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2015/10/16

「ヤバいLINE」 日本人が知らない不都合な真実 慎武宏他

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「ヤバいLINE」 日本人が知らない不都合な真実
慎 武宏(著), 河 鐘基(著) 2015/05 光文社 新書 254ページ
No.3587★★★☆☆

 一年ちょっと前に近くに大型家具店「IKEA」がオープンした時、商品類はたしかにデザイン的に凝っているものが多く、あちこちから若い女性の声が「かわいい!」って聞こえてきた。ふむふむ。

 カッコイイ、とか、素敵、かわいい、って言葉に混じって、後ろからやってくる若き女性たちの口から、「ヤバい!」という言葉が連発されるのには参った。ヤバい、という言葉は、私たちアラ還の世代ならば、「ヤバいところを見つかって、捕まった」などと、否定的に使うのだが、どうも、若い世代はそうではないらしい。

 カッコイイ、素敵、かわいい、を通り越して、この魅力的な存在に、私は圧倒されてしまいましたわ、的にこの「ヤバい」という表現が使われているらしいのだ。

 はてさて、この本においての「ヤバい」はどちらの意味で使われているだろうか。サブタイトルの「日本人が知らない不都合な真実」が示すように、決して超素敵、超カワイイというニュアンスだけではないような使われ方をしているようだ。

 おそらく、LINEというネットサービスは、素敵、カッコイイ、かわいいのレベルで、あるいはそれ以上の意味で若い層を中心に魅力を振りまいているのだろうが、アラ還の私なぞは、「『LINE』なぜ若者たちは無料通話&メールに飛びついたのか?」(2012/11マイナビ)の時にメモしたままのイメージで、ずっと来ている。

 日本で生まれた純日本制のメッセージアプリ。ましてそれが東日本大震災を機に生まれたというエピソードは、日本人の心に強く非ビック。日本で急速に普及した背景には、こうしたドラマチックな要素も多分に影響したのだろう。LINEが純日本製のアプリではないという報道もあるが、その誕生秘話については第三章で詳しく後述することにする。p39「ヤバいLINEの『稼ぐ』力」

 誕生秘話に一難あるな、という直観は、この本で詳述されているので、そこに関心のポイントがある人は、この本は見逃せない一冊だが、私はそれ以前に、サービスそのものが、私のネットライフには合わないな、と思ってきた。

 まず、繋がりのひとりひとりの距離感が近すぎること。ここが、悪い意味で「ヤバい」。勝手に自分の電話番号や個人情報が吸い上げられたり、他人が「売り渡している」ことに強い違和感を感じる。さらにリアルな人間関係に、無駄に接近しすぎる。ここが、私にとってはヤバい。

 日常生活においても、キスをしたり、ハグをしたり、あるいは子供を抱っこするような場合には肉体的接触もあるだろうが、普通の会話をするなら、適当な距離感というものが必要である。駅のホームの線路を挟んで会話するのは遠すぎるだろうが、口と耳をこする程度では、あまりに近すぎる。その必要な距離感は、それぞれの感性にもとづくものだろうが、LINEは、私の距離感には合わない。

 重要なのは親と子の関係、やはり基本となるのは家庭でのコミュニケーションじゃないでしょうか。親が一方的に禁止しないで、むしろ率先してLINEを使ってみるべきです。p94「LINEで苦しむ子どもたち」

 それはもっともなことだ。活用しないまでも、私もユーザー登録して、アプリもインストールしている。

 人々に愛されるサービスになるには、偉大な哲学が不可欠だ。それは、古今東西すべての商品や企業に共通していえる。ましてや、グローバルな市場を追求するIT企業は、世に放つサービスの哲学をより一層問われることになるだろう。p111同上

 こちらも最もな話ではあるが、当ブログは現在「ネグリ、日本と向き合う」を読み進めているところである。ネット企業として、「<帝国>」の落とし穴に早々と堕ちていってしまうのか、あるいは、新たなる若きマルチチュードたちを育て、さらにその<武器>とさえなるのか。ある意味、テストパターンとしても、関心を寄せ続けておきたいテーマである。

 NEVERは収益を出すために、公平性やユーザーの利便性などはあまり尊重していない。おそらく、他のグローバルIT企業のような、哲学がないのだと思います。p195「哲学はあるか」

 LINE日本社の親会社と目される韓国NEVERも、その質を問われることになる。

 日本で向かうところ敵なし、そしてグローバル市場でも虎視眈々とトップの座を狙うLINE。はたして並みいる強敵を押しのけて、人気、サービスともに充実したスマートフォン時代の覇者になれるか。月並みだが、おそらくその答えはユーザーにとって魅力的で、有用なサービスを開発し続けられるかどうかにかかっている。

 LINE社とユーザー間のオープンでリアルなコミュニケーション。それがLINEの未来を左右するはずだ。p240「LINEの未来」

 おそらく私は、ことLINEにおいては、いちユーザーとして、遅れてやってくる大衆レイトマジョリティーに甘んじるだけでなく、不採用者ラガードに落ちるであろう。まぁ、代替サービスがあるので、私はそれで足りそうであるが、私が完全に「時代遅れ」になる前に、私を魅了してくれる、「<帝国>」に対峙するマルチチュードとしてのツール、コモンを建設するような、新しい機能へと進化する道筋が見えてくるといいなぁ、と思う。

 いい意味での「ヤバい」ツール、ほしいなぁ。

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