「異郷の景色」 西江 雅之

「異郷の景色」
西江 雅之 (著) 1979/01 晶文社 単行本(ハードカバー) 223ページ
Total No.3270★★★☆☆
この本も、「電脳・風月堂」の中の、「Large Beer」と「Can Beer」という参考資料リストの中から、60年代的、新宿・風月堂の消息を尋ねて作っておいた、「電脳・風月堂 関連リスト」の中の一冊。
12の物語が収められており、世界各地の物語に混じって、新宿、吉祥寺、神保町、豊島園など、国内の物語が四編ある。その中でも「新宿風月堂」に関連ありそうなのは「新宿 季節はずれの街」であろう。
この20頁足らずの物語のなかには、新宿のコーヒー店「Y」、「V」、「F」がでてくるが、おそらく「新宿風月堂」は「F」コーヒー店が該当するのだろう。雰囲気から考えて、三つとも同じコーヒー店と考えてもよさそうだし、どれも風月堂だ、と読んでもいいようにも思うが、やはり三つの違う店なのだろう。
ビートが出ようが、ヒッピーが出ようが、フーテンが出ようが、本物はそれらしい恰好はしていないものである。そう言った意味では、エメちゃんはやはり本物の一種なのだという気がする。学生の時は学生らしい恰好をし奥さんになれば奥さんらしい恰好になっている。いつも真面目である。それでいて、どこかドカーッと抜け落ちている。いつも真面目である。いつ出会っても、考え方も話題も一向に変わらない。今流に言えば、先天性フーテン症の患者なのだ。p17「新宿 季節はずれの街」
これはコーヒー店「V」の風景だった。
今、わたしが座っている”F”コーヒー店は、西洋の古典音楽のレコード収集では有名な店だということだ。常連の多くは、少なくとも数年前までは、古典音楽の愛好者ということのなっていた。じっと音楽に聴き入る者や、読書に耽る者に混って、楽譜を手にタクトを振るようなことをしていた青年もその頃は珍しくなかったように記憶している。p21 同上
この描写はおそらく新宿風月堂だろう。
店の奥の階段を上り切った所には、分厚い丸型の石盤を乗せたような大きなテーブルが一つあり、そのそばには茶色の布でカバーをした椅子が並べてある。p22 同上
この「F」コーヒー店に現れるケイ子という名の若い女性がこの物語の主人公である。
普段は一切彼女のことを思い出すことはないのだが、こうして、”F”コーヒー店の二階に来て、あの日路上え出会った彼女の姿を思い浮かべていると、彼女があの当時、本当のところ一体何を目的としてアメリカ人の男を探し出しては自分の部屋に連れ込むということに専念していたのだろうかと考えてしまう。p26 同上
この小説風の物語は1972/07に雑誌「面白半分」に掲載された文章である。新宿風月堂の閉店は1973年だというから、その最後のころの風景であろうか。
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