「Get back、SUB!」 あるリトル・マガジンの魂 北沢 夏音<3>
「Get back、SUB!」 あるリトル・マガジンの魂 <3>
北沢 夏音 (著) 2011/10本の雑誌社 単行本(ソフトカバー): 539ページ
★★☆☆☆
後半は限りなく飛ばし読みになってしまったが、もうこの本は、そっと静かに閉じて忘れてしまうべきであろう。これからこの本を読む人も多いに違いない。小説や映画にはネタばれを嫌う傾向がある。この本の魅力も、途中までは、そのネタ探しに付き合わされるのであり、途中まで、そのワクワク感はつづく。
しかし、ある一点からは、私のようなパラパラ読者は、どうもついていけなくなる。途中から、ずっと、加藤和彦のことが頭に浮かんできた。
すぐに整備屋に持って行って、僕は眺めたり、掃除したり、ミカが運転したりしていたよ。そのロールスは、5~6年乗ったんじゃないかな。それから違うロールスからベントレーを行き来して、十数台は乗っているんじゃないかな。昔から好きなんだよね、ロールスやベントレーは。今だに乗っているけどね。 「加藤和彦ラスト・メッセージ」p125
ミニは、昔のミニはそのままは乗れないんで、やっぱり修理とか大変だからさ。で、今のBMミニじゃなくてね。昔のローバーのときのミニのほとんど最終型を買って、部品だけを全部古いミニに改造してあるっていう(笑)。「加藤和彦ラスト・メッセージ」p126
「もうミニを持っているなら、セカンドカーはロールスロイスがいいだろう」ってコピーがあるけれど、ビートルズのカッコよさに似せて、自分の人生を作ってみたところで、つまり、仏つくって魂入れず、ってことになる。
加藤和彦も、小島素治も、すでに亡くなった方であり、それぞれの人生を送られた方である。それぞれの尊厳もあり、とやかく今さら言うことは、はばかれる。しかし、どうも、このおふた方の、それぞれのファンには怒られるかもしれないが、この二人には共通項があると思う。
18歳の私は、この「SUB」4号をリアルタイムで書店で見つけて購入している。そして、あとから2号と3号を書店に注文して取り寄せて貰っている。よほど気にいったと思われる。しかし、当時の私の18歳の直感は、ズバリ当たっていたと思う。
「どこか魂、ど根性が入ってないんじゃないか」
<これ以降、ネタばれあり注意>
書かないでおこうと思ったが、やっぱり書いておこう。たぶん、私はもうこの本を読まない。このブログは私の個人的な読書ブログである。いずれブログを自分で再読した時のために、メモだけ残しておく。
「その容疑というのは何だったんですか?」
「万引きや」 p422小島談
これ以上、仔細は書かなくてもいいだろう。はぁ、そういうことだったのか。たまたま魔がさしたんかな。それにしても懲役何年というのも長すぎるなぁ。
「万引きなんか年中やってたよ。珍しくも何ともない」
朗文堂社長・片塩二朗氏はニヤッと笑うと新しい煙草に火をつけた。p430
はぁ・・・。
「(略)夢がないのに夢を売る、それが嫌なんだ。小島はそれをやっちゃった。自分で墓穴を掘ったな、ていうね。それで借金まみれになって、友人失って、誰とも付き合わなくなって、最後は万引きで捕まった---哀れですよね。」p435片塩談
ふ~~。
あとがきのあとに、草森紳一の長い「跋」もあるが、そこそこにこの本を閉じることにした。
今、多くを語る気はない。ただ、言えることは、マガジンも、ジャーナリズムも、一生を賭けるような価値あるものではない、ということ。コンテナも、コンテンツも、コンシャスに道を開かなければ、意味はない。コンシャスあっての、コンテンツであり、コンテナだ。三位一体の、どれが欠けても、バランスが悪い、ということになる。
「たしかに一種のセレブ志向はお持ちで、ビッグネーム好きだったようです」
「平たく言えばミーハーだね。ミーハーが似合っていると思う、小島さんは」p277油井昌由樹談
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