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2014/12/05

「ムーミンキャラクター図鑑」  シルケ・ハッポネン 高橋 絵里香<1>

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「ムーミンキャラクター図鑑」 <1>
シルケ・ハッポネン(著), 高橋 絵里香(翻訳)  2014/10 単行本: 講談社 240ページ
Total No.3346★★★★★

 森の中を歩くときは、望まずしてクマさんに出会わないように、腰に鈴をつけて歩く。コンテナハウスの周りで作業する時も、一人でいる時などは、ここに人間がいますよ~というお知らせの意味で、ラジオを大き目なボリュームで流していることが多い。

 普段はあまり音楽もラジオも聞かないのだが、結果的に森に一人でいるとラジオ番組を長時間、耳にしていることが多い。据え置きラジオばかりではなく、ポケットに入れたスマホで、何気にラジオ・アプリから番組を聞くこともある。

 先日、ほぼ10日程まえだったか、午後の長時間番組で、ムーミンの話をしていた。ゲストは若い女性で、たしか少女時代にフィンランドに留学したという人だった。聞くともなしに聞いていた番組で、しかも作業しながらだから、とぎれとぎれにしか聞いていない。

 数日前、図書館に本を返却しに行ったら、カウンター脇の新刊コーナーに、この本があった。あのラジオ番組で話題になっていたのは、きっと、この本に違いない。

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 私の周辺で、ムーミンを知らない人はいないはずだ。あの岸田今日子の声とともに、なんとも愛くるしいムーミンをすぐに思いだす。だが、この本に書かれているように、ムーミン谷全体について詳しい人は、そうはいないだろう。

 ラジオ番組でチラチラ聞いた範囲に寄れば、フィンランドにおいては、街のあちこちにキャラクターが置かれていて、誰にも愛されているムーミン谷の住民たちだが、もともとの誕生は、アウトサイダーやマイノリティー達が集まってきた場として設定してあるという。

 なるほど、そう言われてみれば、そんな気がする。私の子供時代というと、「チロリン村とクルミの木」とか、「ひょっこりひょうたん島」、あるいは「ゲゲゲの鬼太郎」などが、このムーミン谷に近いように思うが、数少ない登場人物達の中にある、なんというキャラクターの豊富なことよ、と驚く。

 スナフキンは、ひょうたん島のダンディと、どこかつながるかもな、と思いつつ、ムーミン谷の住人達について、私はほとんど何も知らないことに愕然とした。こんなに沢山の登場人物たちがいるのか。

 ムーミンパパは、ムーミンママの夫で、ムーミントロールの父親。黒いシルクハットがトレードマーク。ムーミン谷の開拓者。塔のような形をしたムーミン屋敷の建築者でもある。彼は、空色の部屋に座り込んで、自分自身が主人公の思い出の記や冒険記を執筆する。p122

 なるほど、そういうキャラが振られていたのか。そもそもの作者の化身かも。

 もしムーミン一家をムーミン谷の核の部分とするなら、ムーミンママは、そのまた中心に存在している。ムーミントロールの母親で、ムーミンパパの妻。トレードマークはハンドバックとエプロン。好きな花はバラ。ムーミン族の中で最も精神的に安定していて、寛容である。

 ムーミンママはいつも、今日のごはんは何にしようかと考えている。必要に迫られれば、アイデアに富んだ方法で、家族の食事を用意する。朝食のはいったバスケットがなくなったとき、ムーミンママは、イノシシの目におしろいをふりかけるという、ユニークな方法でイノシシを狩る。しかし、食料になった動物のことを思うと、ムーミンママは罪悪感に悩まされる。p116

 私たちの森にもイノシシは毎度登場する。今度出会ったときは、目におしろいをかけてやろうと思う。しかしながら、私たちの森のイノシシは放射線量が高いので、今じゃ、食料にならない。大増殖中だ。

 ムーミントロールは、ムーミンママとムーミンパパのひとり息子だが、両親がスニフとちびのミイを養子にしたため、正確にはママとパパの子どものうちのひとり、ということになる。ムーミン一家として、ときには、スノークのおじょうさん、スナフキン、ホムサ、ミムラねえさんが登場する。それでも、血のつながった母親と息子の間では、特別な意思疎通ができている。スウェーデン語名はMumintollet。p126

 そうであったか。ムーミンの本名はムーミントロールだ。このほか、たくさんのユニークな登場人物がたくさん紹介されている。

 コミックス「ムーミントロールとグル」で、ダルヴィーシュ(スーフィーというイスラム神秘主義の修行僧)のような格好をした、黒い肌に白ターバンの男がムーミン谷に現れる。彼はグルと名乗り、ムーミン屋敷に移り住む。

 そして自分のための石造りの床、画びょう、破られることのない静寂を用意してほしいと要求する。しかし、実際ムーミン屋敷で用意できたのは画びょうだけ。

 グルは、スノークのおじょうさんやムーミンパパに瞑想を教え、フィリフヨンカの牛を自由の身にしようとする。もっとも情熱的に彼の弟子になろうとするのは、フィリフヨンカだが、グルは彼女を「邪悪な女神」と呼び、恐れる。p25

 瞑想を学ぶムーミンパパ。う~~ん、いいですね。

 このほか、工作員やスパイたち、考古学者たち、ビートニクたち、映画のプロデューサー、世捨て人たち、探偵や刑事たち、グリム童話の登場人物たち、怪物や猛獣たち、魚やクジラやイルカたち、さまよえるオランダ船の船長、名もなき隣人や通りすがりの者たち、などなど、実に多彩である。

 裁判官、検察官、弁護士、陪審員たち、警察や消防団、預言者たち、詩人たち、密輸たち、流しの下の住人、芸術家たち、記者たち、年とった男の人、公務員や役人、などなど、ほんとかよ、と思うほど、沢山の登場人物がいるのだった。

 スナフキンは、わが道を行く旅人、放浪者、音楽家、そして芸術家。スウェーデン語名のSnusmumrikenは「嗅ぎたばこを吸う人」という意味。いつも春になるとムーミン谷を訪れ、秋になると去っていくが、童話「たのしいムーミン一家」では珍しく、ムーミンたちのように冬眠から目覚めるというシーンがある。

 スナフキンは、ムーミントロールの特別な友達。このふたりは一緒に橋の上に座ったり、釣りをしたり、おしゃべりをしたりする。そして、ハーモニカを奏でる音がムーミン谷に響きわたる。p172

 この本のもともとの著者シルケ・ハッポネンは1971年生まれの女性児童文学研究家。翻訳者・高橋絵里香は、1984年生まれで北海道出身の研究者。彼女は「中学校を卒業後、単身でフィンランドに渡り、ホームステイをしながら現地の高校を卒業。そのままオウル大学に入学し生物学と地質学を学ぶ。現在はフィンランドで教師をめざして勉強中。」(p241)とのことである。

<2>につづく

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