柳田國男と遠野物語 ~日本および日本人の原風景~ タウンムック <1>
2012/8 徳間書店 ムック: 112p
Vol.3 No.1014★★★★★
1)遠野に行ってきた。最初は釜石の知人を訪ねる旅のはずであったが、釜石には適当な宿泊設備が少ないということで、遠野に宿をとることになった。釜石というイメージと、遠野というイメージでは、釜石は近代的な工業都市で、遠野は辺鄙な山村、と思い込んでいたが、実は、大きく違った。
2)釜石は確かに鉱業の発達した沿岸都市ではあるが、今回の3・11による被害の爪痕が大きく、疲弊したままである。それに比較すると、遠野は内陸部にあり、もともとが、近代的に整備された中核都市であるので、商業施設や宿泊施設がキチンと整備されている。
3)ましてや、この数十年、柳田国男の遠野物語をベースとして観光市として整備された現在、遠野は、私のような、つい思い立ったぶらり旅の観光客には、うってつけのスポットになっている。その整備された美しさと、その奥にある禍々しさが、不思議と共存している。それが遠野である。
4)住まいを立って、車でしばらく海岸線を走る。もう何度も足を運んでいるところなので、海岸線もよく見えない高速をただひた走る。石巻を過ぎ、南三陸町を過ぎ、気仙沼を過ぎると、やはりそこは奥の国、東北の路である。
5)いきなり海岸線に、遠くに魚の骨のような建築物が出現。よくよく見ると、そこは陸前高田市であり、あそこに見えるのはいわゆる奇跡の一本松だった。いちど枯死してしまった一本松は、科学的に処理され、同じ場所にモニュメントとして、保存されることになった。その途中である。
6)それからまた海岸通りを走り、釜石についた。昼前についたので、釜石大観音を参拝したあと知人と会う予定だったが、その日は、年に一度のお祭りの日ということで、入場料が無料で開放されている他、なんと、その境内で奉納される鹿踊りを拝観することができるのであった。
7)知人を呼び寄せ、敷地内を拝観。遠く海を見つめ、ただ黙想する。会食し、市内徘徊をそこそこに、遠野へと向かう。
8)途中、山中にある滝観洞という長さ1キロほどの洞窟を探検する。鍾乳洞とも違う、長い長い細い洞窟だが、起伏に富んでおり、一番奥には、落差が数十メートルもある自然滝が存在する。かなりの異空間である。
9)そこからさらに数十分ほど車で走るとそこが遠野であった。道の駅で一息、地元で作られた牛乳で作られたアイスクリームに舌鼓を打ち、土産物コーナーを見て回る。
10)そこから更に駅近くまで走れば、そこが今晩の宿である。すこし早目に入った二階建て日本家屋の宿は、築60年ということで、ほとんど私と同じ年齢であった。あちこちに痛みが感じられるし、そもそも仕組みが古い。だが丁寧に整備されていて、あちこちに猫たちが座っていたりするのが、いかにも遠野らしいというべきか。
11)釜石が目的だったので、遠野については、宿に着いてから改めて調べる予定だった。ネット予約して6畳一間と聞いていた割には12畳二間続きの大きな部屋で、窓からの眺めもいい。一番良かったのは、部屋にちゃんとLANケーブルが配線されていることである。(もっともそれを確認してからこの宿を予約したのだった)。
12)まだまばらな宿泊客だが、どうやら一番風呂は私だったようだ。岩ぶろでひと風呂浴び、髭をそる。遠野だから、髭は伸びていたほうがいいかな、とも思ったが、いえいえ、遠野は近代都市。無精ひげよりは、キチンとネクタイでもしたほうがいいかな、とさえ思った。
13)時間きっかりに夕食の席につき、地元産のどぶろくをいただく。奥さんも味見したものの、残りは私が頂いたから、ほぼ二人分を飲んでしまった。これがうまい。それに効く。
14)明日のスケジュールを立てないまま、早々と床についてしまったのだった。
15)思うに遠野郷にはこの類の物語なお数百あるならん。国内の山村にして遠野よりさらに物深き所にはまた無数の山神山人の伝説あるべし。願わくはこれを語りて平地人を戦慄せしめよ。p4柳田国男「遠野物語 序文より」
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