「For the Children 子どもたちのために」 ゲーリー・スナイダー<12>
「For the Children
子どもたちのために」<12>
ゲーリー・スナイダー (著), 山里 勝己 (編集, 翻訳), 高野 建三
(写真) 2013/04 新泉社 単行本: 143p
★★★★★
1)なにか一冊、手持ちバックに中に忍ばせておいて、スナイダーをいつでも感じ取りたいと思えば、この小さな一冊はちょうど手ごろである。文章も長いものがないが、それぞれの著作からチョイスされているので、スナイダーの全体像が見渡せる。
2)画像が多く含まれているのもいい。全部モノクロ写真だ。写真にもいろいろあるが、このカメラワークに携わった高野健三の写真は、スナイダーの心象をよく映し出している。ちょっとした禅の水墨画とさえ連なっていくようでもある。
3)この本にしてこの本のタイトル、スナイダーをまとめるコピーとして「For the Chirdren」というフレーズは、必ずしもスナイダーの特性を表わしているものではない。しかしながら、スナイダーの世界が収束点を見い出そうとしている時に、この「For the Chirdren」は最もそれにふさわしく、最もよく表現されていると思う。
4)子どもたち、と言いきってしまう時の、その子供たち、の中には、自分も、そして全ての子供も青年も、大人も、老人さえ、包括されている。
5)人はひとつの場所に滞在客として住むこともできるし、定住者になろうとすることもできる。私と家族は、このシエラネバダ山脈の中高度の森の中で、早いうちから精一杯ここで生きてみようと決意した。
これは勇気のある試みではあったが、私たちには資産もなく、むこうみずなところだけが十分に備わっていた。
私たちは質素さはそれ自体で美しいものだと思っていたし、私たちはまた並外れたエコロジカルな道徳観を持っていた。
しかし、日々の必要性が、結局は私たちに自然の共同性の一員としてどのようにい来るべきかということを教えてくれたのであった。p51「浸透性の世界---開かれた空間に住む」「惑星の未来を想像する者たちへ」より
6)スナイダーは私のなかではほとんど英雄である。3・11直後、スナイダーがいなかったら、私の絶望はよりもっと深かったに違いない。それほど具体的に知っていたわけじゃないスナイダーだったが、心の復興のなかで、その大地に太陽の光を受けて屹立するイメージは、野の畑においてうつむく宮沢賢治の肖像と似て、一時の、そして永遠へとつながる安らぎへと導いてくれた。
7)人はおそらく賢治にも、スナイダーにも、ヘッセや三省にもなれないのだ。彼らのイメージは、そしてその生きた軌跡は、後からその道をたどる者たちには、大いなる道しるべになってくれる。しかし、人は、おそらく、誰にもなる必要はないのだ。人は、その人自身になればいいのだ。それでもう十分なのだ。
8)「For the Chirdren」と表現される時、その中には、すべての人間が含まれている。そしてそのもっと純粋な子供的な部分に寄与されている。人は、子供としての自分の、そのために、生きて行けばいいのだ。
9)「For the Children 子どもたちのために」。コンパクトながら、大好きな一冊である。
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