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2014/07/19

「契約 鈴木いづみSF全集」 鈴木いづみ 大森望 他

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「契約 鈴木いづみSF全集」
鈴木いづみ 大森望 他  2014/06 文遊社 単行本 656ページ
Total No.3298★★★★☆

1)60年代的フリージャズのアルトサックス吹き、阿部薫の妻が鈴木いづみだという。その出会いと結婚生活、その終焉については、稲葉真弓「エンドレス・ワルツ」 (1992/03 河出書房新社)で、稲葉の小説だが、一人称として、鈴木いづみの口を借りて語られている。

2)その鈴木いづみは、寺山修司の映画「書を捨てよ街にでよう」に出演しているという。はぁ、そうであったのか、何処かで見たとは思ったが、はて、予告編を見ても、どの女性かは確とは断定できない。

3)そうすると、高校生時代に見たこの映画で、私は鈴木いづみに、ずっと前に出会ったいたことになる。いやひょっとすると、1972年に劇団天井桟敷の青森公演の時に、楽屋に忍び込んで、一晩彼らとともに行動していたとき、あの場に鈴木いづみもいたかもしれないのだ。

4)そして、さらに胸騒ぎがして、例の「ニッポン若者紳士録」(1973/01 ブロンズ社)を覗いてみると、やっぱりたしかに「小説家」としての鈴木いづみが登場していた。良く見ると、1949年生まれの彼女、5歳年上だが、学年で4つ上の、同時代人であったとあらためて痛感した。少なくともこの本の中では、彼女と私は同じ地平に立っていたことになる。

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5)今回は、伝説のアルトサックス吹き阿部薫の妻として知った彼女だったが、それよりずっと前に、彼女とは出会っていたことになる。彼らの結婚は1974年という。

6)さて、小説家としての鈴木いづみを検索すると、当地ローカルな図書館においても、以外にも二桁の本がリストアップされる。さてさて、小説苦手な当ブログとしては、簡単に素通りしたいな、と思い、一番簡単そうな、しかもごく最近出版されたこの一冊を取り寄せたのだったが、ああ、なんと、これが656ページの大冊であったのである。

7)しかたがないので(笑)、覚悟を決めて、最初からとっかかってみた。そもそも不思議なのは、今まで持っていた彼女のイメージと「SF」という奴がどうも、いまいちフィットしないこと。中学生時代からSFは読んでいるとしても、そのベースは、星新一のショートショートだったりするから、その類として読めば、この鈴木いづみSF全集も読めないことはない。でもやっぱり、直線的には彼女のイメージとSF?と、 首をかしげざるを得なかった。

8)しかもタイトルとなっている「契約」も、なんだかベタなタイトルではないか。そのタイトルの、代表作と目される作品もあるようだから、おいおい読み込んでいこう。

9)阿部と鈴木の生活をドキュメンタリータッチで描いた「エンドレス・ワルツ」 (1992/03 河出書房新社)で稲葉真弓は、当時16歳だった二人の間に残された娘に名誉棄損で訴訟を起こされたという。その裁判の行方もどうなったのか、まだ知らないが、稲葉真弓はその後、国から勲章をもらうような作家に成長しているようだ。

10)阿部薫は1978年に29歳で亡くなり、鈴木いづみは1986年に36歳で亡くなっているという。二人とも自死である、というとことが、胸に刺さる。

11)この「全集」はとりあえず、彼女の小説が全部収まっていることになっている。阿部との出会いの前にすでに小説を書いているのであり、二人の生活も3年程続いているはずであり、なお阿部が亡くなった後、彼女は8年ほど小説を書き続けていたことになる。その三つの時代の違いを、うまく読み分けることができるだろうか。

つづく

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コメント

鈴木いづみ。この人についてはまったくのノーマークだった。ひょっとすると、一次、二次のつながりのあった人である。別な流れにおいて知った彼女の存在だっただけに、詳細をよく調べなかったが、また別なチャンスが巡ってくれば、ゆっくりお付き合いしたい存在である。

投稿: 把不住 | 2018/09/03 15:57

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