「甦る古代 日本の真実」 全訳秀真伝 記紀対照―1300年の封印を解く 千葉 富三<2>
「甦る古代 日本の真実」 全訳秀真伝 記紀対照―1300年の封印を解く<2>
千葉 富三 (著) 2012/08 文芸社 ハードカバー 877ページ
★★★★☆
こちらの書は、同じ著者の「甦る古代 日本の誕生」ホツマツタヱ―大和言葉で歌う建国叙事詩(2009/7/1 文芸社)の後続の書である。そそっかしい行きずりの読者でしかない当ブログとしては、その経緯は定かではないが、内容的には、ホツマツタエ40章と、ミカサフミ、フトマニ、が収容されている。
まったく同じホツマ文字(ヲシテ)で印刷されているが、こちらは、より重点的で、解説が付け加えられているようなので、より読みやすいのかもしれない。
いろいろ考えた。立証、反証、検証、というが、そもそもが、ホツマツタエ自体が、「古事記」「日本書紀」への「反証」として提出されたものだったのではないか。だとするなら、必要以上に「ホツマツタエ」に対する風当たりも強い、ということになる。
「古事記」「日本書記」信奉者にとっては、「ホツマツタエ」の「反証性」こそが恐怖なのである。万が一「ホツマツタエ」にいくばくかの正統科学性を認めるとすれば、その記紀の根底は大きく崩れることになる(すでに崩れているのだが)。
例えば、国府多賀城の前の国府として近年、国指定の史跡となった仙台市太白区の「郡山遺跡」について、記紀ばかりか、類縁の書物には、一切出てこないという。それは、抹殺され、封印されてしまった歴史であることは、ほぼ間違いない。
そして、それに先んずるところの、さまざまな遺跡が語るところは、記紀の網羅する世界から大きくはみ出し、それこそトンデモない広がりを見せているのである。今や、記紀完全主義者に未来はない。
本書でも引用されている原田実などのホツマツタエ偽書論者たちは、それこそ「立証責任の転嫁」などをせず、堂々と胸襟を開くべき時代がきているようだ。
さて、私は、この「1300年の封印を解く」という文言を見る時、ざわっと胸騒ぎがする。この1300年という年代は、西暦700前後、飯沼勇義いうところの「仙台沿岸地震」があった年代であることだ。
869年の貞観津波を遡ること200年あまり、この地に仙台平野に押し寄せた津波は、多賀城以前の国府、郡山遺跡にあった施設を直撃していた可能性があるのである。広瀬川、名取側に挟まれた三角地帯に、大津波が押し寄せた可能性は大きい。
そして、その時、地域にもまた、大きな痕跡を遺したことは間違いないのだ。例えば、郡山遺跡の南方1キロには名取川が流れ、約1キロの河川を挟んださらに1キロの地点に、あらたなる一つの痕跡がある。
市制88年を記念して、1978年に仙台市「杜の都 名木・古木八十八選」に選ばれた柳生カヤの木(太白区柳生2丁目)である。樹齢約1300年、とある。今から35年前の推定なので、樹齢約1335年、ということになるだろうか。となれば、その誕生は、西暦678年、ということになる。
さまざまな言い伝えが残されているが、せいぜい源頼朝あたりまでのことだ。この木の根元に馬を留めたという「伝説」は残る。しかしそれは、せいぜい約800年前のことである。その時点で、このカヤの木は、すでに500歳の老木であった。
根元には、薬師如来の社が祀られ、昔より地元民のよりどころとなっている。この薬師如来、というのがどうも気になる。あちこちの水害にあった地域には、薬師如来が登場するのである。
このカヤの木は、名取川から南へ1キロ、1335年の年月のうちには、流域も変わっただろうから、定かではないが、いずれにせよ、西暦700年前後とされる仙台沿岸津波の時、ひょっとすると、河岸で生き残った一本のカヤの木だったのかもしれない。
とするなら、このカヤの木は、当時からの出来ごとを、ずっと見続けてきたことになる。誰が樹齢1300年以上と鑑定したのか。これから調べて見ようと思う。そして、もしそれが本当なら、この木を調べることによって、土地の津波の氾濫地域なども、分かるかもしれないのである。
カヤの木本人は、立証、反証、検証など、必要ない、とおっしゃるであろう。実際に、こうして存在している。いまだに若い芽を出し、年々に実を付けている。地域のマンションの子どもたちの遊び場だ。子供が遊びに来てくれるのが一番楽しそうだ。
「1300年の封印を解く」という時、私はいつも、このカヤの木のことを考える。
つづく
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