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2015/01/19

「ヒューマン・コマース」グローバル化するビジネスと消費者 角川インターネット講座 (9)三木谷浩史(監修)


「ヒューマン・コマース」グローバル化するビジネスと消費者 角川インターネット講座 (9)
三木谷 浩史(監修) 2014/10 KADOKAWA/角川学芸出版 単行本 256p
Total No.3376★★★☆☆

 現在のインターネット状況を楽天、あるいは三木谷浩史的視点からとらえた一冊。15冊シリーズとなれば、このような視点も必要となろう。

 楽天的と言えば、それはビジネスであり、ベースは日本であり、また販売である。それ以上でも、それ以下でもない。

 楽天は地元に球団・球場があるし、そもそも当ブログがスタートしたのも楽天ブログであったので、見知らぬ動勢ではないが、格別に好きとは言い難い。むしろ、なんの縁故もなければ、と遠ざかっていたい動勢である。

 せっかくのインターネットなのだが、楽天や三木谷にかかると、現実的すぎて、面白味にかける。何と言えばいいのか、本当に面白い部分の30%くらいがカットされて、当たり前な60%くらいで結論を得るというような、あくびがでるような結果になる。

 そう感じるのは、こちらがすでに還暦した初老の男を生きる時代になっているからかもしれない。今から30年前、私はまだ30代になったばかり。小なりとは言え、企画室という一つの部屋を与えられ、予算をつけて、ひがな本を読まされた時期があった。

 あの頃なら、この本はすごく楽しく読めたと思うし、また、このような未来へとつなぐべく日々読書を重ねていたのだった。

 そして思う、21世紀になろうが、インターネットが進化しようが、あの当時と今とでは、基本はそう変わらないのではないか。つまりだ、楽天が展開しようとしている世界は、それこそその原型と言われる楽市楽座の江戸時代も今も、基本は同じようなものであろう。

 逆に言えば、30年前でも、還暦過ぎた初老のシルバー達はいたわけであり、この本が面白くないと嘆くより、もうこのような本は必要なくなった我が人生の変遷にこそ心寄せるべきなのである。そう気付いた。

 インターネットはメディアではなく、インフラであるというのは冒頭で述べたとおりだが、交通や輸送、通貨といった従来のインフラに加えて、インターネットという横断的な新しいインフラができたわけだから、既存の制度や法律も変えなければいけないのは当然だ。

 あるいは、インターネットはグローバルでもあり国境がないのだから、法律自体がまったく意味をなさない。国内業者だけを規制しても効力がないとう事態も当然発生する。p023「ヒューマン・コマース」三木谷浩史

 商いの実体は常に変化していくわけだし、利を求めるのは仕方ないにしても、それは突然に変化するものではない。徐々に連続して変化していくものであるし、不連続になってはいけないものだ。

 集合知も創発も一度暗転するととてつもない愚劣な知識と混沌を残すだけのものになってしまう。したがって、無数の多様な知識やマグマのように爆発する創発力を、混沌や破壊だけに向けない何らかの制御が必要なのである。

 しかし、そうした破壊力のあるネットのもつ創発力をまとめあげるのに、またかつてのようなエリートだけに閉ざされた知識教育やカリスマ的リーダー育成が必要なのであろうか。多分、それは違う。

 結局、膨大な集合知や創発的破壊力をより高い次元で平和共存や民主主義、そしてすべての人に保護される基本的人権や福利厚生に結びつけていくには、やはりこのネット自体がもつ集合知や創発力に頼らなければならないのだろう。

 筆者の願いは、こうした「誰のものでない手」が、ネット上における破壊力や収束不能とも見える混沌を超えて、われわれをより豊かで自由な世界に導いていってくれることである。p296米倉誠一郎「ネットの混沌を超えて」

 外側が豊かになっていくことに、なんの疑念もない。しかし、この視点からでは、内面の豊かさへの足がかりが、まったくないことになるのではないか。

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