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2013/10/11

石川裕人作・演出『方丈の海』<4> 

<3>からつづく 

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「方丈の海」 <4>
石川裕人 TheatreGroup“OCT/PASS” Vol.34 上演台本 p152

 今日は子供時代からの友人である劇作家・石川裕人の命日である。早いもので、あれから一年が経過したのか。一年間で、石川裕人が亡くなり、私が唯一出演したことがあるひめんし劇場の伊東竜俊も、追うようにして亡くなった。伊東は石川の劇作家仲間でもあり、有力な「タニマチ」の1人でもあった。

 それから半年あまりして、石川の葬儀にも出席していた、10代からの友人にして仙台e人会の会長・沢田石信が亡くなった。e人会は、たんに古い友人たちの飲み会であるが、実はそれ以上に、参加者ひとりひとりにとっては意味深い集まりであった。

 だから、この一年で、私は身近で重要な友人を3人亡くしたことになる。あんまりと言えば、あんまりである。たしかに、還暦と言う60年ひとめぐりの時間は経過した。しかし平均寿命80歳とか90歳と言われる今日、100歳を超える超高齢者も決して珍しくはない時代である。おいおい、お前ら、なんとかもう少し生きていることは出来なかったのか、と一言愚痴もいいたくなる。

 思うに、これら三人は、酒飲みである。酒を愛し、酒とともにあることを喜びとしてきた。そのため、内蔵を痛めたか、あるいは凝縮された人生を早めにたくさん体験してしまったのか、とにかく、奴らはもういない。

 そして、思えば、今日11日は、大震災3・11の、2年7ヵ月目の命日でもある。震災直前に、10代からの友人ミー坊がなくなり、震災で中学校時代の部活の仲間が亡くなり、震災直後には、福島出身の加藤哲夫氏も亡くなった。

 海岸線で家もろとも海に消えた親戚もあるし、震災の片づけの心労の中、静かに人生を終えていった叔父もいる。思い立った時、なんども海岸線を訪れてみるが、そこはもう、私が3・11以前に知っていた世界ではない。あの一瞬を境に、世界は一変した。

 石川裕人の一周忌を期して、劇団オクトパスの追悼公演が、本日から4日間に渡って行われる。残された団員達は、一時的な放心状態から、また立ち上がり、この追悼公演に向かって稽古を積んできたと思われる。

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 私はこの公演を見逃すわけにはいかない。見逃したのでは、私の人生の中の何かが不足してしまう。

 昨年の、同タイトルの、石川裕人の最期の作品となった「方丈の海」を私は見なかった。見なかったことに、不思議と後悔の念はない。私は私なりの矜持で、意識的に見ないことを決めたのだ。

 しかし、今年は見ないわけにはいかない。見逃したら、何か絶対損したような気分になりそうだ。

 昨年と今年と、何が違うのだろうか。そう思いながら、手元のある「上演台本」に一通り目を通してみる。

 台本は稽古過程で修正をしていきます。この台本は上演までの過程の記録としてお考えください。p154

 こう明記してあるかぎり、今日演じられる内容が、昨年と同じかどうかなんてことはわからない。しかし、決定的な違いがある。それは、今日は、少なくとも作・演出者としての石川裕人は挨拶しない、ということだ。姿としては、もう現すことはない。

 それでもなお、そこに、ひょっとすると、私は石川裕人を見るかもしれない。

 私は、彼が亡くなったあと、あわてるようにして、彼の作品をみた。2013/2/10~11 宮城県大河原町えずこホールで行われた、石川裕人・作『THE RIVER STORY』~水鏡の中の不思議な世界~AZ9ジュニア・アクターズ結成20周年記念公演。小学生や中学生が多数出演するミュージカル仕立ての作品に心洗われた。

 劇中にでてくる、科学少年「ユウジ」は、もともと台本にあったのか、あとから、今回の公園のためにつくられたのか。この役は、本当の石川の少年時代とは、ちょっと違っていたが、それでも、彼の少年時代をほうふつとさせた。

 うろ覚えだが、劇中で、ユウジ少年は、虫めがねを持っていたのではないだろうか。そして、探していたのは、恐竜の化石・・・・・。違ったかな・・・? でも、後から思い出すと、あの時、「恐竜」のことなんて、ちっとも興味がなかったのに、現在の私を思うと、なんだか、あの時から種は播かれていたのではないか、と思う。

 次に見たのは、2013年5月3日 宮城野区文化センター パトナシアター、石川裕人作 シニア劇団「まんざら」公演 「つれづれ叛乱物語」。こちらは還暦を過ぎたような高齢者たち向けに書かれた作品である。この作品もすばらしかった。「シロート」芝居という先入観があるのか、逆に登場人物たちの堂々ぶりには、度肝を抜かれた。

 上記二作品は、再演である。生前、再演を決して好まなかった石川裕人は、生涯で100本の作品を書いた。再演するくらいなら、新作を書く、いつもそういう勢いだった。だから、生前なら、これらの上演の機会があれば、きっと、どちらも新作が掛かったに違いないのだ。追悼公演とは言え、どちらの作品も、まったく湿っぽいところはなかった。コミカルで軽やかだった。

 まんざら公演が行なわれた劇場の地下には区民図書館がある。時間の合間を見て覗いて一冊だけ私が借りてきたのは、クリス・マクゴーワン 著「チキンの骨で恐竜を作ってみよう」 だった。当時、恐竜のことなど、まったく興味がなかった私だが、現在の私のあり様は、当ブログで展開中の通りになっている。

 AZナイン(アズナイン)の科学少年ユウジの恐竜の化石と言い、まんざらの時の「チキンの骨で・・・」といい、今となっては、石川裕人の置き土産ではないかな、と思うときがある。ましてや、石川のタニマチの1人、伊東竜俊の「竜」にさえ、何かの繋がりを感じてしまうのだ

 小桜 冗談でも法螺でもない。この世の中には我々の知らない神秘の世界がまだまだあるのだ。十年前の大地震で日本海溝に地殻変動が起こり、全長八百キロメートルに及び長々と寝そべっていた龍が天空に飛翔したという。 p45

 これは冗談でも法螺でもない。それは本当だと思う。この作品は、3・11の10年後の設定だから、2021年頃のお話である。私は、この部分については、大いに共感する。今日、私は、どんな芝居を見ることになるのだろうか・・・・?

 今晩、仕事が終わったら、何はともあれ、会場に足を向けてみよう。

<5>につづく

 

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