「退屈なパラダイス」 山崎 浩一
「退屈なパラダイス」
山崎 浩一 (著) 1988/12 筑摩書房 単行本: 295ページ
Total No.3247★★☆☆☆
「世紀末ブックファイル」 1986‐1996(1996/04小学館)に先立つこと8年前に出た著者の初期の代表作となるものだろう。すでに時代がかった本なので、今さらどうのこうのと言うのはフェアではない。また、読み手としての、こちらも情熱が持続しない。ただ、著者一連の作品群があるということを確認する意味では、多分、重要な一冊となるのだろう。
<カタログ文化>---清水の舞台から飛び降りる覚悟がなければ、いまや口に出せない死語だけれど、ぼくは実はこの死語に今でもヒソカにこだわりを持ち続けているのだ。ここだけの話なのだが、本当にあればいったいなんだったんだろう、と今さらしみじみと考えてみると、これはいまだにけっこう深い問題を孕んでいるように思えてならない。
70年代のカタログ文化の出現というのは、実は日本民族の精神史上、画期的な事件であり、まったく新しいラジカルな思想と世界観の出現だったのではないか!とさえ本気で思う。ただ、それがあまりに流行や風俗のレベルで急激に起こったため、ぼくたちはそれをあまり真剣に自覚も論議もしないまま今日まできてしまっただけの話なのだ、たぶん。p176「10年目の<カタログ文化>再考」
なかなか、コジャレタ文章である。ここでいうところのカタログ文化とは、当然のごとくWECを意識しているわけだし、1988年において、日本の10年目のカタログ文化、という時、1976年にでた、別冊宝島の「全都市カタログ」から始まる日本的WECエピゴーネンたちが作った文化のことを言っているのは間違いない。
しかし、ここでひとつ気になるのは、著者もまた、その作り手のなかの一群に属していたはずなのだが、どうも評論家的に、引いて達観風につぶやいてみせていることについてだ。君はほんとうは、ナニをしたかったのかね。評論家然として、高見の見物を決めることが「やりたいこと」だったのかな、と、ちょっと毒づきたくなる。
この、一方的に、こちらから仕掛けた泥仕合、もうすこしつづきそうだな。(笑)
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