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2013/09/13

「NHKスペシャル 生命」 40億年はるかな旅 第2集 進化の不思議な大爆発 :

<第1集>からつづく
Sei2
「NHKスペシャル生命」 40億年 はるかな旅 第2集 :「進化の不思議な大爆発」
出演: 毛利衛 1994/05/29放送 音楽: 大島ミチル ナレーション: 石沢典夫/上田早苗VHS DVD
Total No.3099★★★★☆

 すばらしいシリーズなのだが、そのすばらしい「リアリティ」に圧倒されながらも、ふと思う。これって「本当」だろうか。

 生命や、地球の成り立ちが「科学的事実」をもとに「構成」されてみると、もうそこには、たった一個の生命体としての「私」の入り込む余地など、まったくなくなってしまう。

 「私」にとって、なぜ「生命体が発生したのか?」よりも、「私はなぜ生きているのか?」のほうが、もっと大事な課題なのではないか?

 よくよくできた番組である。分かりやすく、きれいだし、説得力がある。しかし、これら一連の映像を「事実」として確定してしまって、いいのか。

 たとえば、私などは、最初は、恐竜の存在など疑いようのないものとして、ただただ伝えられるままに信じようとしていたのだが、いろいろ調べてみると、そこにあるのは、数少ない「化石」などの「裏付け」があるだけで、その多くは、「科学者」たちの「想像」によるところがほとんどである。

 いわば、フィクションやイマジネーションと、大きく隔たっているわけではない。自らの「学説」を裏付けるための「証拠」をいくつか積み上げて、そのような全体像を「構成」してはいるけれど、それを、いかにも、見てきたように「事実」として「確定」してしまっていいのか。

 すくなくとも、漠然と「NHKが放映するのだから」、「本当」だろう、と、暗黙に信じてしまっている自分に、唖然とする。いや、これは「違う!」と、むしろ否定的に、批判的に、うさんくさいものとして、見てみる必要があるのではないか。

 よく、コマ落とし撮影で、薔薇の花などが、スラッと開くシーンなどがある。いかにもスムーズで、あの花弁の動きならば、扇子などで煽いだように、風さえ起こりかねない。しかし、薔薇が花開いたとしても風など吹くことなどない。

 あのような映像はすばらしいものではあるが、すでにそれは「こしらえられた」ものではないのか。「芸術」的ではあったとしても、それは決して「科学」的と言えるとは限らないのではないか。

 この長大な40億年を、いかにもコマ落とし映像のように「要約」して見てみることは、たしかに「芸術」的ではあるが、決して「科学」的とは言えないのではないか。

 そもそも、生きた恐竜を見たことがある人間など一人もおらず、その歩き方や、生態、目の形や、皮膚の色さえ、本当はよくわかっていないのだ。宇宙の成り立ちや、地球上の生命の進化の過程など、「確定」した「事実」として語ることなど、できないのではないか。すくなくとも、「であっただろう」とか、「と推定される」程度の軽い紹介にとどめるべきではないのか。

 そんなことは、もう分かっている、分かっていることを前提としてこのような番組を見るべきだ、という人がいるかも知れない。たしかにそうであるのだろうが、少なくとも私などは、漠然と、これらのシリーズを「事実」として、無批判的に、素朴に、あっけらかんと受け容れてきた。また受け容れようとしてきた。

 いや、何かが違う。今はそう思う。少なくとも、「視点」はどこにあるのか。「生命」を見つめている「目」はどこにあるのか。このような「膨大」な「事実」の前で、立ちすくむ「私」とは誰か。

 近くのものは大きく見え、遠くのものはかすんで見え、地平線上の彼方では、やがて何も見えなくなってしまう。この距離感が必要なのではないか。このような「全体」像があってこその「私」なのではないか。

 「遠く」のものなど、見えなくなっても構わないのではないか。「近く」のものが、少なくとも、今「生きている」ことに関わることが、「まず見える」必要があるのではないか。

 これは極端な言い方だが、少なくとも、自己防衛として、このような視点を持っていないと、膨大な「事実」と称する「フィクション」の前に殴殺されかねない。

 これら一連の、「もっともそうな」お話は、いわゆる「科学者」たちが、よってたかって作り上げた「物語」なのである、という可能性を、常にもっておきたい。少なくとも、これらの「学説」は、次の瞬間、あらたな「事実」の前に、いとも簡単に否定去られる可能性は常にあるのだ。

<第3集>へつづく

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