「宮澤賢治 魂の言葉 」 宮澤 和樹 (監修) <1>
宮澤 和樹 (監修) 2011/06 ロングセラーズ 新書 218ページ
Total No.3143★★★★★
先日、所用で花巻に行った折、賢治の実弟の孫という人が経営している「林風舎」という、喫茶店やコンサートホールを兼ねた賢治グッヅのお店に行って来た。普段は頭の中でイメージしている賢治が、いきなり現実化するので、ちょっと、気恥しい。
言葉や本、カードや小物、絵や焼き物、染物、CDや掛け軸など、賢治にまつわるさまざまなグッツが並んでいて、う~~ん、どれも欲しい。というか、全部買うのは難しいから、またチャンスがあれば、この空間を楽しみにくればいいんだな、と納得して、一冊だけ買ったのが、この本。
二階のホールのソファにゆっくりと腰かけてページを開いた。3・11後、賢治をだいぶ読んだ。手にとった100程の作品の中で、いちばん3・11後の本としては、石寒太の「宮沢賢治祈りのことば」(2011/12 実業之日本社)を繰り返し読んだ。
こちらの林風舎主人の「監修」する一冊も、それに先駆けて出されていた本であった。この二冊、感触としてはほとんど似ていて、同じ本と言ってもいいくらいの感動だった。というか、賢治を一冊の本にするのなら、こういう本にならざるを得ないのだろう。
石寒太に比すれば、こちらは賢治の肉親ということもあり、よりヴァイブレーションが肉感的である。ましてや林風舎で読むとなると、まぁ、今のところ、この一冊が、私にとってはベストだった。
この帰り道、途中で奥州市水沢で高速を降りて、雪の中の「日高神社」に参拝してきたわけだが、静寂な神域を散策しながら、私は思った。
アラハバキ--ヒタカミ---ホツマ、というトリニティが存在するとすれば、賢治--イーハトーブ--法華経(異論あり)というトリニティが存在していもいいのではないか。そして、多分、賢治のイーハトーブは、ヒタカミ--ホツマ圏に取り込まれているのではないだろうか、と。
取り込まれているとまでは言わないまでも、どこか地続きで連結していることは間違いないだろう。賢治ワールドは、個人的なイメージの世界が徐々に理解者たちに浸透し、現実化しているが、ヒタカミ・コミューン連合も、歴史の古代へと幻想化しつつ、ある種のユートピア幻想へといざなってくれる。
賢治という人は、このヒタカミ・コミューン連合があったればこそ存在したのだろうし、ヒタカミ・コミューン連合も、賢治いればこそ、その実質が検証されたようなものである。
う~~ん、コミューンも連合もいらないな。ヒタカミはヒタカミ、という言葉だけで十分だ。賢治も、すでにその姓を必要としないくらい賢治で十分だ。日本は、まるで賢治という人は、たった一人しかいないような、それくらい突出したオリジナリティだ。
賢治がもっていたような、そのような柔らかく、密かで雄大で、愛に満ち溢れた世界へと繋がっているヒタカミなら、それは私たちの郷土を表現するというだけではなく、日本全体を表わし、アジアや世界全体を表わす言葉にもなってほしいと思った。
イーハトーブは岩手という言葉に連結しているし、ヒタカミも北上に連結しているかもしれないが、日高見となれば、イメージとして自然と共存するアニミズムの世界へと、未来を切り拓く、重要なキーワードになってくれるかもしれないな、と思った。
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