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2015/01/10

「ビッグデータの罠」 岡嶋 裕史

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「ビッグデータの罠」
岡嶋 裕史 2014/11 新潮社  単行本 191ページ  
Total No.3367★★★☆☆

 3・11後、これらIT関連の本を読むことは極端に少なくなった。それ以前から見切りをつけていたものの、なお一層距離ができた感がある。久しぶりに図書館のパソコンコーナーに足を止め、眺めていると、確かに興味をそそられるタイトルはあるのだが、なるほど、なぜ自分が4年近くも、これらのコーナーに魅力を感じなくなったのかがわかる。 とはいいつつ、手にとってみたといういみでは、やはりあれから4年ちかくの年月が経過したのだな、という実感が湧いてくる。

 匿名化はただすればよいというものではなく、どの水準の匿名化を何の目的でどのような手段で行っているかを明らかにし、かつそれを利用者にわかりやすい言葉で示さなければならない。できれば、利用者が匿名化の水準や個人情報を活用してよい範囲を指定できるのが理想だが、システム構成上の理由で困難であったり、利用者の負担も増えることから、必ずしも現実的な選択肢ではないかもしれない。p140「被監視者が監視者になる時代」

 最近、大手のSNSが正月そうそう利用規程を改定した。こまかい事は、一般ユーザーにはわからない。先駆的な仲間のユーザーがリーダーシップをとり、他のユーザーはそれに追随するという形が多い。いずれにせよ、一般的なユーザーには、何が何だかわからない、というのが実態だ。だから、多少冒険心のあるユーザーはあまり気にしないで、どんどん進み、臆病なユーザーはそのようなサービスには近づかない、ということになる。

 かくいう私も、自分の行動を「監視」されにのは気持ちよくないので、ビッグデータ取得者に対しては、とかく非協力的である。しかたなく取得されてしまうのは仕方ないとしても、出来るだけ私のデータはマダラ模様で、あまり活用しがいがなようにしている。

 一方で、業務上、私たちもまた、個人情報に触れるチャンスは多くある。扱いについては十分気をつけなくてはならないし、ホームページなどでみずからの使用ポリシーを明確にするよう指導されている。

 かなり前のことだが、あなたの初恋の人探します、なんてテレビ番組があった。情報網が薄い時代ならそれもテレビ番組になったかもしれないが、いまなら、個人であったとしても、かなりの確率でその作業ができるのではないだろうか。私もやってみよかな、などと思うが、いつの間にか、その情熱は薄れてしまったので、もうそういうことはしない。

 p158のわかりやすいパスワードベスト20のリストは面白い。幸い、私は採用していないが、一般的になるほどこういう文字列がみなさんお好きなのね、ということが分かる。くわばらくわばら。

 かつて私が事業者として盛んにローン申込書を作成しなければならなかった頃、うちではローンは嫌いだからと現金主義に徹していたお客さんもたくさんいた。それはそれで立派なポリシーで、一部私も見習っているのだが、カード社会の現在、このポリシーを徹底できている人は少ないだろう。

 この本において、著者はあの光文社シリーズで見せるカマトト冗句は封印している。なければないで、ちょっと寂しい著者の冗句である。

 ビッグデータの罠、というありそうなタイトルであり、また内容もそれに即した、よくありそうな回答となっている。常識的な回答ではあるが、ちょっと常識的でもの足りない読者も多いだろう。

 サービスが複雑に連携している現在では、情報漏洩が生じてもどのサービスに原因があったのかわからないことすら考えられる。各サービスにすこしずつ異なる情報を登録しておく方法は一定の効果がある。自分に関する情報をわざと間違えて入力しておき、この間違え方で登録したサイトはここであると、漏洩元サイトを突き止めた利用者もいる。p183「私たちは『危うさ』をどれだけわかっているのか」

 たまにはこのような本で、自分のITリテラシーをブラッシュアップすることは、きわめて大事だと感じた。

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