「蝶を放つ」 長澤 靖浩 <5>
「蝶を放つ」 <5>
長澤
靖浩(著) 2014/08 鶴書院単行本: 143p
★★★★★
一気に書き終わるつもりでいたのだが、途中で不思議な流れが合流し、こちらの最終的な書込みが遅れてしまった。
この本には表題の「蝶を放つ」のほかに、「仙田くん」という短編小説が収められている。30頁程のものだから小品と言っていいだろう。この作品についても独立したメモを残しておくべきなのだろうが、一冊ペアになっている限り、この本は、この二編があっての一冊、と理解していいのだろう。
前著「魂の螺旋ダンス」(2004/10 第三書館)が印象深かった私としては、今回の作品は、拍子抜けするほどシンプルで読みやすかった。意図的にそう書いたのであろうし、キャパシティの両翼を広げたという意味では、まさに二つの羽を広げて飛び立とうとする著者の様々な思いが察せられて、私の心も宙に舞う。
この一冊を読みながら、私は、青虫が蛹になって眠りに入り、やがて背中が割れて、蝶となって空高く飛び立つ体験をした。
空高く、そう満天の星空、そしてアンドロメダ銀河まで飛んだのだ。そのことについては別途記してある。
本著の中にも、蝶たちが一斉に羽化して飛び立つシーンがあるが、それは、たった一人の心情として起こることではあるまい。一匹一匹の蝶たちは、それぞれが一生懸命であるだけなのだが、それは季節や条件がそろえば、おなじ仲間の蝶たちも羽化して飛び立つということである。
つまり、著者が自らを青虫に喩え、蛹に喩え、そして蝶となって飛び立つことに喩えるなら、それに呼応して、飛び立つ蝶たちも多くいるに違いないのだ。
そういう意味で言うなら、まさに私もまた見事に、この小説に呼応したといえる。
山椒の木に産みつけられた卵は、青虫となり、蛹となり、アゲハ蝶となって、アンドロメダ銀河に飛び立った。
蝶を放つ。
この小説、これでいいのだと思う。
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コメント
アビさん
勿論です。もっと気の利いた事を書ければよかったのですが、私の場合、自分に作品を引き寄せ過ぎるようです。
これからも、気になる作品を書いてください。期待しています。
投稿: Bhavesh | 2014/09/28 06:02
前著「魂の螺旋ダンス」が印象深かった私としては・・・以降を転載してもいいですか。
投稿: あび | 2014/09/26 02:27