「兄のトランク」 宮沢清六 <3>
「兄のトランク」 <3>
宮沢
清六 1987/09 筑摩書房 単行本: 241p
★★★★★
石川裕人(ニュートン)蔵書市の第16弾。ニュートン蔵書に賢治関連書籍は多く、今回も何種類か入手してきたが、例えば、文庫本の賢治全集10冊組みなんてのも、実は欲しかった。今でも、あれ欲しかったな、と思う。1冊100円だから、1000円、と思ったが、その10冊組の第3集がすでに誰かが購入済みだった。
う~ん、10冊のうちの一冊だけ買って、あとは9冊残されると、ちょっとその全集の価値は落ちるかも。他の人も欲しそうにしていたが、そのことがネックになって、最後まで売れ残っていた。でも、今考えてみれば、ほしかったな。
「兄のトランク」。文庫の全集に比したら、この一冊は迷わずゲット。賢治の「全集」は、おそらく「全集」としては成立していないだろう。ひとつの作品がいくつも書きなおされていたり、およそ作品の体をなしていなかったり、日記あり、手帳あり、となれば、あとは編纂者の思惟が色濃く残るものであり、全集も、いくつも買い並べて比較しながら、その差異を味わう、ということになるだろう。
「兄のトランク」は賢治関連の中でも出色の一冊である。有名になった賢治を自ら解読したような本がそれぞれたくさんあるが、この本は、実弟が、賢治の「遺言」によって、戦時下においても守り抜いて、とにかく出版までこぎつける話であり、「作られた」お話ではない。
前回この本を図書館から借りだして読んだのは2011/11/08。3・11後、あわてて賢治おっかけを始めた私にとっても、再読リストのベスト3に入るような、圧倒的な読後感だった。別に購入しようとは思っていなかったが、こうしてニュートン蔵書からさらに私の蔵書となったこの一冊を眺めていると、そのエネルギーは、強烈だ。
解説者や研究者の手によるものではないがゆえに、なお、つよい説得力を持っている。ニュートンは、この本を1988/01/21に初版第四刷で購入している。いつも新刊本を待ってましたとばかりすぐ購入している彼だが、この本には多少のタイムラグがあった。
この本の売られ方も、おだやかに、静かに発信されたのかもしれない。ニュートンがこの本を遺しておいてくれらおかげてで、こうして腰巻も見ることができるわけだが、この腰巻を見ているだけで、私なんぞは、ジンワリと来てしまう。
今後、私は、賢治を思い、清六を思い、ニュートンを思い、そして清六の孫にあたる人のお店「林風舎」を思いながら、私の中にも静かに芽生えてきた賢治の芽を、少しづつ温めて、水をやりつつづけていきたい。
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