「Sue スー」 史上最大のティラノサウルス発掘 ピ-タ-・ラ-ソン他 <3>
ピ-タ-・ラ-ソン&クリスティン・ドナン著 冨田幸光監訳 池田比佐子訳 2005/03 朝日新聞出版 単行本 464p
結局、著者と著者の研究所は有罪となり、スーを発見し、発掘し、学術調査をしたにもかわらず金銭的にはマイナスとなった。スーの所有権は土地の所有者だった個人のものとなり、ザザビーオークションに委託されることになった。1997年10月、スーは836万ドル(およそ10億円)で、マクドナルドとディズニーによって落札された。
後半3分の1のほぼ半分は、その裁判劇の終末の報告であり、最終部分においては、なぜ6500万年前に恐竜の時代は終わったのか、という考察に至る。
さまざまな推論がなされたものの、地球外からの飛来物が地球全体に大きな影響を及ぼし、当時の生命体の4分の3は絶滅した、ということが、科学的に証明され、現在では定説化している。
恐竜→ティラノサウルス→スー、というプロセスで読み進めたこの本だったが、話題はスーにとどまらず、現在の地球上の生物である人間たちの物語となった。そして、恐竜一般の分布図におよび、その絶滅原因に思案はおよび、返す刀で、絶滅に「瀕する」人類への警告へと展開しつつあった。
巻末には貴重な資料が付録として50ページ弱が展開されている。分かったことは、現在のところ「決定版」ともいうべきティラノサウルスは存在しておらず、すべてにおいて曖昧性が残っている、ということだった。
チキンの骨で恐竜を作ろう、というプロジェクトにおいて、細部に渡れば、さまざまな疑問が湧きあがり、この部分はどうなっているのかという疑問は次々起こってくるが、ある程度のところまで行けば、あとは、それぞれの想像に任されている、ということになろう。
ところで、途中で気づいていたとはいうものの、プテラノドンなどの総称である翼竜類はどうやら「恐竜」には属していないらしい。現代地球の鳥たちは恐竜の子孫であるということにされているが、つまりそれはプテラノドンなどの翼竜の子孫ではないということでもある。つまり、プテラノドンなどの方が現在の鳥類に近いということになる。
だから、チキンの骨でティラノザウルスの骨格モデルを作ろう、というプロジェクトにいささか以上の正当性があるとしても、チキンの骨から翼竜プテラノドンを作ろう、というプロジェクトは、どこかで挫折する可能性がある。特に腰骨あたりや脚などについてであろう。
となると、恐竜の中にその「飛翔性」を求めるとするならば、翼竜類を追いかけるよりも、ティラノザウルスや他の地上の恐竜類の中の鳥類への進化のプロセスやその可能性、あるいは因果性を精査していくことのほうが大事、ということになるのかも知れない。
当ブログにおける「天空に現れた龍」とは、翼竜でもなければ、鳥でもなく、また当然恐竜でもない。恐竜の中にある「進化の可能性」ということになれば、話題の局面をいささか以上に切り替えていく必要性があるようだ。
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