NHKスペシャル 「MEGAQUAKE II 」巨大地震 日本列島“大変動期" 最悪のシナリオに備えろ
日本列島“大変動期" 最悪のシナリオに備えろ
NHK取材班 2012/08 NHK出版 単行本 (ソフトカバー): 188ページ
Total No.3123★★★★☆
3・11以前に出された本の中における、当ブログが「3・11三大予言書」と名付けたところの、赤本「仙台平野の歴史津波」(飯沼勇義1995)、黄本「原子炉時限爆弾」大地震におびえる日本列島(広瀬隆2010)、とならぶ、黒本「MEGAQUAKE」 巨大地震―あなたの大切な人を守り抜くために!(NHKスペシャル2010)の後続本である。
2011年の3・11を挟んでの、その結末を見たうえでの続刊なので、当然のごとく、その見かたは深化している。
私たちは、本当に”警鐘”を鳴らしえていたのか。1000年に一度の巨大地震の存在を知りながら、どこまで本気で伝えられていたのか。あのとき、なぜ貞観地震をもっと深く掘り下げてメッセージを発信できなかったのか。地震のあと自問した。
1000年に一度と何度も繰り返しながら、何となく、近い将来の現実とは受け止めていなかったのではないか。確かに巨大地震は起きたが、それは50年後だったかもしれないし、100年後だったかも知れない。100年に一度、数百年に一度というような、不確かではあるが避けられない未来のリスクをどう受け入れればいいのか。ただ、「想定外」と言いのがれることはできない、そのことだけが確かだった。p181梅岡宏「あとがきにかえて」
未来を正確に読むことは誰にもできない。地球時点や星の動きなら、ある程度の正確さで予知することは可能である。しかし、地震や津波に至っては、「正確」なことは予知できない。調査や研究から、その周期性、危険性、回避可能性などは推測できるが、誰もが、それを正確に受け止めることはできない。
それに比して、飯沼勇義や広瀬隆のような人の「警鐘」の鳴らし方は、半端じゃない。ある意味、「取りつかれた」かのような、なかば「狂人」とさえ思われてしまうような「直感」がなければ、あれほどの「警鐘」を叩くことはできない。
「想定外は二度と起こしてはいけないということです。東日本大震災を受けて、最大限、利用できるあらゆるデータを使って計算しないといけない」p085「想定外を想定せよ 浮かび上がる最悪のシナリオ」
この本においては、東日本に限れば、400年前の慶長津波地震と、1300年前の貞観津波地震に焦点を合わせている。数十年に一度、数百年に一度とか、時には1000年に一度、という「周期」を想定したとしても、例えば一万年に一度とか、一億年に一度の「周期」など、人間の知覚では、捉えることはできないだろう。常に想定外は起こる可能性はあるのだ。
「天災」としての「地震」は、これは「地球」本来の自然な活動なのだから、地震がある地球の上に生きていることを常に意識していくしかない。しかし、「地災」としての「津波」は、「忘れた頃にやってくる」ようになっているのだから、忘れないようにし、またやってきたとしてもその被害を最大限に無化する対策を常に講じておかなければならない。
「人災」としての「原発」事故は、完全に防ぐことができる。原発をつくらず、原発に頼る生き方を変えればいいのだ(いまでは廃棄物の処理問題で、もはやそうとも言い切れなくなってはいるが)。原発の安全神話は延長できる。原発ゼロを実現するだけでいい。
私たちは、このNHKスペシャルに、過大な期待をしてはいけない。敢えて「MEGAQUAKE 巨大地震」とタイトルを打つならj、単にテーマを天災である「地震」に限定し、現代の研究成果を「報道」することに徹すればいいだろう。ジャーナリズムなんて、せいぜい、その程度のものではないか。
いやいや、「地震」にともなう「津波」があるだろうと、おっしゃるかもしれない。でも、それは、もはやあなたがたの手にあまる。もし、なんとか「警鐘」を鳴らすことができたかもしれないと、「自負」するなら、完全に「予言」できる「原発」を告発することが大切だ。まず、それをこのシリーズのなかでやらなければならない。
今回の3・11の大きな問題の一つは「原発」である。しかるに、この本、3・11後においての「反省本」であるにも関わらず、「原発」の文字はない。それは責任回避というより、まったくの偽善であると、私なら思う。いいカッコしようとしたって、やはり、限界があり、せいぜいがこの程度なのだ。
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