「ネットコミュニティの設計と力」 つながる私たちの時代角 川インターネット講座 (5)近藤 淳也(監修)
「ネットコミュニティの設計と力」 つながる私たちの時代 角川インターネット講座 (5)
近藤淳也(監修) 単行本– 2015/8/22 KADOKAWA/角川学芸出版 単行本 232ページNo.3585★★★★★
1)「角川インターネット講座」全15冊の13番目の刊行。いよいよ大団円が近づいてきている。監修の近藤淳也は1975生まれで「はてな」グループの総帥。若くして梅田望夫の「ウェブ進化論」で高く評価されている。梅田もたしか「はてな」の取締役に参画し、多いに期待したホープであった。
2)1975年生まれといえば、私よりちょうど21歳年下。そうかあの頃生まれた人たちがすでに人生の半ばを過ぎて、ネット状況を総括する時代にまで及んでいるのだ、と、感無量。
3)最初と最後を近藤が担当し、他の5人が間に挟まっている。テーマについてはおそらく、よりこまかくは書いてあるだろうが、よりビビットな今日的課題は薄いだろうと、逆に最後の近藤の文章から読み始めた。
4)インターネットを眺める時間の飽和を感じる一方、私は最近、人と直接会って話たり、自転車に乗ったり、旅行をしたりといった、リアルな活動に面白さを感じている。これまでずっとインターネットばかりに関わってきた反動、といった側面もあるだろうが、自分だけではないと感じる部分もある。
例えば私の友人に、首都圏で生活するのをやめ、地方の農村に移り住んで地域の活性化や有機農業に関わっている女性がいる。彼女のように、まだ20代や30代の若い世代が、地方に移り住んで生活するケースが出始めているようである。
都市部でも、他の住人とリビングなどをを共有して生活するシェアハウスが流行している。シェアは薄入居者は、必ずしも家賃を節約するために金銭的な理由でそこを選んでいるとは限らず、一部には通常のマンションと家賃が同程度か高額のシェアハウスもあるそうだ。
こうした事例を見ると、「成長を目指してがむしゃらに仕事をする」のではなく、人とのつながりや自然とのつながりを大切にした生き方を求めている人が、若者の間にも出てきているように感じる。p220「コミュニティの人の力」
5)このような自然志向は、つねにずっとあるわけだが、このような本の中のまとめに入っていることは興味深い。一巡したかな、との思いもある。
6)次に面白かったのはサル学の山極寿一の文章。いきなりこのような文章が挟まれているのも興味深い。
7)そもそも、動物としての人間にとって適正な集団の規模はいったいどれぐらいなのだろうか。
これに対しては「ダンバー数」という指標がある。(中略)
現代人並みの脳の大きさに人類が達した役60万年前には、ダンバー数160人ぐらいのコミュニティ形成が達成されていたに違いないと考えられるのだ。p137~8山極寿一「サル学から考える人間のコミュニティの未来」
8)当ブログは以前より、ネット数200程度のつながりが適当だろうと、なんども考察してきたが、わが意を得たりと思う。少なくともネット繋がりを、フォロワー数で競ったり誇示したりすることは、あまり意味がないだろうと、思ってきた。
9)次に挙げることができるのは、脳がもう少し大きくなった時に出現したであろう30人程度の集団だ。
30人規模の集団は、社会のあらゆるコミュニティに存在する。
30人程度だと、人間は完全に所属メンバーを把握し、集団内に自分を位置づけられる。また、このぐらいの人数だとリーダーが生まれやすい。よって、まとまりができるし、誰かがいなくなったらすぐわかる。p142山極 同上
10)これもまた、20:80の論理で、おおよそ、160人の20%内外の30人前後のメンバーがコアとなるであろう、という予測も、当ブログの思いと一緒である。あるいは、その根拠のベースとして採用しているものは、この著者と当ブログは、ひょっとすると同じものである可能性もある。
11)といいつつ、一方では、このサル学者の意見にはやや賛同しがたい部分もある。
12)インターネットは使い方によれば、人間の未来にとって明るい材料になりうるものだ。
その最大の可能性はビッグデータだろう。p153
繰り返すが、ネットで心と心を通じ合わせることは、むしろやめた方がいい。視覚情報や身体性を伴わないコミュニケーションは確実にコミュニティに齟齬(そご)を生む。いわゆる「炎上」という現象もそのひとつだろう。p157
13)このサル学者は、サルをデータとして見続けてきたから、人間をもデータとして見てしまうのだろう。ビッグデータについては、この次の角川インターネット講座の最後からの二冊めの本の主テーマである。そのことはその時に、もうすこし考えよう。
14)このサル学者は、心についても述べているが、サルはたしかに「心」の働きは薄いかもしれない。ただし、同じ道具をサルと人間が同じに使うとは限らない。
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