「ネグリ、日本と向き合う」アントニオ・ネグリ他<7>
<6>からつづく
「ネグリ、日本と向き合う」<7>
アントニオ・ネグリ(著), 市田 良彦(著), 伊藤 守(著), 上野 千鶴子(著), 大澤 真幸(著), 4その他 2014/03新書 NHK出版 新書 240ページ 目次
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序 アントニオ・ネグリの現在 伊藤守
世界的なベストセラーとなったネグリとマイケル・ハートの共著「<帝国>--グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性」が出版されてから、世界の情勢が大きな変貌をとげるなか、いま私たちがおかれたグローバルな世界をいかに捉えるか、その点をネグリと議論することが来日プログラムのねらいであった。p11伊藤「来日プログラムのねらい」
「<帝国>」の原著は2000年に英語版がでている。日本語版は2003年。
「<帝国>」の刊行から一年後の2001年に起きた「9・11同時多発テロ」は、アメリカ主導によるアフガニスタンへの軍事侵攻、さらにイラク戦争を引き起こし、これらの地域はいまだに混乱のなかにある。p11伊藤 同上
この2000年、2001年という年代は、ITネットワークの発展とともない、9・11テロを契機にブログを書き始めたという人たちも多く存在する。当ブログは、2005年スタートだから、この9・11テロについてはあまり突き詰めてこなかったが、のちに起こる3・11に比べれば、はるかに「対岸の火事」とみてしまっていたことは確かである。
グローバルな金融資本の暴走と不正義を露呈させたリーマンショック 緊縮財政政策によって一層の経済落差と貧富の拡大が続いている。p11伊藤 同上
わが日常仕事も分類としては金融業に属しているので、この時の影響は大きく蒙った。しかしながら、一個人としてはどうにもならない無力感の中で、ひたすら右肩下がりの経済状況を生き延びることを考えるしかなかった。
そして、日本では「東日本大震災」が発生し、地震による巨大津波によって東北地方沿岸部は壊滅的な打撃を受け、福島第一原発では複数の原子炉が同時に炉心溶融を起こすという人類史上これまで経験したことのない事故が発生した。p11伊藤 同上
我が家の数キロ先まで押し寄せた津波によって街並みは壊滅し、隣県に存在する原発の放射線汚染に怯えつつも、3・11という大惨事に直面しつつ、根幹には致命的な影響を受けることはなかったわが家である。しかし、リスクマネジメント関連の仕事上、実に多くのことを感じ、考えざるを得なかった。もちろん、この事故は終わっていない。
それは、多くの被災者・避難者に過酷な生活を強いる一方で、原発という巨大科学技術の脅威と危険性を、そしてさらに国家という単位を超えてグローバルに結びついた、原子力発電に固執し続ける政・財・官の支配ブロック---ネグリが「原子力国家」と呼ぶ---の戦略を世界中の人々に知らしめた。p11伊藤 同上
この「原子力国家」たる「怪物(リバイアサン)」こそ、ネグリが直視する「<帝国>」の、ある意味本性であり、ある意味本体である。
他方、新自由主義的な政策と一体化したグローバリゼーションが引き起こす経済危機や経済格差が急速に拡大するなかで、アメリカやヨーロッパの先進国では「オキュパイ運動」や公的サービスの削減に抗議する「UKアンカット運動」に代表さえるような反グローバ理ぜーションの運動やエコロジー運動が高揚した。
中東では「アラブの春」と呼ばれる民主化運動が起き、日本でも反原発運動や脱原発運動が全国に広がる状況が生まれた。これらの個々の運動は、社会的、文化的、政治的文脈がまったく異なる地域で、異なる目標を掲げて展開されており、そこに共通する要素など存在しないと思われるかもしれない。
しかし、これらの運動の根底には、社会的意志決定のあり方や制度、経済と市場の「自由」を至上のものとする考え方への根本的な懐疑が渦巻いているという点で、多くの共通点が存在すると見ることもできる。p12伊藤 同上
マルチチュードが育つ土壌であり、またその必然性を支える要素でもある。
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