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2014/04/30

「ボーイズ・ファイター」 1966 肉筆同人誌

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「ボーイズ・ファイター」
増田中学校1年A組有志 1996/03 ザラ紙肉筆同人誌 B5版 100ページ
Total No.3221

 確か午前中の4時間目、まもなくお昼の弁当の時間になる前の習字の時間だった。習字の時間で、担当は音楽と一緒のオオトモモモコ先生。みんながザワザワと、一生懸命書き方をやっている時、ひとつ班の離れたニュートンのところに、ちょっと背中を丸めて近づいていった。そして、小声で言った。「ねぇ、なんか面白いことやろうよ」。

 1966年、ちょうど新学年が始まったところだった。時代は東京オリンピックが成功し、所得倍増の掛け声の中、インフレ経済が右肩あがりで高騰し始めたころだ。6月6日にはビートルズがやってくることになっていた。

 ニュートンは、いつもクラスの人気者だった。面白いことを常に考えつくし、あまり怒ったりしない。いじられキャラではあるが、馬鹿じゃぁない。アイディアマンである。なにか思い付いてくれるはずである。

 彼は本ずきで、SFなどもよく読んでいた。こちらは新聞部でバスケット部。彼は野球部のマネージャーだ。なかなか一緒の活動のタイミングがない。9年間一緒の学校に通ったが、結局彼といっしょのクラスになったのは、この中一時代だけだった。

 バンドを作ろうよ、とか、自転車で旅をしようとか、いろいろ話題はあったがまだまだ五里霧中の中学生たち。結局私たちの計画は、雑誌を作ろう、ということだった。モデルは、その頃、小学館から出されていた中学生向き少年雑誌「ボーイズライフ」。名前もそこから連想して「ボーイズファイター」と決った。

 決まったとはいうものの、英語は習い始めたばかり。職員室に行って、サトウシゲジ先生に、この雑誌のタイトルがおかしくないかどうか、聞いてみた。ちょっと首をかしげていたが、いいんじゃないか、とお墨付きをもらうことができた。

 後日、すこし英語がわかるようになってから考えると、どうも語呂はいまいちだと思った。Boy's Fight とか、Fighting Boysとかにしたほうが、より英語らしかったかもしれない。でもまぁ、Boy's Fighter、少年たちの戦士とでもなろうか、意味がないわけじゃぁない。まぁいいか。

 形態は、わら版紙を二つ折にしてそれぞれそこに鉛筆やサインペンで、小説やら漫画やら、クイズやら、雑文やらを書いてくる。それをまとめて平綴じして一冊にするのである。表紙は毎号私が書いた。

 参加したのは、1年A組男子のうちの半分の10人ほど。私、ニュートン、シシド、フダ、ハナマッコ、カワムラくん、ミキオ、オサム、ススム、シュウヤ、あとキクマッコあたりかな。正確にはもう忘れた。違ってたら、ごめんよ、みんな。

 とにかく楽しかった。なんせ一部しかない肉筆誌なので、巡回してみんなで見る。一回見るごとに10円を徴収し、その金でボールペンを買い、クイズの懸賞賞品にあてた。なんせ好評で、毎回100ページ。一年間で都合5号まで出たのだから凄い。今でいうコミケの走りかも、なんて思うことがある。

 私は、表紙の他に、何か特集みたいなことを毎回担当したと思う。フダの時代もの風な小説「父のカタキ」とか、シシドのオバQを連想するようなコミック漫画「チビデメ」、ニュートンのたしかアメリカ西海岸を舞台とした車漫画「V8」なんてのもあったな。カワムラくんの文章もなぜか本格的だったような気がする。SFもどきあり、四コマ漫画あり、まぁ、楽しかったね。

 この記念碑的肉筆誌は、やがて悲しい結末を迎える。一年でクラス替えになり、5号で休刊したあとは、ニュートンが保管していたのだが、ある時、漫画ばかり見ていると、他の漫画本と一緒に、ちり紙交換に出されてしまったのである。

 ああ残念、と思わないわけでもない。あれば、それはそれは金庫にでも入れておきたいような貴重な資料となったであろう。しかしまぁ、ないならないで、よい記憶だけが残っていいのかもしれない。実際に手にとってみたら、ありゃぁ、この程度だったか、と恥ずかしくなるかもしれないw。

 とにかく一度この「ボーイズファイター」があったことを書いておきたかった。ニュートン亡きあとの今となっては、こんなもの作っていたことなどクラスメイトでさえ忘れているかもしれないので、語り合う仲間もいなくなってしまった。語るにしても私の勝手な想い出だけであり、もう、きちんと聞いてくれる人もいないだろう。

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