『世界が日本のことを考えている』 3.11後の文明を問うー17賢人のメッセージ<4> 共同通信社
「世界が日本のことを考えている」 3.11後の文明を問うー17賢人のメッセージ <4>
共同通信社 2012/03 太郎次郎社 単行本 271p
★★★★★
「ネグリ、日本と向き合う」と出会い、3・11直後の中で、最初にネグリの動向として伝わってきたのがこの本であったことをまずは確認した。そうして、自分のブログを見て、すでにこの本について3回コメントしていたことに気づいた。私はネグリ一人分しか読んでいなかったような印象だったが、そうではなく、まんべんなく読み、しかも再読もしていた。
今回は、「むしろ、インタビューを終えて」という記者の文章が面白かった。
夏のイタリアは暑い。汗がしたたり落ちる7月末、ベネチアの小路の突き当たりにある自宅でアントニオ・ネグリ氏と会った。投獄や亡命など激動の半生が嘘のように、終始穏やかで饒舌。笑顔がチャーミングな哲学者だ。インタビューしたいと東京からメールを送ると、「フクシマの問題は重要だから、すぐに来い」と返事が来た。
ひきつけられたのは「原子力国家」(nuclear state)という言葉だ。国家は原発の安全性を保障するため、地震や津波が来ても大丈夫、といった「嘘」に始まり、国家の魂までも原子力に売ってしまうという意味だ。
政府・電力業界の数十年間にわたる猛烈なPR攻勢によって、「安全ボケ」に陥った日本を見れば、「原子力は国家を乗っ取る」という分析は的を得ている。津波を「想定外」とする逃げ口上は、安全性の保証を原子力国家の枠でしか「想定」していない習い性の最たるものだろう。
原子力推進力の巻き返しも激しい。安全保障における核抑止力神話からの脱却も難しいが、「エネルギー源として有力」という心の奥に住み着いた原発神話から逃れるのも難しい。
ネグリ氏の訪日は2度も中止となた。1回目はテロ組織との関係が疑われたため。2回目は東日本大震災の直後の予定が、地震のためキャンセルとなった。「CIAのブラックリストに載っているから米国には入れない」と冗談風に言ったあと、「日本には行きたい」と付け加えた。
インタビューを終えて日差しが照りつける小路を再び歩き始めると、脱原発を掲げるポスターがあちこちの壁に貼ってある。イタリアは福島第1原発の事故を受けて、脱原発を決めた。青空と太陽の下、「原子力ノー」の文字がまぶしく光った。p155「インタビューを終えて」(聞き手:杉田弘毅、写真も)
10年間ネグリ&ハートに向き合ってきた当ブログであるが、「ネグリ、日本と向き合う」と言われると、今度は、当ブログとしては、イタリアやベネチアという都市と向き合わざるを得ない気分となる。
少なくとも、伊東豊雄たちヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展で金獅子賞を受賞するとはどういうことか、ネグリが「風立ちぬ」を見たと言うヴェネチア・モストラ映画祭とは、どんな企画なのか。半田也寸志が写真集「Mighty Silence」を発行したというイタリアSkila社とはどんな出版社なのか。
この辺あたりから、また、次なる展開をしてみたい。
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