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2015/06/20

「市民農園のすすめ」―見る緑から作る緑へ 祖田修

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「市民農園のすすめ」―見る緑から作る緑へ
祖田 修(著) 1992/10 岩波書店 単行本: 62ページ 岩波ブックレットNO.274 

No.3539★★★★★

1) この本、発行は1992年とだいぶ古いが、内容は今読んでもとてもタメになる。

2)市民農園自体は、なにも難しいことを考えずに、私たちが気軽に、花を咲かせて野菜を育て、マイペースで心ゆくまで楽しめば良いことである。しかし市民農園がなぜ今ブームを呼ぶようになったのか、どのような時代背景があるのかを自覚的に考えてみることによって、市民農園を単にブームに終わらせず、都市計画の中に理念的・制度的に位置付けて持続的に発展させることができるのではないか。p3「はじめに」

3)まさにおっしゃる通りである。著者は1939年生まれ、1978年に一年間、当時の西ドイツに滞在し、留学研究の過程で、いわゆる当地の市民農園、クラインガルテンに魅惑されたという。

4)考えてみれば、わが市民農園は、このパンフレットが出たころに始まった活動である。

5)農業を人間生活の原点に置く考え方の最も強力な主張者は、日本の江戸時代の思想家安藤昌益(1703~1762)であろう。p13「人間にとっての農・自然」

6)おやまぁ、安藤昌益まででてきたか。

7)北村徳太郎によれば、たとえば米沢藩では、足軽150坪、中級士族300坪の屋敷が基準とされ、武士は空き地全部を菜園にして出仕の余暇は晴耕雨読の生活を送った。p26「市民農園の展開と役割」

8)おやおや、先日まで藤沢周平ワールドで遊んでいたところだが、「わが」米沢藩にまで言及されているのか。たしかに、あの米沢藩を真似たとされる海坂藩には、農本主義のかおりがぷんぷんする。

9)多くのクラインガルテンには10平方メートルほどの小屋があり、週末はそこで料理や読書を楽しんだりもできる。

 クラインガルテンといってもさまざまであり、花を中心にする人、菜園を中心にする人、また比較的手の掛からない果樹類を植えて、下を芝生にしている例も多い。やりかたによって仕事の量を調節できるのである。p37「クラインガルテンの現代的意義」

10)日本的「市民農園」の場合、菜園が中心であるが、花を植えて観賞し、あるいは切り花を楽しんでいる人も見られる。しかし一年契約であるので果樹は許されないし、小屋などの構築物は許されていない。

11)かりに市民農園をやるとして、やってみたい面積としては3坪程度36%、5坪程度33%、10坪程度17%、10~30坪程度5%、30坪以上3%となっている。(中略)

 農協中央会の調査によれば、現在全国にある市民農園の一区画当たりの面積は10坪程度、農水省調査では平均25平方メートル(7坪余)となっている。

 いったんやり出すと、後に見るように面積を広げたいとの要求がでてくるようだ。それにしても、ドイツの市民農園の平均区画346平方メートル(105坪)比較すると、大きな違いがあり、歴史と制度の差を感じる。p43「市民農園のイメージと利用」

12)現在のところ、私の農園は一区画5坪である。これはこれで楽しめる範囲ではあるが、偶然となりに空き区画ができたので、増やすかどうか悩んでいるところである。たしかに、いくら日本とは言え、そしてこのデータは20数年前のものとは言え、市民農園をやっているという限り、10坪ほどはやっていないと、サマにならないような気がする。それに体がやや大きめな私には、5坪の密埴農園は、ややきつすぎる。

13)かりにやってみるとして、がまんできる農園までの距離については、歩いて5分以内38%、15分以内34%、15分以上でもよい15%、場合によっては車を使ってもよいからやりたい4%となっている。(中略)

 ドイツでは、最近車の利用を前提にした市民農園も作られているが、徒歩15分のいわゆる「乳母車の距離」が基本となっており、郊外ではなく市街地の内部に点々と配置されているのは先に見たとおりである。p44同上

14)我が農園は、自宅から自転車で10分強、徒歩20分。車で行けば5分ほどである。さすがに乳母車でいくには遠いが、車でいけば幼児たちも乗せていける。

15)100㎡以上の畑となれば、市民農園とはまた違った形で可能性を探ることもできるが、本当に自分がやり切れるかどうかの決意が問われる。乳母車の距離にも、実は候補地があり、月二回程度の滞在型通い農園用にも、候補はある。今後はその可能性を探ってみる。

16)利用者の年齢は幅広いが、平均年齢は51歳である。世帯主の職業は会社員37%、自営業27%、公務員11%、その他25%である。右記の市民農園はいずれも、市などが仲介して提供する公的な農園である。

 回答者の利用年数は、1年前からが63%、2年前からが20%、3年以上前からが17%である。

 農園までの距離は(中略)、徒歩で5分までが14%、5~10%17%、10~20分23%、20~30分12%、30分以上5%、車で来る29%となっている。平均して歩いてなら15分程度、車で来る人の平均距離は5~6キロメートルとなっている。p46同上

17)こうしてみると、割と私は平均よりもすでに老齢である。利用年数は20年前のデータではあるが、割と短めである。私は、可能であれば10年も20年もやりたいような気分の今ではあるが、まぁ、あまりおおげさに考えずに、飽きたらやめよう、位の気持ちでやろう。

18)距離は、自転車で10分、歩いて20分だから、まぁまぁ平均か。悪天候の日とか、疲れた日は車でも行けるし、仕事帰りにも車で立ちよることができる。好条件のうちと考えよう。

19)使用面積は平均25平方メートル(7.5坪)、賃貸料は年5000円である。57%の人はこの程度の規模で続ける、43%の人がもっと広くしたいと考えている。広げる場合の希望の面積は10~30坪程度の範囲に分布している。p44同上

20)ここは考えどころである。現在私が使っているのはは5坪であるので、いずれ10坪程度まで拡大を考えている。とすると賃貸料はこのデータの平均の3~4倍くらいになってしまう。それだけ負担が大きくなっても、持続可能なのかどうか、今後検討する必要がある。

21)農園で作業するのは、記入者本人が中心が64%、家族全員でやる25%となっている。農園に行くのは土曜・日曜が39%、曜日に関係なし61%である。

 春から夏の時期に農園に訪れる回数は、毎日のように30%、週3~4回32%、週1~2回28%、月に2~3回10%である。思いのほか曜日に関係なく、高い頻度で現場に訪れている。p46同上

22)私は正直、家族みんなで畑仕事したいな、と思っていたのだが、作業のほとんどは私一人で行なっている。家族は月に1~2回、数分間覗きに来る程度なので、ちょっと拍子ぬけしているところなのだが、これは全体の64%がそうなのだから、まぁ、当たり前の光景ということになる。

23)通う回数は、今のところ、一日おきくらいだから、まぁまぁ平均値か。だけど、観察の必要もあり一日に2~3回通うときもあるので、まぁまぁ多い方かも知れない。この傾向は、今後どのように推移していくのだろうか。

24)栽培したいものは、多いものから順に、1位のトマトをはじめとして、キュウリ、大根、葱(ねぎ)、トウモロコシ、白菜、トウガラシ、さつまいも、ホーレン草、じゃがいも、玉葱(たまねぎ)など60種類近くに及んでいる。実にさまざまな楽しみ方をしている。

25)我が農園でも同じような傾向があるが、親戚の農家から毎年回ってくる大根、葱、白菜、じゃがいも、玉葱などは作らない予定。トマト、キュウリ、トウモロコシ、ホーレン草には挑戦したい。その他の我が畑の作物は、エダマメ、イチゴ、ピーマン、スナックエンドウ、スイカ、メロン、かぼちゃ、サトイモ、キャベツ、パセリ、ナス、ゴーヤ、ズッキーニ、カブ、ハツカダイコン、などなどがある。

26)市民農園はさらに、セカンドライフを伴った自己所有・滞在型のサラリーマン「週末農園」や、退職者高齢者の「長期滞在型家付き農園」など、場合によっては都市民が農園付き住宅を買い、本格的に農村へ移住するケースへと発展していく。p53「市民農園の多様な可能性--日本的展開」

27)日本的展開とまで言わなくても、まず個人的展開の可能性で言えば、乳母車の距離内に一つの可能性がある。これは個人的な条件がかなり左右するので、あまり期待しすぎは良くない。また、長期滞在型も可能性はある。地理的な距離、あるいは3・11後の放射能汚染の問題などもあり、一概に言えないが、可能性を探ってみる必要は当然ある。

28)この本はすでに23年前に出た本であり、データは古いが、逆に、現在のデータと比較することによって、この間の推移についても知ることができるし、その中のどの位置に我が農園が位置するのかを知ることもできるので、貴重な一冊である。

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