「エグザイルス」放浪者たち すべての旅は自分へとつながっている ロバート・ハリス

「エグザイルス」
ロバート・ハリス (著) 1997/06 講談社 単行本(ソフトカバー) 358ページ
Total No.3281★☆☆☆☆
60年代風月堂の香りを辿って、電脳・風月堂の参考資料リストの中に、風月堂に言及している一冊として見つけた一冊。これまで当ブログが読んだこのリストの中では一番最近のものに類する。
1971年。巷には反体制論が飛び交い、初代仮面ライダーがショッカーとの対決を始め、「男おいどん」があのサルマタケの生えるアパートに引っ越してきた。六本木はベトナム帰りのGI達であふれ、ジャズ喫茶「チェック」では、和製ビート族がチャーリー・パーカーを聞きながら「ハイミナール」でハイジャンプしていた。そして新宿の「風月堂」は相変わらず自称詩人と貧乏外人とフーテンとドラッグ・ディラー達で賑わっていた。p170「内なる砂漠」
当ブログにおいては、このような表現は三文安い。1997年の段階で1971年の状況を書こうと言う時、たしかに、他の文献をたよりにしながら、この程度の「水増し」はできるだろうが、このような表現をすることに、著者において、どれほどの内的な要求と、必然性があるだろうか。
フラストレーションが溜まれば溜まるほど、ドラッグへと走っていった。ベトナム帰りのGI達から買ったブッダ・スティック、LSD、「風月堂」で手に入れたハイミナール、スピード。現実がダメなら現実を変えちゃおう・・・・。僕は暇を見つけてはLSDでインスタント・ビジョンに浸り、ビジョンが薄れてくると眠るためにダウナーを摂り、次の日はスピードを摂って授業や仕事を乗り切るということを繰り返していた。そして、やればやるほど僕は落ち込んでいった。p177 同上
このような文脈で引用される風月堂も迷惑だろうが、多くの読者にも誤解を招くだろう。いずれにせよ、紋切り型、ステロタイプを多用した、実に薄っぺらい表現である。358頁全体が、ジャンキー話でまとめられたこの一冊は、読む人によって、さまざまな評価が与えられるだろうが、当ブログにおいては、最低限レベルにとどまる。
ある時、僕の学生時代のヒーローのひとり、アメリカのビート詩人ゲイリー・スナイダーも、彼の友人であり、日本のヒッピームーブメントの元祖のような詩人、ナナオ・サカキとともにやって来て、特別なリーディング・イベントをやってくれた。彼らは二日間、「エグザイル」の画廊に泊まり、僕の仲間達と酒盛りをしてくれたが、その時僕は、とうとう自分の描いていた文学的「神話」の中に自分もいるんだということを実感し、嬉しかった。p307「友はエグザイルの中にいた」
この文章を読んで、どれだけ多くの読者が感動することだろう。読めば読むほど興ざめするのではないだろうか。実に皮相な表現だ。昔から夢見ていたマックのパソコンをようやく買う事ができた、とか、小さいころから夢見ていた初めての海外旅行にいくことができた、だの、まぁ、実に幼児性の強い表現である。おもちゃを与えられてはしゃいでいる幼児にすぎない。
この本は小説仕立てになっているので、ネタばらしはしないでおこう。すくなくともこの本は、1997年という問題ありの年代に、講談社という、利益優先の出版社からでているのであり、本の成り立ちとしては、はっきり言って、胡散臭い。
1948年生まれのジャンキー路線を走る著者には、他にも類書があるようだが、まぁ、今回のように、他人のリストに混ざっていなければ、当ブログで読むようなことは通常ないだろう。カッコつけてんだか、恥かいてんだか、わからないような、一冊。
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