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2013/12/12

旧石器遺跡「捏造事件」 岡村 道雄 (著)

「旧石器遺跡『捏造事件』」 
岡村 道雄 (著) 2010/11  山川出版社 単行本 248ページ
Total No.3139★★★☆☆

 こちらもゆっくり時間をとって精読、というわけにはいかない。このような本が最近になってでたのだ、ということを確認しておくことにとどめる。事件の側に10年程立ち会っていた著者が当時を回顧する。

 だまされた最も大きな原因に、精神的な背景や研究姿勢の甘さがあったと思う。以下それらについて検討してみたい。なお、このような面については、有名な偽書「東日流外三郡誌」(以下「偽書」と略記する)事件に共通点が多いので、理解を助ける部分について参考にして説明したい。p159「第三章 捏造発覚から10年を経て/見破れなかった私の甘さ」

 和田家文献についてはまだ「偽書」という烙印は押されていないのではないかな。ほとんどそうだと決めつけられているが、決定的な確証に欠けている。だが、著者にしてみれば、他人の関わったことなど、簡単に「偽書」と断言してしまう。

 旧石器遺跡捏造事件のほうは、「捏造」として断定されているだろう。いずれにせよ、この二つに共通項を見つけることは、そう難しいことではない。あるいは、同じ時代背景として、空中浮遊やハルマゲドン破滅説に巻き込まれた、自称「インテリ」たちも、同じ心理構造で、「死刑」になっていったのだった。

 このような時代の逆風の中にあって、1996年にでた飯沼勇義「仙台平野の歴史津波」(宝文堂)も、さまざまな思惑をもった人々から遠巻きにされ、障らぬ神に祟りなし、とされた可能性は十分ある。私もその群衆の中の一人である。

 ただ、3・11が的中するに及んで、驚愕するばかりでなく、他の部分についての研究も、まったく無視する、という態度もできなくなった。そもそも3・11以前はこの書を知らなかったわけだが、飯沼は、決して3・11のみを予言しているわけではない。ホツマに関する姿勢や、ヒタカミに関する歴史観などは、私は飯沼史観などと名付けてしまっているが、その立証態度に対し、反証勢力にも目を配り、自らの眼や足で検証(ごっこ、でしかないが)していく心構えが重要となるだろう。

 物事を「科学的」に捉えることは、実に大切なことである。美しいものを見たいとする「芸術」的な創造や願望があることも確かなことである。そして、究極には、澄み切った「意識」を併せ持って、生きていかなければならない。

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