「幻覚の共和国」 金坂健二
「幻覚の共和国」
金坂健二 1971/02 晶文社 単行本(ハードカバー) 463ページ
Total No.3280★★★★☆
60年代風月堂の香りを辿って、電脳・風月堂の参考資料リストの中に、風月堂に言及しているとされる本から、これまで当ブログが読んだこのリストを作ってきた。
金坂健二という名前はビッグネームだった。すくなくとも1972年に高校を卒業して、仲間たちとコミューンを形成し、雑誌を作ろうという段階では、大きすぎる名前であった。当時、この本は、リアルタイムで私たちの空間に存在していた。飛びぬけて大きな存在感のある名前であっただろう。
しかし、その本の内容は、どれほど私たちのムーブメントに直接的に絡みこんできただろうか。この方は、どのような人生を送ったのか知らないが1934年に生まれ、1999年には亡くなっているらしい。その残された資料は、pdfのような形で見ることができるようだ。
何はともあれ、この本の中で風月堂に言及している部分を抜き書きする。
アメリカでヒッピー族の発生が話題になる頃から、フーテン族が新宿駅”グリーンハウス”や喫茶店の風月堂にあふれた。67年の夏がそうした集合のピークであり、そこには、表現されるにはいたらなかったけれども、文化的な造反へのひとつの気運は漂っていた。
68年秋のいわゆる「10・21」騒乱にもフーテンがひと役買っていたが、これがそれ以後急速に退潮した。風俗化にはもちろん68年のサイケ・スナックの発生と同時に本格化し、ロックの前身としてゴーゴー・ダンスが新宿族の言語に代わるように見えたが、それは同時に資本の流通過程にアングラが同調したということでもあった。
だがじつは、新宿をほんとうにわれわれのコミュニティにするためには、なにはさておき、われわれ自身のメディアを確立する必要があったのだ。p190「アングラの発生史略」
ある種、おざなりな表現であるが、この本に書かれているということはそれなりに意味はある。
さて、当ブログにおいては60年代的な新宿風月堂・関連リストを作り始めて、かなりな駆け足だがすでに15~6冊に目に通してみた。最初曖昧模糊としていた風月堂風景だったが、複数の記述を擦り合わせてみると、おのずとステレオ効果で、その姿が静かに浮上して来た。
あと数冊読みこむ予定だ。これ以上さらに読み込みを続けることも可能だが、そろそろこの辺で、当ブログなりの本来の姿にもどっていく必要があるだろう。そうした場合、今後、せっかくの風月堂追っかけの、その痕跡をみようとした場合、どこかに集約しておく必要を感じる。
これらのリストの中から、敢えて、三冊を選ぶとするなら、次のようになるだろう。
「乞食学入門(ビートロジー)」(北田玲一郎 1968/06 ノーベル書房)は、いわゆる新宿風月堂に出現したフーテン・ヒッピーの出自をより明確に表現している。
「アイ・アム・ヒッピー」山田塊也 1990/5 第三書館は、冷笑的に名づけられたレッテルを逆手に取って、そのカウンターカルチャー性を明確に歌い上げる。
そしてこの「幻覚の共和国」 (金坂健二 1971/02 晶文社)は、日本の60年代的現況をも紹介しつつ、その震源地たるアメリカでは一体何が起きていたのかを網羅する。
いずれ、このテーマを深追いするなら、この三冊を精読するところから再開するのがいいだろう。
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