「小屋の力」 マイクロ・アーキテクチャー 仙波喜代子/今井今朝春<3>
「小屋の力」 マイクロ・アーキテクチャー<3>
ワールド・ムック仙波喜代子/今井今朝春
2001/05 ワールドフォトプレス ムック 475p
★★★★☆
A)すみません、地主さんですか? この辺で、空き地とか、貸してもいい畑はありませんか?
B)知らないね。それにオレは地主じゃないし・・・
A)出来れば、ちょっとだけでも借りて、家庭菜園とかしたいんですが・・
B)あんた誰? どこから来たの? そんなこと急に聞かれて、すぐ答える人なんかいないよ。
A)あ、私は、ほらあそこの町内の者なのですが、いつもウォーキングしていて、この河川敷の農地での作業がとってもうらやましくて、お仲間に入りたいと思っているのですが。
B)ははは、オレも実は、今年始めたばっかりで、ほらこの土地も開墾して、ようやく今度の春から農業を始めるつもりだよ。土地なんか、一杯あまってるよ。貸したい人ばっかりだ。あんた何処捜してるの? だけど、なかなかむずかしいよ。
A)私も若い頃は学校で農業も勉強したのですが、やる機会がなくて、最近ようやくやろうかなぁ、と思い立ったんです。もう何十年もこの土手を散歩していて、いつも農作業している皆さんの姿を見ていて、うらやましいなぁ、と思っていたんですよね。
B)ああ、オレもそうだよ。大学卒業して会社終わるまで、小さなところ何件か借りて、ここで3件目だ。自宅の脇にも90坪ほどの土地を借りているんだが、そこは女房が花を植えて花壇にしている。
A)こちらは広いですね~。あそこからあそこまでだったら、200坪もあるんじゃないですか・
B)後ろのこっちも、木のあるところも、全部開墾したからね、おおよそ450坪ある。
A)すごいですね。そんなに広かったら、一人では耕作できないんじゃないですか?
B)んなことないよ。オレの実家の農家なんて、県外のちょっと南のほうだが、白菜専門で、年間5000万の実収入を上げて、兄貴なんて、まぁ、いい暮らししてるよ。腕だよ、腕。土づくりが問題だ。
A)自信がおありなんですか?
B)ごく最近までは、あのようなヤブだったんだよ。全部刈り取って、根をひとつひとつ掘り起こして、ほら、あそこに積んでいるのが、その根っこだよ。土づくりはこれからだ。コツがあるだよ、コツが。
A)はぁ~、すごい。この木材で小屋でも立てるんですか。
B)秘密だがね、河川敷は小屋は立てられないんだ。だけど、ほらあちこちに立っているだろう。交渉が必要なんだよ。オレが毎日こうして作業しているのを、国土交通省が毎日午前と午後に二回、土手の上から見ているよ。そのうち、撤去しろ、って言ってくるかもな。
A)あ、じゃ、どうするんですか、その時は。
B)撤去しないよ。交渉力だよ。ちゃんと手は打ってある。撤去しなくてもいいように作ってある。撤去せよ、って張り紙された小屋もあるがね、あいつら下手なんだよ。
A)へ~、そうなんですか。小屋つくるのお手伝いしましょうか。なんかお手伝いしたいですね。
B)いや、結構だね。一人で好きなように作業したほうが効率がいい。余計な手を出されると、邪魔だ。あっと言う間につくるよ。この土地は河川敷だが、私有地だからね、少しは自由がきく。国土交通省に買い上げられてしまった土地は、貸してもくれないし、まったく自由にはならない。
A)地主さんたちは、一生懸命ですね。
B)馬鹿な。地主なんてほとんどいないよ。みんな借りている人ばかりだ。地主なんて、ここで農業なんてする気はまったくない。みんな出来れば売りたいと考えている。探してみな、売り地は一杯ある。
A)え、どこにあるんですか。
B)法務局行って登記簿見ればすぐわかるよ。ただ、本当の地主に辿り着くまで時間がかかる。ほら、あそこだって、あそこだって、全部売りたがっている。となりのこの200坪も買ってくれ、って言ってきた。坪3万だとよ。
A)3万×200坪、600万ですね。お買い得なんですか?
B)馬鹿な、こんな買っても家も建てられない、転売するにも可能性がない土地を買う馬鹿はいないよ。3千円でもたかいね。借りるんだったら、さらにこの10分の1だろう。
A)え、じゃぁ、お宅様は、どのくらいで借りてるんですか?
B)んなこと言えないよ。安く借りている、ということは本当だ。本当はただでもいい、と言われたんだ。だけど、それじゃぁ、こちらが開墾していい具合になってきたら返せ、って言われたら、タダ損じゃん。ちゃんと自作の契約書をもっていって、すくなくとも直ぐ出て行け、ってだけは言われないようにしてあるよ。
A)じゃぁ、450坪×年間100円として、4万5千円くらいですか?
B)だから、そんなことは言えないよ。あんたが思っているより、ずっと安く借りていることは間違いない。
A)ほえ~
B)オレもね、何年もかけて探したんだよ。橋の向こうのあっちなら、もっと沢山土地はあるよ。
A)いえいえ、私は、この周辺の人々の小屋がうらやましくて、ここがいいなぁ、と思っているんですよ。
B)ここはね、泥棒ばっかりだ。勝手に他人の作物を盗んでいく。ちょうどいい頃を見計らって、通行人も入ってくるんだ。だから、オレは暴風ネットを全部回してね。出入り口は一カ所しか作らないよ。逃げようと思っても、出口で待っているんだ。
A)え~、そうなんですか~~~(心の中では、エコビレッジでパーマカルチャー、という夢が簡単にぶちこわされる)
B)んなもんだよ。
A)私も近くに借りることができたら、お仲間にいれていただければ幸いです。
B)ここの人たちは、みんな天狗だ。自分のやり方しか知らない。声をかけてくる奴らはいるが、みんな邪魔するばっかりだ。余計なこと言われたくないね。みんな、な~~んも知らんのよ。
A)(ガクン) あそこの小屋も河原のカヤを使ったりして、すばらしい出来ですね。
B)ああ、そう。河原には材料がいっぱいあるからね。使って構わないよ。石も山ほどある。よりどりみどりだ。
A)ここはイノシシとか来ませんか。蔵王の友人の家庭菜園は、イノシシやクマ、鹿、ハクビシン、烏、タヌキなどの被害が多いようです。
B)オレも蔵王のほうに来ないかって友達に言われたが、行かないよ。それに作物の販売するの大変じゃない。近くに道の駅でもあればいいんだが。ここは、河川敷だけど、戦後ここに水が上がったということはないらしいし、動物の被害は少ない。一番の被害は、人間のドロボーだよ。道を歩いている人もそうだが、作っている人たちが盗んでいく。
A)(ガクガクン) いやぁ、それにしても、ご親切にいろいろ教えていただきまして、ありがとうございました。長時間教えてもらったので、だいぶ理解しました~。
B)ここはね、河川敷だけど、みんなキチンと通路を作っているからね、車でここまでも、もっと奥までも入れるんだ。
A)(口でいうほど、この人、不親切ではないなぁ。この人なら、友達になれるな、私は)
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