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2015/11/20

「叛逆」―マルチチュードの民主主義宣言 アントニオ・ネグリ他<4>

<3>からつづく


マルチチュードの民主主義宣言<4>
アントニオ・ネグリ , マイケル・ハート (著), 水嶋 一憲 , 清水 知子 (翻訳) 2013/03 NHK出版 単行本 216ページ
★★★★★

 4つの主体形象(p24)を、自らに引き寄せて、あるいは身近な例として考えてみる。

「借金を負わされた者」

 これは現代人であれば、ほぼすべての人間が背負っていると思われる。奨学金、住宅ローン、自動車ローン、医療費、各種保険料、通信料。もちろん払いきれない人もいるが、与信審査で払える範囲ギリギリというケースも多い。もちろんカード破産などする人もいる。

 それに対し本著は「借金をひっくり返せ」という。(p66)  さまざまなケースがあるのだろうが、一般的には無理だ。借りたものは返さなければならない、という倫理観が働く。ただ理不尽な形で背負わされたものについては再考を要する。

 ベストな形は、そもそも借金をしないことだろうし、車をもたない、タイニーハウスで加重な住宅ローンを借りない。ケータイ等も負担を軽くする方法を考えるしか対策はなさそうだ。

「メディアに繋ぎとめられた者」

 そもそも当ブログなどは、40数年前からのミニコミ運動やフリーメディア運動に関わりを持っている時点から、マスメディアに関しては、それなりの対策を取ってきた。まず、鵜呑みにしない、複数のニュースソースを持つ。自ら取材し体験する。当事者の話を聞くなど。

 ただ限界も多い。例えばウィキリークスのようなハッカー達が活躍しなければ知らされない情報も多い。また、そのような情報も、どれだけ信ぴょう性があるのか、定かではないことが多い。

 本書では「真理を作り出せ」という。一歩前にでている。当ブログの読書ブログ+という形態は、ある意味その路線を歩みだしてはいるのだが、決して楽観的なものではない。専門的にメディアに関わる者たちの公正で願う部分が多い。

「セキュリティに縛りつけられた者」

 守ったものが守られる、という、例えば交通ルールのように、一定程度は自らの安心は確保されるはずなのだが、一方的に被害者になることも多い。転ばぬ先の杖、は常識であり、定期点検、保険整備、安全運転など、やっておかなければならないことは多い。

 しかしながら、ひとりの人間として、社会に生きる上で、数々のセキュリティの危険に冒されているのは事実である。パソコンしかり、防犯しかし、防災しかり。そこを狙って、支配者たちは、さらに支配力を強める。

 対する本書は「逃走し、自由になれ」と説く。革命を志す、向こう傷を恐れない若者だったりすれば、それも悪くない。しかし、社会的な弱者、ハンディキャップ、若年者、高齢者などは、そうそうはいかない。

「代表される者」

 私は選挙権がある時は100%投票してきたので、棄権したことはない。それで民主主義の権利をすべて行使してきたという自覚はあるのだが、どうもことはそう簡単ではない。それだけではダメだ。

 ひとつの陣営に加担したり、ロビー活動を容認したり、あるいはデモのようなものに参加したからと言って、情勢そのものに大きな変化はない。本書では「自らを構成せよ」という答えを出す。

 本書は、そうとうに個性的で「かくめい」的だ。だれもがここで言われるところのマルチチュードと自らを規定するのは簡単ではない。その方法は、ある時点での突発的な出来事の追認として、そのような評価はできるかもしれないが、ことはそんなに簡単に解決できるものではない。

ーーーーー

 <コモン>を創り出すことは、そうたやすいものではない。すでにあるものを<コモン>として追認し、それを拡大し、保護することはできるだろう。いま、私たちはどのような<コモン>を持ち得ているのか。個人レベルで言えば、それを確認する作業さえ、簡単ではない。

 この本、非常に示唆的であり、精読に値するが、独創的な部分も多く、また夢想的でもある。読み物としては面白いが、実践的に、わが身に置き換えてみた場合、日暮れて道遠しの感がある。

 いずれ復活するとして、この辺で、一旦、頁を閉じておく。

つづく・・・・・かも

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