「騒乱の青春」 ティーチ・イン 内田栄一・編著

「騒乱の青春」 ティーチ・イン
内田栄一・編著 1969/01 三一書房 新書: 242ページ
Total No.3268★★★☆☆
この本も、「電脳・風月堂」の中の、「Large Beer」と「Can Beer」という参考資料リストの中から、60年代的、新宿・風月堂の消息を尋ねて作っておいた、「電脳・風月堂 関連リスト」の中の一冊。
この本、内田栄一・編著となっているし、有名どころの名前が何人もでているが、かならずしもそういう本ではない。当時の新宿にあったサンヨー電化センターの40~50人がようやく入るかというスタジオからの、ラジオ放送である。集まってくるのは、司会と数人の有名人、あとは地域の若者たちである。ティーチインという形で、参加者が自由に発言しあい、それを放送すると言うスタイルである。
新宿における青春や、当時の学生運動、あるいは学外における活動、そして積極的な意味での「青春憲法草案」などといった取り組みをしており、この本も、当然のことながら、新宿風月堂だけをレポートしているわけではない。風月堂を、獏として暗示しているところが、最初の50頁あたりまでで、この本ではイントロとして使われているようでもある。
女 新宿って街はマスコミがつくったんだと思います。去年の夏(1967)フーテンとか、どうのこうのって騒いだでしょ。その前にもフーテン族みたいなのはいたと思うんです。マスコミが騒がなければ一般の人もあまりわかんなかった。騒ぐのであたしもぼくもっていろいろ出てきたと思うんです。p22「新宿の青春」
これは1968/10/18収録の中での発言。いろいろあってしかるべき発言だが、まぁ、こういう事が盛んにディスカッションされる時代になっていた、ということであろう。
内田 フーテンといわれる人が去年出てきた。今年(1968)はヒッピーと称する人もいるらしいけれども、とにかくそういうことで新宿に定着する。人間の中の定着の考え方があると、これは本当の意味で堕落しちゃうわけよね。だから本当の意味で頽廃になっちゃうわけ。いま新宿に流れもんがいないってのが、おれ、不満なんだなぁ。p28 同上
内田栄一という人に、わが雑誌「時空間」にも寄稿していただいたと記憶がある。1972年頃。劇団を主宰していて、たしか私たちの仲間の何人かは彼の門を叩いているはず。
女店員 ああいうのは結局、サイケっていうのは幻覚の状態の絵だから、すごくもう、普通の人間だったら描けないと思うんですよね。だからLSDとか、あのマリファナですか、ああいうふうなの、やっぱりある程度使用してみなくちゃ、ちょっとね、書けないだろうと思います。あたし達がただ見たって、まぁ、完全に理解できないだろうと思うんです。こういうサイケなポスターは目新しいから売れるんじゃないですか。p38
これはポスター店の女性店員さんの弁。68年の段階で、このような単語が飛び出すこと自体、当世風であったのだろう。
男1 いやに疲れたような顔をして、風月(新宿風月堂)にきてね。
女2 風月にいる人はそうかもしれないけれど、わたしなんかどうですか。疲れてますか?
男1 ぼくがいうのは風月にいる人のこと。
女2 ごく一部の若い人ってこと?
男1 風月以外のこと、知りません。
女2 風月でもどこでもいいわ、24ぐらいになったら考えかたがきまっちゃう。いやよね。p40「新宿の若者たち」
すでにこの時点で、一般客をよそに、新宿風月堂、という単語は、お互いが何を意味しているのかが解ってしまうようなアイコンと化しているようである。
女3 わたし、全然フーテンなんてよく知らない。風月堂っていうのも、外から見たことあるけど中に入ったことないしね。それからフーテンってのは流行しはじめたのは去年の夏でしょ、わたしそのころテレビのバイトしてたの。フーテンの人たちと接触なかったけれど、フーテンを知っている人たちにつれられて、フーテンにあいに行ったり、話したりしたわけよね。
そのとき、あれ、自分でも不思議なんだけど、仲間意識みたいなのがあるのね。それで、週刊誌やなんかで悪くいってても、自分じゃ自分なりにフーテンをすごく理解しているような気持になていて、自分はフーテンを理解しているんだと思った。仲間意識みたいなものがすごくあったの。
でも、今年の夏になってまたフーテンっていうのが出てきたじゃない。わたしから見れば、きたならしくて、なんか奇声をを発したりやっているのを見ると、去年は理解していたつもりが、今年はもう、別個の世界のものと思って、もう見ちゃうのね。
だからフーテン見ると、なにやっているんだろう、きたないなぁと思うし、このあいだは歌舞伎町のところでシンナー遊びっていうの? ビニールの袋に入れて、こう、やってんのよ。で、フラフラしてるのよ、あんなことしてなにがいいんだろうと思うわけよね。すごく非生産的な生活しているわけじゃない。あなたたち風月堂なんかにも行っているんだけど、フーテンを本当はどう見てるの? p44 同上
誰がどこで、と特定した話ではなく、渾然とした話ではあるが、この時代、LSDからマリファナ、シンナーまで、まぜこぜに話が進んでいたようである。この本では、まだ、どうも喰いつきが弱い気がする。
「電脳・風月堂」の中の参考資料リスト「Large Beer」と「Can Beer」の中の、もうちょっと前の、「乞食学(ビートロジー)入門」(北田玲一郎/ノーベル書房/1968.06)とか、「新宿考現学」(深作光貞/角川書店/1968.09)を参照する必要がでてきた。
あるいは、「アサヒグラフ」(1967.5.5号 朝日新聞社「部族」の姿を初めて掲載)、「キネマ旬報」増刊「サイケの世界」(1968.07/キネマ旬報社)、 「キネマ旬報』別冊「アングラ’68 ショック篇」(1968.08/キネマ旬報社) も参考にすべきなのだろう。ただし、雑誌類は現在の段階で、見れるのだろうか。探してみよう。
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