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2014/10/09

「For the Children 子どもたちのために」 ゲーリー・スナイダー<7>

<6>からつづく

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「For the Children 子どもたちのために」<7>
ゲーリー・スナイダー (著),  山里 勝己 (編集, 翻訳), 高野 建三 (写真) 2013/04 新泉社 単行本: 143p

 最初の10年は、壁を立ち上げ、屋根を葺き、浴場や小さい納屋や薪小屋を建てるだけで手一杯であった。p16「キットキットディジー ---網の中の結び目」『惑星の未来を想像する者たちへ』山と渓谷社2000/10)より 

 スナイダーのキットキットディジーにして、この遅々たる進み具合だったのである。最初の10年、というところに痛く共感する。山の椒もまた10年の歩みにして、途中から参加した私の中途半端な歩みもわずか4年ながら、ほとんど何もできずにいるのが、現状である。

 繁茂した草や枝や蔦を切り払い、道を顕わにし、すでにあるコンテナハウス周辺を整備する。壁を切り取り、窓をつけ、煙突穴の位置を決めては、薪ストーブの準備をする。もう、それだけで、早い冬の足あとがそこまで聞こえてきている。

 明かりは石油ランプを使った。暖をとるには薪を使い、料理は薪とプロパンガスを使用した。薪を止揚するレンジ、薪を燃やすサウナ用ストーブ、ペダル付きミシン、そして1960年代に製造されたプロパンを使用するサーヴェル冷蔵庫などを求めて私たちは走り回った。p16同上

 一般の電灯線が配線されている山の椒では、投光用のハロゲンランプや蛍光灯の使用も可能だが、むしろ、小さな太陽光発電LEDライトが役だってくれている。薪ストーブもコンテナハウスに組み込む予定であるし、風呂もドラム缶などを利用することも考えてはいるが、今は近くの温泉が便利である。

 ここで足踏みミシンを使うことはないだろうが、必要となればいつでも持ち込むことは可能だ。調理には、小さな薪ストーブやカセットボンベを利用。冷蔵庫も大型のものがすでに設置されているが、本当に必要かどうか、見極め中。

 私は書斎を作り、手提げランプの明かりで詩とエッセイを書いた。また、国内で講演したり教えたりするために定期的に外に出ていった。自分の家は人目につかないベースキャンプで、そこから私は大学の金庫を襲撃しているのだと考えたりした。p17同上

 山の椒のコンテナハウスから眺めのいい場所に大きな窓をつくり、そこにリクライニングチェアを置いて、タブレットでブログでも書こう。私は街に仕事を持っているが、山の椒でも仕事ができる。それにはインターネットの高速回線が必要となる。週末にここで定期的にここで過ごすことは、なにものにも代えがたい冒険心に満ちている。

 私たちは、まわりに生えているあの丈の低い芳香性の植物にちなんで、我が家をキットキットディジーと名付けた。p17同上

 すでに10年の経験をもつ前住人は、この切り拓いたしぜん菜園に山椒の苗を植えようともってきたという。ところが、来てみれば、この森は山椒の木がまわりに生えていたという。その丈の低い芳香性の植物にちなんで、この森はしぜん菜園「山の椒」と名付けられた。

 この部分に再掲されたスナイダーの文章は「惑星の未来を想像する者たちへ」(2000/10 山と溪谷社)に発表されているものである。

 この部分に限らずこの「For the Children 子どもたちのために」には、一部の写真や関係者の寄せ書きを除けば、他の本や詩集からの再掲部分が多い。いちいちそちらをあたることも良いことではあるが、ゲーリー・スナイダーという現代詩人の全貌をとにかく知りたいと思えば、この一冊はとても新鮮で役にたつ。

 この本は3・11後の日本において、日本人カメラマンが所蔵した貴重な写真を交えながら、あらたにゲーリー・スナイダーをコンパクトに編集しなおした一冊となっている。随所に日本人的理解と、日本における彼の画像が取り上げられている。

 彼と交流のあった日本人のロングヘアー達の中には内田ボブもいて、今夏、福島県双葉郡の獏原人「満月祭」で会うことができた。こうして一枚の写真に収まってみると、二次のつながりとは言え、スナイダーも、すぐそばに生きているような、とても暖かい親近感を感じる。

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撮影: 槇田 きこり 但人 2014/08/10

<8>につづく

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