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2015/10/20

「ドキュメント テレビは原発事故をどう伝えたのか」 伊藤 守

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「ドキュメント テレビは原発事故をどう伝えたのか」 
伊藤 守(著) 2012/3 平凡社 新書 263ページ
No.3588★★★★☆

 「ネグリ、日本と向き合う」2014/03NHK出版)を読み進める上で、この本にいったいどんな人々が関わっているのだろう、と開いて見た本。伊藤守は 「序 アントニオ・ネグリの現在」を書いている。1954年生まれということだから、私と同年輩。メディアの在り方を研究している教授である。

 3・11震災直後の一週間、特にその中でも福島第一原発についてどのようにテレビが伝えたのかを、ドキュメントとして追っている。

 「批判のための批判」は意図しない。だが、これほどまでに、マスメディアへの信頼、マスメディアが伝える情報への信頼が揺らぐなかで、信頼を回復するための課題を発見し、あらたな一歩を踏み出していくためには、徹底した検証が求められる。

 既存のマスメディアを「真実を一切報じないマスゴミ」として極端なバッシングを行なうことからは、何も建設的な方向は見出せないとも考える。p25伊藤 「政府と東電による情報コントロールとメディアの対応」

 3・11に関する書籍はたくさん出版されており、多岐にわたるが、この本はその中にあっても、キチンと節度を守りつつも、直後の一週間の、各立場のうろたえぶりを、テレビ報道をまとめるだけで、あぶり出す。

 抜き書きすべきところは沢山あるが、今回はネグリ関連で開いた一冊だったので、伊藤がすでにこの本でネグリに触れていた部分を摘出するに留めておく。

 現代社会の変化の根底に、資本の論理を極端なかたちで進めたネオリベラリズム政策が行き着いた経済的・社会的格差と分断、貧困からの脱却を展望するとき、そのカギとなるのは「COMMON=共有」にあることを主張しているのはイタリアの思想家であり社会運動家のアントニオ・ネグリである。

 現代の資本主義が、ポストフォーディズムといわれる知識産業や情報産業そしてサーヴィス産業へと転化し、アイディア、コミュニケーション、さらには気配りや表情といった感情表現すら、高利潤を生み出す重要な資源として資本の論理に組み込まれていく状況のなかで、自己のアイデアや感情を、そして他者とのコミュニケーションを、文字どおり「他者と分かち合う」共同の営みとして実践し、「COMMON=共同」を実現する、その先に「来たるべき社会」の基本原理を彼は展望する。

 こうしたネグリの展望はけっして荒唐無稽なものではない。情報をめぐる「所有」から「共有」への基本原理、理念の変化は、実際にいたるところで見られたのではないだろうか。チュニジアで、エジプトで、リビアで、そして日本でも・・・・。p234 伊藤「市民の価値意識の変化から挑戦を受けるマスメディア」 

 きわめてまともな本である。場合によったら、貴重な資料ブックとなる。このようなまじめな人々が、ネグリの来日にからみ、それぞれの仕事をしているのであった。そのことをまず確認した。

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