「藤沢周平と<海坂藩>を旅する」 日本と日本人の原風景<1>
「藤沢周平と<海坂藩>を旅する」 日本と日本人の原風景<1>
Town Mook 2012/11徳間書店 ムック: 104ページ
No.3410★★★★★
1)ついに藤沢周平追っかけもここまできた。最近偶然みたyoutubeでの「隠し剣 鬼の爪」 。これでハマった。原作者より、山田洋次監督、というほうがウェイトが大きかった。以前にも「武士の一分」や「たそがれ清兵衛」も見たことあったが、原作者、というところまでは意識がいかなかった。
2)西沢周平という作家の名前も聞いたことがあったような気もするが、まったくノーマークだった。私の中では、急にカミングアップしたのであった。
3)この<海坂藩>を旅する、というタイトルが泣かせる。海坂藩は、藤沢周平が生み出した架空の藩である。
4)”海坂藩”の”海坂”という名前が、結核の闘病中、作者が句作をした同人誌「海坂」に依っていることも読者諸氏はご存知であろう。
藤沢はいう---「海辺に立って一望の海を眺めると、水平線はゆるやかな弧を描く。そのあるかなきかのゆるやかな傾斜弧を海坂と呼ぶと聞いた記憶がある。うつくしい言葉である」と。p1蝿田一男「海坂藩 ある”悔恨”の昇華」
5)うむ、うつくしい。井上ひさしは、小説をひとつひとつ読みながら、この海坂藩の地図を作っていったという。
6)数本の映画とNHKドラマを見ただけで、原作の小説を一編も読まないうちに解説書なぞを読むなんて、ちょっと早いかもしれないが、実は、NHKドラマは、どうもいまいちなのではないか、という印象を持っている。しかし、この本を読む限りにおいては、もうすこしある作品のひとつひとつを見終わったあとで、その判断をしたほうがいいだろう。
7)制作の現場は大河ドラマだけでは時代劇のノウハウが継承できない。美術スタッフが育たないと危機感を持ち、連続時代劇の復活を図ります。
92年の4月からの放送の金曜ドラマ「腕におぼえあり」が、それでした。原作は藤沢周平さんの「用心棒日月抄」などで、村上弘明さんが主演で、これが好評を博して翌年の3月まで、計35本・1年間の放送となったのです。p40「菅野高至「NHK時代劇と藤沢周平」
8)なるほど、そういう背景があったのか。このシリーズは図書館にも収まっているようなので、DVDやビディオで見ることができるようだ。
9)映像化作品は全部で44作、映画が8本です。一番古いものは1979年の「お父ちゃん」という作品で原作は「父と呼べ」(「闇の梯子」所収、文春文庫)です。このドラマは、父の小説を現代物にアレンジしたものです。
NHKでの映像化は13作で、ある時期から増えているのですが、それには理由がありました。p61「父と映像」遠藤展子
10)当時、ふるさとの鶴岡では民放がなかったので、NHKならふるさとでも見てもらえるだろう、という配慮だったという。
11)この本、他には、藤沢周平ワールドを読むうえでのキーワードの解説などが展開されている。江戸時代の用語やシステム、人生観などなど。
12)宮部みゆきはどこかで、次のように語っていたという。
13)「人間、50や60になったら、誰にだって辛い思い出、思い出したくない過去のひとつやふたつはある。それをキレイサッパリ忘れ去って、それからの新しい人生を生きていけ、言われても、生身の人間だから、そう簡単に忘れ切るものではない。
ならば、その傷を引き受けて、その傷と一緒に生きる覚悟を持つ。その覚悟をして、一生懸命に生きる。その結果、その先に、小さな幸福や、小さな理解を見つけたら、それは遠慮くなく全身で受け止めていいのだ、という藤沢さんの主張が伝わってくる」p12「普通の生活を送った小説家」
14)いまさらながらに藤沢周平ワールドに魅入ってしまった私も、人並みに「50や60」になった、ということか。
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