「亀の島」―対訳 ゲーリー・スナイダー ナナオ・サカキ <2>
「亀の島」 対訳
ゲーリー・スナイダー(著)、ナナオ・サカキ (翻訳) 1991/01 山口書店 単行本 251p
最近またゲーリー・スナイダーを想うことが多い。
ニュートンの追悼公演の際に立ち寄った図書館で「チキンの骨で恐竜を作ろう」を見つけてから、なぜか恐竜フィーバーに突入し、ついに国立科学博物館とコラボミュージアム「ティラノサウルスVSトリケラトプス」で実物大の骨格モデルと対面するために、会津若松の福島博物館までいくことになった。
ところで、スナイダーの「亀の島」って、何年前から始まっていたのだっけ?
この土地で起こったこと
----3億年前----
初めに海があった----やわらかい砂、泥、泥灰土
堆積し、圧縮され、熱され、ねじ曲がり
破砕され、再結晶化し、相互浸透があり、
何度も隆起し、それからまた水底に沈んだ。
やがて溶けた花崗岩のマグマの貫入
それが深層で冷却され、斑晶ができ
黄金を含む石英が、亀裂に満ちていく。
----8千年前----
海底の堆積層が隆起し褶曲する
花崗岩はその下深く沈んでいく。
幾世紀も続く暖かく静かな雨が
(暗赤色の熱帯の土壌を作り)
地表を2マイルも削り
鉱脈がむき出しになって、河床に
黄金の塊が転がる
粘板岩と結晶片岩が黄金にからまる
火山灰が流れ落ち 水の流れをせきとめ、
やがて黄金と砂礫が堆積する。
----3百万年前----
北へ流れる二つの川がつながって
長く幅の広い湖となる。
それからそれは傾いて川はふたたび分かれて
西に流れ
フェザー、ベア、ユバの流れとなって
渓谷を切り開いていく。
ボンデローサパイン、マンザニータ、黒樫、イチイ
鹿、コヨーテ、ブルージェイ、灰色リス、
地リス、狐、尾グロウサギ、
リングテール、ボブキャット、熊
がここに住むためにやってきた。
----4万年前----
そして人間がバスケット・ハットやネットを持ってやってきた
地下につくった冬の家
緑に塗ったイチイの弓
煙たい闇の中で男の子や女の子は
ご馳走やダンスや歌や物語
----125年前----
それから白人たちがやってきて古い砂礫や黄金を見つけるために
大きなホースで水を流して
木や岩をひっくり返した。
馬、林檎園、トランプ、
ピストルを撃ち合い、教会が建ち、牢屋ができた。
*
僕らはこの土地は誰のものか尋ねた、
そしてどこで税金を払うのかと。
(この土地を20年も使わなかった2人の紳士、
そしてその前は使い古した鉱山の証文を親父からもらった男の未亡人)
こんな権利を急いで押しつけられたこの土地は
マイドゥ族の支族の
ニセナンの人々が鹿を狩りドングリを集めた土地ではなかったか?
(その人々は決して話す機会を与えられなかったし、
自分の名前さえも告げることはできなかった。)
(そしていま誰がグアダルーペ・イダルゴ条約を記憶しているというのだ。)
土地はそれ自身のもの
「自我に自我なく、物に自我なし」
海原のような天空、その渦巻く虚空の中を
点滅し
ながら
世界がめぐり
尻尾をくわえた亀の島が泳いでいる
そしてコーンウォールの鉱夫の子孫のトバイアセン氏が
郡の税金の査定をする。
(税金とは僕らの身体と精神の産物、
年ごとの式典に招かれた客、重く味わい深くなった
太陽の光を称えつつ
肉体と眼とかなり大きな脳を求めて
食物連鎖を上ってきて、
高みから己の姿を
振り返り眺めている)。
いま、
僕らは金の採鉱場の近くに座っている
森の中、焚き火のそばで、
月や惑星や流星を見つめながら----
ぼくたちは誰なの?と息子たちがきいてくる
家で採れた林檎を干しながら
野苺を干しながら、肉の燻製をつくりながら
わら束に矢を放ちながら
空軍のジェット機が北東に向かう、轟音を立て、いつも
夜明けに
あのひとたちは誰なの?と息子たちがたずねる
いつかわかるさ
いかにいきるべきかを
だれがそれをしっているかを
松の木でブルー・ジェイが高い声でなく。
ゲーリー・スナイダー「亀の島」より
おおやっぱり3億年前から始まっていた。パンゲア大陸の時代だね。
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