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2015/03/03

「『仮想通貨』の衝撃」 エドワード・カストロノヴァ

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「『仮想通貨』の衝撃」 
エドワード・カストロノヴァ(著), 伊能 早苗, 山本 章子(翻訳) 2014/06 角川EPUB選書 単行本   302ページ
No.3419★★★★☆

1)著者はアメリカのテレコミュニケーション学部の准教授。オンラインゲームなどにくわしく、仮想世界の経済学の第一人者として知られている、という。

2)原書は2014/06に英文ででた。タイトルは「WILDCAT CURRENCY」。ワイルドキャットとは山猫だから、山猫貨幣とでも訳すべきなのであろうか。いちぶには、「無責任な銀行によって支給された無謀な通貨」という暴訳も存在するようだ。

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3)日米同時に出版が進められていたのか、邦訳も同時に出版されている。日本においてはビットコインについての関心が高まっていた時期だけに、緊急出版されたという背景が見え隠れする。

4)しかしながら、この本は「ビットコイン」に特化した本ではない。むしろ、広義の仮想通貨についての大規模なレポートであり、その種別に意見が分かれるところであろう。

5)この本においては、バーチャルゲームや購入ポイントなども、一種の「仮想通貨」として扱われている。例えば本屋で買ったときにTカードのポイントがつき、次にガソリンスタンドでガソリンを入れた時にそのポイントを使って支払いをする、このようなことも「仮想通貨」として語られている。

6)今やどのお店においてもポイントカードというものが流行している。例えばホームセンターに行って木材を買えばポイントがつく。それが一定程度たまると、次回の購入の時に値引いてもらえる。しかし、そのポイントは、そのチェーン店でしか使えない。

7)Yカメラでも、食料スーパーでも、その類はありふれている。しかし、ほとんどがその店の購入促進につながるようにできている。

8)しかしそれが、本屋=ホームセンター=ガソリンスタンド=Yカメラ=食料スーパー・・・とどこでも使えるようになれば、これらのポイントはたしかに「仮想通貨」と言っても可笑しくない実体を持っているということになろう。

9)しかし、例えば本日ポイント5倍だとか、使用期限つきポイントとか、あるいは登録しただけで5000ポイントだの、何がなんだかわからない形で流行しているのが、今のポイントという奴だろう。

10)原著の「山猫通貨」(直訳)とは別に、邦訳は「『仮想通貨』の衝撃」とある。いままでこの「衝撃」という名のついた本を、当ブログでは何冊か読んできた。
「Twitterの衝撃 140文字がビジネスからメディアまで変える」(2009/11 日経BP社)、「キンドルの衝撃 メディアを変える」 (2010/01 毎日新聞社)。あるいは「クラウドの衝撃」(2013/0 kindke版)、「ビックデータの衝撃」(2012/6/29東洋経済新報社)などなど、いわゆる「衝撃」本は数々ある。

11)その本がでた当時はたしかに「衝撃ではあるが、いまとなっては、Twitterも、キンドルも、クラウドも、ビックデータ」も、ごくありふれた日常の実用となりつつある。ということから考えて、この「仮想通貨の衝撃」も、この本がでた2014年においては「衝撃」であったとしても、数年を経ずして、ごく当たり前の風景になっていくかもしれない。

12)しかし、上のようなポイントやヴァーチャルゲームなどが主なる話題となっているうちはまだまだ本当の「衝撃」ではないだろう。センターでコントロールするシステムがあるうちは、政府の規制下におかれる運命にある。

13)ところがビットコインを初めとするいわゆる真正「仮想通貨」が実体を増殖していったならば、本当の「衝撃」がやってくるに違いない。

14)そもそもセントラルオペレーターがいなかったらどうなるだろう。国が生み出したバーチャル世界や仮想通貨が、インターネットの中で自己管理できたらどうなるだろう。中心となる調整役もいなければ、コントロールする機能もないとしたら、どうなるだろう。

 そらが可能になるのは、ピア・ツー・ピア(P2P=特定のサーバーを持たず、対等な関係のコンピューター同士でデータを送受信する通信方式)のサービスによってである。バーチャル世界でのP2Pは、どんな人のものであっても外からの影響は受けないはずだ。p256「ピア・ツー・ピアと説明責任」

15)この地点から眺めてみると、広義として使われている「仮想通貨」などのポイント制に比べ、ビットコインなどのバーチャル通貨は、まったく別システムであることがわかる。

16)仮想通貨のひとつに「ビットコイン」がある。(中略)ビットコインはあるプロトコール(ルール)から生まれた。このプロトコールは、たくさんのコンピューターをせっせと働かせて、かなり難しい円算問題を解かせる。(中略)

 21世紀半ば、つまり2050年ごろには、おそらくコンピューターが採掘できるビットコインはほぼ採掘され尽くしてしまうと考えられている。

 ビットコインのプロトコールの詳細な仕様は複雑だが、2050年の問題を解くには、地球全体に匹敵するサイズのコンピューターが必要であり、しかもそれを高速で動かさねばならない。したがって、これ以上のビットコインを採掘できなくなる日がいずれ来るだろう。p212「ビットコインとバーチャルインフレーション」

17)この本の広義の「仮想通貨」が今後「衝撃」から現実化していくことだけでも、かなりの破壊力がある。しかし、いずれ「ビットコインの衝撃」などという本がでてきたら、そん時は、本当に覚悟しなければならないな、と思う。

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