「来たるべき地球人スピリット」<9>人生とはなんだ
「来たるべき地球人スピリット」--読書ブログから見たポスト3・11--
<9>人生とはなんだ
あの頃の私を支えていたのは何だろう。なかなか業績が上がらないからと言って、業務を放棄するわけにはいかない。家族を支えるのも、もう精一杯と言ったって、家族を放棄をするわけにはいかない。仲間も友達も、あるようなないような、フワフワしながら、生きていた。
ドロップアウトする奴はドロップアウトして行った。どんどん、あいつもこいつもどんどん消えていった。おいおい、どうすんだよ。ひとりひとりに声をかけたかった。慰めたかった。とめたかった。しかし、立場としては同じことだった。自分だって、おんなじことだったのだ。
私は、友達を縮小した。一段落したインターネットからは、それとなくドロップアウトした。ネットのバーチャルな世界は、夢がありそうで、どこまでも夢だった。お前らはいいな。ドロップアウトできる。オレは無理だ。日々やらなければならないことがある。やらなければならないことがあることを、よしとしなければならない。私は、やるべきことを絞りこんだ。
朝起きて、仕事して、飯食って、経済活動して、あとはちょっとだけボランティア。もう夢なんて、本当に限られた範囲にとどまっていた。子供たちの成長、子供たちの進路。ロールスロイスに乗るなんて夢の夢。1000CCのリッタカーセダンに乗るのがせいいっぱい。ヨーロッパ旅行なんて夢の夢。インドだって、行けるわけがない。
日々、焼酎でもくらって、なるしかないだろう。歯磨かないと虫歯になって、どんどん抜けてしまうよ。部分入れ歯も一個二個増えた。目も悪くなった。楽しみと言えば、安上がりの回線使ってネットサーフィンするのが関の山。50才の大台を越えて、もう人生なんて、決まってしまったようなものだった。
そんな時、仕事の客人でもあった、古い女性友人を訪問した時、彼女はタロット占いをしてあげるよ、と切り出してきた。ええ?、タロットは私のほうが専門でしょう。私のほうが占って上げたいくらいだ。星占いだって、イーチンだってできるよ。
いえいえ、私がやっているのはカモワン・タロットよ。タロットの本家本元よ。って私も実は勉強中なの。私はこれから、この腕を磨いて、これで食べていこうと思うの。だから、ちょっと実験台になってね。なんでもいいから、なにか悩みごと、言って。
あらあら、ぼくには悩み事なんて、う~~ん、あるかなぁ。でも、う~~ん、ないよ。やっぱり。あらあら、そんなこと言って。なんでもいいから、悩み事言ってみて。そうだな、なかったら、なんか作って。
そこまで言うならなぁ~~。私は考えた。なんか作ろう。そうだな、じゃぁ、こういうことにしよう。ぼくは今、ふたつの道の分かれ道にいる。ひとつはこのまま、仕事に精出し、このまま行ってしまうこと。これは簡単なんだ。今のまま、このまま、もうまっすぐ行けばいいだけだからね。
そしてもう一つの道がある。それは、もともとぼくが行こうとしていた方向だ。それには仲間がある。仲間とはもうだいぶ離れてしまった。連絡も細くなった。もうこのまま切れてしまっても構わない。っていうか、切れる方向に歩いてきている。
だけど、どうかなぁ、と思わないでもない。これでこのまま自分の人生がフェードアウトしたら、それって何? と、そう思わないでもない。仕事は順調だ。子供たちもまずまずだ。オレの子供としては、まずまずだろう。それ以上、言ったってしかたない。それほど人生を楽しくするなんてできるかな。とにかく、どっちにいけばいいか、じゃぁ、そこんとこ占ってよ。
それを聞いた彼女が、本当にカモワン・タロットの筋書きをキチンと読んでくれたかどうかは分からない。タロット占いでは私のほうが先輩だが、カモワンは知らない。面倒だから、今さらカモワンを学ぶ気にもなれないし。答えは、後者だった。仕事もいいけど、自分の体験を分かち合う方向に行ったほうがいいよ。
後日、業界団体で、温泉旅館で総会があった頃のことである。背広に古びたネクタイをぶら下げた男たちと、タバコ臭い空間に居て、私はどこにもいそうな初老の男にすぎなかった。もうこれでいいじゃん。これはこれで楽しいんだよ。この老人たちの中では、私は若手だけれども、このようなクダらん老人の一人になっていくのも、なかなかいいじゃん、それも道だろうが。
そんな時、一本の電話が、私をSNSに引っ張り出し、私の人生は、急旋回することになる。
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