「風の果て」 藤沢周平原作
「風の果て」
藤沢周平原作 福士誠治, 平淑恵他出演 吉村芳之他演出 2007/05 NHKエンタープライズ DVD 364 分
No.3404★★★★★
1)NHK作品。45分番組が8回連続で放映された。原作を読んでいないので、正確ではないが、藤沢周平ワールドにおいては、かなり上昇志向のつよい登場人物たちが活躍する作品である。
2)かなりの長編なので、おそらく普通の映画なら3本か4本になるだろう。あるいは、登場人物たち一人一人に光を当てれば、それぞれの独立した作品になるに違いない。
3)骨格は、少年時代の剣道場仲間の5人組の人生ということになる。それぞれが下級武士の次男三男に位置し、婿入りの話が来ることを待っている、というところから始まる。
4)中には上級武士の家督を継いだものもおり、あるいは、一生浪人に近い無役に甘んじる孤高の剣士もある。あるいは、友に討たれて若死にし、あるいは、知恵を働かせて藩政を盛り立て、権力の頂点に立とうとするものもある。
5)全体としては、藤沢周平の世界で、下級武士の悲哀が中心になっているが、権力争い、時には、敵味方に分かれての戦いとなる。サムライの世界である。刀を通じての、友情これあり、という場面も多い。
6)この映画、視聴者の一人として、我が身に振り替えてみる。なるほど、ほんの幼い時には、俺、お前、で遊び合った仲間でも、還暦の身になってみれば、なるほど、これほどの運命の違いがあるのか、と痛感する。
7)頂点を極めた者などはいないが、人もうらやむような雲の上の人となった友もいる。人知れず音信不通になっている仲間もいる。自らの芸の境地を開きながら、道半ばにして早逝したものもいる。ごくごく当たり前の人生を、当たり前に歩んできたように傍からは見えるものもいる。
8)自分はどこにいるであろうか、と、人は、この映画の主人公たちのそれぞれの位置に、自らを当てはめて考えるだろう。
9)どの位置にあり、どのようなストーリーであっても、それはそれ、人生なのである。与えられた位置、与えられたストーリーをせいいっぱい生きることが、結局は、それぞれの人生なのであろう。
10)この作品は、NHKのゴールデンタイムに放映されたので、あまりにむごたらしいシーンはない。そこが救いか。
11)いままで観てきた藤沢周平ワールドの中では、ちょっと異質だったかも。
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