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2015/11/21

「言霊とは何か」 - 古代日本人の信仰を読み解く佐佐木 隆(著)

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「言霊とは何か」 - 古代日本人の信仰を読み解く
佐佐木 隆(著) 2013/08 中央公論新社 新書: 241ページ 
No.3612★★★☆☆

 個人的に言霊(ことだま)とは、「矢(や)」と「的(まと)」で「やまと」である、とか、「火(か)」と「水(み)」で、「かみ」であるとか、やや言葉遊び、ダジャレにさえ通じるような、アナグラムの世界のように思っているが、この本は、そんな遊び心とは一線を画す。

 本書のおもな目的は、古代日本人にとって「言霊」とはどんなものだったのかを具体的に検証することにある。piii 「まえがき」

 本書でいうところの「古代」も平城京期あたりに限定されているようである。しかし、それでも、ひとつひとつが文献に裏打ちされており、また解釈がほぼ確定されている分野について網羅されており、新しい事実というよりは、ひとつの視点の提供、と言っていいのだろう。

 「言霊」が神のもつ霊力だったとすれば、ことばに対する当時の日本人の考えは、すでに原始的なアニミズムの領域を脱していたことになるだろう。アニミズムというのは、自分たちの周囲にある多くの物にそれ特有の霊力がやどっており、自分たちが目にするさまざまな現象の一部は、そのような霊力によって引き起こされたものだ、というような考え方である。p17「『万葉集』の「言霊」」

 晩年に強く明示的にアニミズムに傾斜し、当ブログがいうところの「アニミズム三部作」のような著書を持つ山尾三省のような人が回帰しようとしたのは、この本で書かれているような時代以前へのことだった、と、ここで確認できれば、それでこの本は大いに役立った、ということになろう。

 当然と言えば当然のことなのだが、本書においては「古事記」「日本書記」「万葉集」などは盛んに登場し引用され検証されるのだが、「ホツマツタエ」など、前駆的な資料、あるいはその可能性については、一切触れられることはない。

 文献的な裏付けは少なくとも、例えば、私の住まい地域には、それに先駆ける郡山遺跡などが存在するのであり、文献学がどうのというより、一体、ここは何だったのか、という真実探求の科学的好奇心のほうが強い。

 言霊として残されていない時代を、言霊として残した「ホツマツタエ」の世界。ここにも大いなる矛盾があり、文献としても、どれだけの資料性があるのかは、いまだに確定していない。しかしまた、仮に偽書であったとしても、その成立や主旨を読み解けば、それはそれなりに、言霊以前の世界を垣間見る機会となるだろう。

 そのためにも、このような「真面目」な本が存在することは、ありがたいことであるし、今後も機会あれば、再読し、理解を深めたいものだと思う。

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