「『ビットコイン』のからくり」暗号が通貨になる 吉本佳生他

「『ビットコイン』のからくり」暗号が通貨になる 「良貨」になりうる3つの理由
吉本 佳生(著),
西田 宗千佳(著) 2014/05 講談社ブルーバックス 新書 272ページNo.3407★★★★★
1)新書なれど、科学畑の解説においては定評のあるブルーバックスシリーズの一冊だけに、なかなか読みごたえがある。斉藤賢爾「これでわかったビットコイン」 生きのこる通貨の条件(2014/04 太郎次郎社エディタス)ほど懐疑的ではないが、野口悠紀雄「仮想通貨革命」---ビットコインは始まりにすぎない(2014/06 ダイヤモンド社)ほど、双手を挙げての楽観論ではない。
2)そもそも通貨や貨幣というものが、摩訶不思議な存在であるからして、ビットコインもまた通貨という冠を与えられる限り、摩訶不思議な、理解困難な存在であることはやむを得ない。
3)別のいい方をすれば、ビットコインは”遊び”だったのです。子供の頃、メンコで遊んだ経験はないでしょうか。メンコの強い子は大量のメンコを手にすることになりますが、それはある種の「強さと名誉」の象徴でもあります。
ときには、メンコがあたかも通貨のようにやりとりされることもありました。そんな「僕たちだけのお金」を、数学とソフトウェア技術を使って、ネットワークの中で実現したのがビットコインであり、それを粋に感じる価値観を、ハッカーたちは共有していた、ということでもあります。p54「ビットコインとはなにか? なぜ生まれたのか?」
4)ビットコインに人々の関心が集まったのは2014年2月のビットコイン取引所マウントゴックスの破綻がきっかけだった。だから、どうしても日本におけるビットコイン関連の書物は、その直後の2014年春に集中している。
5)しかし、もう一つ、ビットコインの魅力の一つでもありながら、敷居を高くしているのが、P2P技術である。
6)利用者だけで低コストなネットワークを構築する、というP2P型のシステムが着目されたのは、ビットコインが最初ではありません。日本の場合は、2002年から2003年頃に話題になった「Winny」があります。
違法コピーコンテンツの流通や個人情報の流出といったネガティブな話題とセットで語られることが多かったために、Winnyを違法で危険なものと、考える人もいそうです。「よくわからないけど、報道を耳にしただけだと恐ろしそう」な印象を受ける点は、ビットコインも同じです。
しかし、P2P型ネットワークは、決して危険な要素と不可分なわけではありません。Winnyの本質は、大きなデータを低コストで流通させるしくにありました。p126「ビットコインを支える暗号技術」
7)Winnyは開発者の兼子勇氏の2013年の急死により、さらに不透明感が増したように、一般人の私などには感じられる。その理念は素晴らしい、と感じるものの、それを運用したり活用するには、実にノーマルな技術しかもたない身にとっては、鋭敏な刃物のようにさえ感じられる。
8)マイニングとは、簡単にいえば「ブロックの正しさを保障し続ける」しくみです。(中略)ビッコインではまず、一定時間の間に発生した複数の取引をひとかたまりの「ブロック」として保存していきます。ひとつのブロックには複数の取引が記録されますが、取引情報について、額の多寡は問いません。p129同上
9)マイニングやブロックという用語は、ビットコインを知るうえでは不可欠である。
10)ブロック・鍵・次のブロック・・・という風に「鎖」を構成しています。そうしてブロック同士がつながった状態を「ブロックチェーン」と呼びます。p130同上
11)ITにも数学にも門外漢である当ブログにおいては、このブロックチェーンという用語の存在に気付けば、もう十分であろう。
12)西田 決済手段としてのビットコインの発展を考えたとき、資産運用対象とする投機には弊害も多いと感じますが・・・・。
吉本 通貨にとって投機は”必要悪”なのかもしれません。投機に対する誤解もあると思われます。また、投機に似た取引として”裁定”があり、じつは、ビットコインのような暗号通貨がこれから定着するかどうかを考えるには、これからの投機や裁定がポイントになります(後略)。p164対談コラム3
13)野口悠紀雄でさえ「仮想通貨革命」で、ビットコインへの投資は勧められない。危険すぎるのだ。これまでも価格変動が激しかった。それに仮想通貨として、ビットコインは唯一のものではない。(略)競合するコインがすでに多数登場している。ビットコインは先行しているとはいえ、先行者が勝つ保障はない。p199と語っている。
14)本書において投機を「必要悪」とまで言い切ってしまうところに、ますますドシロートは、ますます一歩下ってしまうのであった。
15)ビットコインが”世界統一通貨”になる可能性はきわめて低いと考えられます。ですから、既存の国家通貨やさらに新型の通貨などと共存するなかで、ビットコイン(あるいはその後継の暗号通貨)がどう発展するかを考える必要があります。p166「ビットコインは通貨の未来をどう変えるか?」
16)自分がそれを活用するかどうかはともかく、実際にどのように発展していくのかについては、極めて関心がある。
17)「ビットコインの登場で通貨の競争が起きることで、日本政府と日本銀行の経済政策がやっとまともになるのではないかと期待している。いまの通貨の信用は、結局は人間が支えていて、国家通貨であれば、政治家が通貨を堕落させてしまう。
情報技術が信用を支えているビットコインのほうが相対的に優れている。ビットコインに国が関わるようになったら、ビットコインがダメになる。国の関与は信用の糧にならないからだ」p182新保恵志(東海大学教授・経済学)
18)個人で手軽に使えるか、というレベルとは別に、ネグリ&ハートが「<帝国>」でいうところの、マルチチュードの「貨幣」は、まさに、この辺にあるのではなかろうか。まさにP2P技術のビットコインは、マルチチュード的な存在のように思える。
19)ビットコインには中央政府がなく、最後に責任をもつ主体も存在しません。だから武力で攻撃さえる心配はない(武力での攻撃対象が存在しない)代りに、暗号を破られないように守れるかどうかの”知力”が、武力に変わる基礎となっています。
誤解を恐れずにいえば、「ビットコインVS国家通貨」の通貨の信用対決は「ペンVS剣」に近いといえます。p201「ビットコインは通貨の未来をどう変えるか?」
20)いいですね~、このイメージ。
21)この本は野口悠紀雄の「仮想通貨革命」と二冊並べて、その差異を確認しながら読み進めたら、なお面白かろうと思う。前者は、著者の人間力で読み切らせてしまう一冊だが、こちらは、ブルーバックスらしく、より科学的であり、公平であるように思われる。
22)さて、それでは、表紙のサブタイトルにもなっている「『良貨』になりうる3つの理由」とは、なんだろう。本文を読む限り、3つの理由、という程、シンプルにまとまってはいなかった。粗雑な一読者として、勝手に想像するに、その3つの理由とは、つぎのようにまとめることができるかもしれない。
・そもそも現在流通している貨幣が「悪貨」なのである。
・仮想(暗号)通貨は、中央管理者を持たない、新しいシステムに成長し拡大する可能性がある。
・人間ではなく、数学が管理する公平性がある。
23)この本、「『ビットコイン』のからくり」という、ややいかがわしいタイトルになっているが、からくりというより、より積極的にそのシステムを評価しているように思う。現在日本語ででている本の中では、もっとも良質なビットコイン解説書であろう。
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