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2014/05/29

「サイバービア」 電脳郊外が“あなた”を変える ジェイムス ハーキン

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「サイバービア」 電脳郊外が“あなた”を変える
ジェイムス・ハーキン (著) 2009/07 吉田 晋治 (翻訳) 日本放送出版協会 単行本: 304ページ 
Total No.3248★★★★★

 デジタル・コミュニケーションについて理解しようと人々が取り組んできたあらゆることについてわたしがはじめて疑問を持ったのは、セカンドライフでセックスをしているときだった。2006年10月11日のことで、セカンドライフにハマっていたのには理由があった。p004「序文」

 いきなりセカンドライフか。それもしかたないこの本は2008年に書かれた本で、当時は、日本でもまだこのヴァーチャル・ゲームは人気を誇っていた。出版史でみるかぎり2007年がピークだが、その年末に「セカンドライフ・マガジン」が創刊されて、松岡正剛が提灯記事を書いていた。

 翌年8月にその3号がでてそれっきり、見事に三号雑誌で休刊となり、これを象徴として日本におけるバーチャル・ゲーム「セカンド・ライフ」の凋落は決定的になったようだ。いまじゃぁ、お笑い草にしているハッカーたちも多い。

 ネット上のヴァーチャル空間でセックスするという発想にはおおいに笑った。通常の人間なら、そのへんはピンピンジメジメとなるところなのだが、セカンドライフでは、アバターの股間に、部品として購入したペニスを「装着」して、コトを始めるのである。なんとも、摩訶不思議な世界ではあった。

 この本を読んでみようと思ったのは「スペクテイター」29号のWEC特集<前篇>に紹介があったからだった。

 ●「サイバービア」も参考になると思う。ジェイムズ・ハーキングというウェブジャーナリストが1章をさいて「WEC」のことを振り返っている。ソーシャルメディアの中の位置づけとして書いているね。「スペクテイター」29号p035「ホール・ホール・カタログ伝説をめぐって」

 紹介文にたがわず、なかなか面白い一冊だった。一回読んだだけでは勿体ない。いずれ再読して、読み漏らしたところをチェックする必要がありそうだ。サイバービアとは、サイバースペース(cyberspace)+郊外(suburbia)から作られた造語。電脳郊外。

 1993年1月、ブランドの古くからの仲間で「ホール・アース・カタログ」の編集者の一人でもあったケヴィン・ケリーがサンフランシスコで「ワイヤード」誌という新しい雑誌を創刊する。「ワイヤード」誌は、ニューエコノミーというアイデアのすべての面における先駆者として重要な役割を果たすことになった。p105ジェームズ・ハーキン「ネットワーク効果」

 スティーブ・ジョブズが亡くなったあと、「WIRED×STEVE JOBS」 『WIRED』 保存版特別号(2013/10 コンデナスト・ジャパン)がでた。「『WIRED』はいかにスティーブ・ジョブズを伝えたか?」というコピーがカッコイイ。でも、どうして「ジョブズ/アップル傑作記事アーカイヴ」が「1995-2012」となっているんだろうと、ちょっと不思議だった。

 2012は、ジョブズがなくなったタイミングということは分かったが、1995とはどういうことかと思っていた。今回、それはこの「WIRED」誌が創刊されたタイミングに関係していたのだ、とようやくわかった。

 ケヴィン・ケリーは「スペクテイター」誌30号でインタビューを受けている。WECを語る上では重要人物である。

 ケヴィン・ケリーは1995年の著書「『複雑系『』を超えて システムを永久進化させる9つの法則」(1999アスキー)の中で、ネットワーク化された世界で経営を続けるとしたら、コントロールするのをやめ、人々が自分たちで組織を作っていくのに任せるしかない、と示唆している。p106同上

 ケヴィン・ケリーはWECの考え方を一歩前にすすめているようだ。

 ケヴィン・ケリーによれば、2015年までにわたしたちの知る現在のインターネットはなくなり、代わりに「地球規模の人工的な意識」が出現するという。このように主張する人は少なくない。p243「多層性」

 文脈から考えて、これは2008年ころのケヴィン・ケリーの述懐だと思うが、「地球規模の人工的な意識」と名づけているところは興味ぶかい。翻訳前の単語はどのような英文だったのだろう。「地球規模」であることは間違いないが、そこにどんな英語を割り当てただろう。グローバルサイズ?だろうか。「人工的な意識」の「意識」には、おっと、驚くが、さて、コンシャスネスを使っているのだろうか。でもここでの「人工的」ってフレーズは好きじゃないな。もとの単語を知りたい。

 いずれにせよ、ここでさらに注目すべきは、その「グローバル・コンシャスネス」(と勝手に言っておこう)が出現すると「預言」していることである。2015年とは、もう来年のことである。うん、たしかに、グッドイアーの深化を遂げ続けるIT技術の世界である。そろそろ、来ても、いいんじゃないかい。

 この本には、サイバネティクスのノーバート・ウィナーや、メディア論のマイケル・マクルーハンが多く語られている。そのあたりも別な側面から底上げしながら、もっと多層的に、もっとアクティブにこの本を再読する日がくるのではないか、と思う。

つづく・・・かも

 
 

 

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