「男はつらいよ」 第36作 柴又より愛をこめて 山田洋次監督
「男はつらいよ」 第36作 柴又より愛をこめて
山田洋次(監督) 渥美清(出演), 栗原小巻(出演), 1985/12 松竹 DVD 105分No.3518★★★★★
1)寅は相変わらずだ。新しいストーリー、新しい土地、新しい女優や俳優。エピソードはまちまちだが、作品としては構成が定式化している。安定して見ていられると同時に、さて、今回は、どんな手でくるのやら、という期待も湧いてくる。
2)1985/12。思い出深い日々だな。通信教育で心理学・哲学の講義を受け始め、カウンセリング研究所の講座を受け始めた。電話相談の講習も受け、実際に電話も取り始めた。
3)米国オレゴンのOshoコミューンはトンでもないことになって、まぁ、実にエクスプロージョン。人生には、このようなエピソードがつきものとは言うものの。
4)ここんとこタコのところの娘がレギュラー化していて、ドラマに色を添える。今回はその娘が「大活躍」ってところか。この36作の次の37作目は一年後となる。スタッフの老朽化か、マンネリ化の問題か。とにかく、いままで17年間も年2作できたのが、ここで崩れるのだ。
5)リアルな体験としては、ちょうどこの辺りで私はようやく松竹映画「男はつらいよ」と出会う。映画館でみたわけでもなく、テレビやホームビデオでみたわけでもなかった。
6)ある日、私は住まいのすぐ近くにできたヘルスセンターのサウナにでかけた。サウナは私のスタイルではないのだが、営業ビジネスの先輩たちに連れらているうちに、結構気軽な気分転換として、利用するようになっていた。
7)いつもは仲間と連れだっていくのだが、その日は、一人だった。サウナに入って、休眠室に入り、読む気もないスポーツ新聞を片手に、毛布をかぶった。何十かの簡易ベットの前には大型スクリーンが張ってあった。
8)他の映画を中途で観て、それが終わったあとに「男がつらいよ」が始まった。私はあまり好きな映画ではなかった。というより、あまり映画文化にはなじんでいなかった。だから、最初は見る気もなく、ただ見つけているだけだったが、ストーリーが展開するうちにすっかり見入っていた。
9)その時かかっていたのは、おそらく「男はつらいよ」第29作 寅次郎あじさいの恋(1982/08)である。あの日から私はすっかり寅の虜になった。どうしてこの日まで私は寅と出会わなかったのだろう、とさえ思う。おそらく、私はそこまで「成熟」していなかったのだろう。
10)あれから私は、テレビで寅が再放送という時は、必ず見た。ただ根っからの映画ファンではないので、映画館まで出かけていって見るということはなかった。この時代から寅は映画としては10年間、10作品以上つづくのだから、リアルに寅作品を見てもよかったような気もするが、寅は私よりすこし前に先行していった。
11)今ころになってようやく寅を48作続けて見る、なんていう今回のような試みをしているが、最初からの寅ファンにとっては、今さら何やってんだ、てなことになるのかもしれない(汗)
12)しかしまた、こうして寅の27年間を追っかけてみることは、その時代の自分を見ることになるので、自分の人生のよい振り返りのパートナーとなってくれている、ということもできる。
13)全48作品のうちの約4分の3が終わったわけだが、ここまでくると、なんだか、終わってしまうのが、悲しいような気もする。いやいや、それはないかもな。また見直せばいいわけだから。全作品手元に録画してあるし、図書館にもDVDとして新版が収蔵されている。見ようと思えば、いつでも見れるのだ。
14)「男はつらいよ」フーテンの寅。名作だと思う。ありがとう。
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