーは宇宙と同じ年令なんですよ。それはもっともコントロールしにくく、もっとも危険なものなんです。
ジャックソンは「自分の使うエネルギーの年齢(エネルギーがどれほど古いか)を知っていないといけない」と言ったんです。そしてまた、「いちばん健康な方法というのは我々にもっとも近いエネルギーを使うことだ」と言っているんです。
山尾 つまり薪ですか?
スナイダー 薪、太陽熱、水力などですね。
山尾 みんな最近のものですね。ソーラー・エネルギーなどはいちばん新しい。
スナイダー そうです。今ここで電気をつければ、ほら、これはたった今、太陽からきたエネルギーなんですよ(スナイダーの家の電気はソーラー・パネルを利用している)。
山尾 本当に今、生まれたエネルギーですね。面白い。
スナイダー これは太陽から直接来たものです。あそこにパネルが見えますね。今まさにここに来ているんです。
山尾 今であるのと同時に「永遠の今」ですね。
スナイダー そうです、永遠の今。面白い見方ですね。
山尾 風もありますね。
スナイダー 潮もあります。
山尾 潮流ですね。
スナイダー とにかく、我々はエネルギーとかテクノロジーに反発するべきではないんです。しかしながら私たちは、はっきりと差異というものを認識しながら使うべきだと思います。
---- 何の差異ですか?
スナイダー いい道具と悪い道具の差異です。それを認識しながら使うべきですね。
山尾 改めておうかがいしますが、原子力エネルギーというものをどう思いますか?
スナイダー たいへんヒドイものですよ! 人間がコントロールできないもの、特に核廃棄物はね。誰もそれをどう処理していいかわからないんですから。
山尾 人間のキャパシティーを越えてしまっていますね。
スナイダー そうです。その古代エネルギーはあまりにも古すぎて、あまりにも遠すぎて、私たちからかけ離れているものです。まるでネズミ一匹殺すのに大砲を使うようなものですよ。
というのは、原子力発電所を造ってやっていることは何かと言えば、水を沸かしているだけなんですよ。そんなこと薪や石炭でできるんですよ。それだけのことなんです。過剰に高温過ぎるんですよ。だから、一匹のネズミを撃つのに大砲を使うようなものだと言うんです。
過剰に高温にして、その過剰な熱を取り扱わなければいけないんです。ただお湯を沸かして、スチームでタービンをまわしているだけ。それだけですよ。それで高熱と放射線が出るんですからたいへん危険なんです。
山尾 浪費ですね。
スナイダー 電気をつくるのに原子力を使うのは、あまりにも複雑で危険過ぎます。節電をして、もっと安全で効率的に電気をつくるべきです。そのほうがずっと効率的で健康的ですよ。
たとえば冷蔵庫ですが、冷蔵庫はあまり省エネ的ではないんです。今、実験的な冷蔵庫が作られているですが、従来のものよりもほんの少し厚みがあるだけなんですが、三分の一の電力消費ですむ。
アメリカ中の冷蔵庫が、もし全部このような効率的なものになったら、現在使われている15の主要電力工場が必要なくなるということです。そのようないろんな例があるんですよ。たとえば夜の街なかの建物で使われている照明ですね。本当にいろんな例があります。
山尾 そういう意味ではテクノロジーに関しても、いいテクノロジーと危険なテクノロジーをよく見分けていく必用がありますね。
ちょうどこちらへ来る前に東海村の動燃再処理工場で爆発事故がありました。それ以前にも日本の美浜原発とか敦賀市の「もんじゅ」、スリーマイルやチェルノブイリなどでもすでに事故が起きていますね。人間が造り出した物から逆に牙をむかれているんですね。
スナイダー 誰がつけたのか知らないけれど、その発電所を「もんじゅ」と呼んでいる。あれはイヤだね! 文殊は知恵の菩薩なんですよ。
---- あ、そのもんじゅですか?
スナイダー そうです。これは馬鹿な問題だね。本当にイヤだねぇ。
---- ものすごい皮肉ですね。
スナイダー 皮肉だね。あと「ふげん」。
---- 普賢菩薩。ありますね。
スナイダー 文殊と普賢。普賢菩薩は愛の菩薩ですよ。
山尾 これは歴史に残る名コピーですね。ブラックユーモア。それを名づけた人は20世紀最後の名高いコピーライターじゃないですか?
スナイダー こういうのはアメリカの原子炉に「イエス」と名づけるのと同じようなことですよ。
山尾 「イエス」、なるほどね。
スナイダー いやだねぇ。
山尾 つまり一般的には原子力エネルギーというのはいちばん新しいエネルギーで、その次が石油だと思われているわけですが、本当は逆で、原子力はいちばん古いエネルギーというわけですね。
スナイダー 古い太陽のエネルギーがいつ薪に入ったか、いつ石炭に入ったかということを考えると、原子のエネルギーは宇宙のはじまりと同時に入ったわけです。
---- 原子力に関してですが、それは牙をむいてきたということは、人類は20世紀においてパンドラの箱を開けてしまったということではないんですか?
スナイダー そうかもしれない。
山尾 その側面は難しいですね。ゲーリーはどこかで原子力はもっと研究されなければならない、と書いていますよね。ぼくたちは、原子力は手に負えないエネルギーだから禁止すべきだと主張する一方で、すでに排出されてしまっている廃棄物は放っておけば、プルトニウムの毒性の半減期で2万5000年かかるんですから、その毒性を消す科学技術というものの研究もとても大事なことだと思うんです。もうパンドラの箱は開いてしまったのですから。
スナイダー 箱は開いてしまいましたが、閉めることは可能です。廃棄物処理に関して最大限の努力をすることです。でき得る限りのことをすることです。それが私たちにできる精一杯のことです。
東カナダにはローレンシアン・シールドという岩盤があるんですが、何千マイルもあって、たいへん深く、またひじょうに古くてじょうぶな岩盤なんです。その岩の中に閉じ込めておけば、しばらくは安心だという議論が起こっています。
アメリカ政府は20年か30年ほど前から、ネバダ州のユカ・フラッツというところに核廃棄物を閉じ込めようという計画をたてていました。しかし資質学者たちは昔は安全だと言っていたんですが、だんだんと安全性が問われるようになってきたんです。
そこでネバダの人たちは反対するようになりました。そして次はどこに行こうかと、捨てる場所、置く場所を探しているんです。
山尾 核のゴミですよね。一般のごみはリサイクル可能ですが、核廃棄物というゴミはリサイクルできないんですよね。
スナイダー そうです。p222「科学は美の中を歩む」
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