「貨幣という謎」―金(きん)と日銀券とビットコイン 西部 忠
「貨幣という謎」―金(きん)と日銀券とビットコイン
西部 忠(著) 2014/05 NHK出版 新書 256ページ
No.3397★★★★☆
1)わが図書館で「ビットコイン」というキーワードで引っ掛かった一冊。だから、かならずしも仮想通貨やビットコインに特化した本ではない。むしろ、通貨を論じて、経済そのものを論じようとした本。
2)発行量が増えるにつれて演算処理に伴う計算量が急激に増加するため、ビットコインの発行量の上限が2100万枚以下に抑えられるようにプロトコルに実装されています。
このため、円やドルなどの国家通貨のように、中央銀行が通貨供給量を恣意的にコントロールし、インフレーションを引き起こすことができないと考えられていました。これはそうだとしても、別の問題はおきないのでしょうか。p136「観念の自己実現」としての貨幣
3)本著で円天などの詐欺事件と並列に語られるビットコインではあるが、概してビットコインについては、本質をとらえて好意的に評価している。
4)国家通貨とは異なる、グローバルに利用可能な通貨が匿名的かつ安全であることは、これまでの通貨にないビットコインの優れた特性です。
ところが、逆にそれが悪用されて事件になり、金儲けの手段として人が群がってきたのです。ただ物を切るためのナイフがおいしい料理を作るために使われることもあれば、人を殺すために使われることもあるように、ビットコインの技術は善用もされれば悪用もされるでしょう。
しかし、ビットコインが悪用されたからと言って、その技術の善用の可能性までも否定してしまうのはばかげています。ビットコインで開発された技術やシステムはさまざまな改良や修正を重ねてこれからも使われていくことでしょう。p142同上
5)悪用しようにもその技術がない私などには、善用もなかなかできるものではないが、この可能性の芽が大きく育っていくことを期待したい。
6)ビットコインの設計思想は、フリーソフトウェアとP2Pにあると言えます。ビットコインのマイナーたちもマイニングによって対価を得ることだけではなく、その自由主義的で非中央主権的な設計思想への共鳴から参加しているように見えるからです。p144同上
7)この辺の評価や紹介の仕方は、実に好感をもつことができる。
8)日本でこの間急速に普及が進んでいるのは、貨幣価値をデジタル情報としてネット上のサーバーやパソコン、ICカード、携帯に保存し、特定の企業グループやインターネットの中で取引決済に利用できる電子マネーです。
そして、それ以外にも、「採掘」というユニークなアイディアを導入した仮想暗号通貨ビットコインも挙げられるのです。p245「資本主義の危機と貨幣の『罠』」
9)電子マネーについては、レイトマジョリティどころか、ラガード(採用遅滞者)のひとりである私としては、その延長に仮想通貨=ビットコインがあるのではなく、より画期的な「自由主義的で非中央主権的な設計思想」の発露であることを、自ら確認したいと思うのであった。
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